企業が再生可能エネルギーを買う3つの理由

2023年2月16日
全体に公開

みなさん、こんにちは。GX(グリーントランスフォーメーション)推進法が閣議決定され、いよいよ日本も再生可能エネルギーの主力電源化に本腰が入ることが期待されます。

日本では再生可能エネルギーの普及が進んでいますが、世界ではもっと導入が進んでいる地域や分野があります。今日はその中でも、企業の再生可能エネルギー購入が増えている理由について書きたいと思います。

世界では企業による再生可能エネルギー購入量が増えています。コロナ禍でも購入量は減らず増加の一途をたどっています。下の図は、企業による再生可能エネルギーの調達量(電力契約量)を示しています。

出所:BNEF、https://about.bnef.com/blog/corporations-brush-aside-energy-crisis-buy-record-clean-power/

企業の中でも特に昨年購入量が多かったのは、Amazonでした。なんと10.9GW。設備容量の規模にして原子力発電所10基分です。データセンターで使われる電気の使用量が毎年増えているため、ネットゼロ(脱炭素)目標を掲げるAmazonは使用量が増える分、再生可能エネルギーで賄おうとしています。2位から4位もテック系企業が続きます。Meta、Google、Microsoftです。これらの企業も脱炭素目標を掲げているので同じ状況です。自動車のフォード(Ford Motor)も入っています。

出所:BNEF、https://about.bnef.com/blog/corporations-brush-aside-energy-crisis-buy-record-clean-power/

これらの大企業に限らず、なぜ企業は再生可能エネルギーの購入をするのでしょうか。大きく分けて3つあります。

1.自社の脱炭素目標達成のため

2.比較的安価で、長期でクリーンな電気を固定料金で購入できるから

3.取引先からのプレッシャー、及び取引できなくなるリスクを避けるため

①自社の脱炭素目標達成のために必要な再エネ

前回の気候変動開示、そして過去にも触れさせていただきましたが、まず脱炭素目標を立てる前に、はじめの一歩を踏み出すには自社の排出量把握が大事です。

自社で使用する化石燃料(スコープ1)、そして電気(スコープ2)などが排出量に値します。エネルギー効率の高い機器に置き換えたり、省エネをしたりなど、直接使用量を減らすことができるものは、ぜひそれを行っていただきたいです。

その次のステップとして、電気の使用を全部減らすことはできないので、使用分はクリーンな電力から購入することになります。

②比較的「安価で」「長期で」「クリーンな」電力を「固定料金で」購入

形容詞が続いてしまいましたが、どういうことかというと、再生可能エネルギーを購入する際に、一般の電気料金と同じくらいか少し安い料金で、かつ10年から15年の長期の購入契約を結びます。そうすることでその期間は固定料金で再生可能エネルギーを購入することができます。

市場価格が高く不安定な今は、価格が安定していることは企業にとっては安心です。また、2022年には、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、新しい契約を結ぶ際の価格が上がったようですが、上記の最初のグラフのように再生可能エネルギーの購入量はむしろ増えています。やはりロシア産のガスの使用を控える動きも相まったのではないかと思います。

これは、コーポレートPPA(Power Purchase Agreement=電力購入契約)といわれるモデルです。最もわかりやすい例が環境省に載っています。ご参考まで。

③取引先からのプレッシャー、取引停止のリスクから逃れるため

企業自らネットゼロ目標を設定する数は増えています。それだけではなく、取引先から脱炭素達成年を迫られるケースも出てきました。例えば、アップル(Apple)です。

AppleはこれまでにもApple製品の部品サプライヤーに対して再エネ100%を要請してきました。日本でもAppleとの取引企業は多く、その影響は注目されてきました。ソニーや村田製作所、イビデンやジャパンディスプレイなどがその代表企業ですが、その一部の企業は上記の再生可能エネルギーのPPAが日本で許可される前から、革新的な取り組みを行っていました。

それはまさに、Appleとの取引停止のリスクがあったからです。

2022年10月、Appleは新たにサプライヤーに対して、2030年までに脱炭素することを要請したようです。再エネ100%だけでなく、2030年までに脱炭素を達成をすることは容易ではありません。しかしながら、Appleが初めてサプライヤーに対して再エネ100%を要請した時も、多くの人は「容易ではない」と思ったことが、今や多くの企業がそれを目標にして前に進んでいます。大きなムーブメントとなり、他の企業も同様にサプライヤーの再エネ100%を目指してエンゲージメントを進めています。

例えば、米国の自動車会社ゼネラルモーターズ、GMです。自動車の部品を提供しているサプライヤーは2035年までにカーボンニュートラルを目指すとしています。

個人的に興味深いと思ったのは、車の部品ごとにどれくらいの排出量かを計測していること。そして、その排出量要因分析をしていることです(下図参照)。結果は電気使用からの排出量が最も多いということで、驚きました。ここでも再生可能エネルギーに切り替えることで排出量が削減できるでしょう。

出所:GM、https://www.gmsustainability.com/priorities/supporting-supplier-responsibility/supply-chain-sustainability.html
出所:GM、https://www.gmsustainability.com/priorities/supporting-supplier-responsibility/supply-chain-sustainability.html

今後、企業の再生可能エネルギーを購入する量はますます増えるでしょう。それは、多くの国、市場、企業が脱炭素目標を設定しています。そして、上記の理由で再生可能エネルギー100%を目指す企業が増えています。その再生可能エネルギー100%を目指すグローバルイニシアチブとしてRE100がありますが、そのRE100に加盟する企業や団体は年々増えています。2022年には新たに56社が加盟。日本からは12社が加盟し、合計77社となりました。これは米国に次いで世界で2番目です。つまり、再生可能エネルギー購入のニーズも日本でますます高まります。

一方、再生可能エネルギーの調達は日本は世界でも難しい国の一つです。以下、RE100のツイートに、日本市場の難しさが記載されています。

このあたりは先述のGX推進法で解消されていくことを願います。過去にGX推進法の中の再エネに関して書かせていただきました。下記の記事を参照ください。

このトピックスでは、気候変動を含めたリスクとビジネスチャンスの見極めのヒントになるような、気候変動の知識や世界の動きをご紹介していきます。皆さんも気候変動を考慮した経営や事業戦略についてのお悩みがあればコメント欄でお寄せください。

応援ありがとうございます!
いいねして著者を応援してみませんか



このトピックスについて
樋口 真章さん、他768人がフォローしています