too connected to disconnect (繋がりすぎて離れられない)

2024年3月25日
全体に公開

私達の日常に欠かせないスマートフォン。電車に乗れば、ほとんどの乗客がスマホ画面を覗いている。その大半が、マンガや動画といったコンテンツを見るか、SNSのようなソーシャルメディアを利用している。きっとあなただってそうだろう。このNewspicksだって、ただのニュースのキュレーションサイトではない、様々な人のコメントやpickがみられるソーシャル(社会)性をもたせたプラットフォームである。

Twitter/XやInstagramといったソーシャルメディアの功罪についていまさらここで論じる必要はないだろう。この小さいパソコン(スマホ)は私達を常に世界とつなげ、あったことない人々との交流に私達を晒してくれる。その規模は人類の歴史上いまだかつてなく、何千年も前からゆっくりと進化してきた動物である私達の脳はこの指数的な伸びを見せる刺激に耐えることはできない。やっぱりスマホは悪いよねなんてエビデンスを待つ必要ない。なんて言ってしまうと科学者失格だろうか。

さあ、みんなスマホをゴミ箱に投げ捨てて紙の新聞を読もう!

しかし、現実はそうはならない。ほとんどの人はスマホをやめない。スマホから得られる快楽が強いから(依存症)だろうか、それとも、スマホの害を理解していない(リテラシーの問題)からだろうか?このどちらにも属さない理由を上げるとすれば、それは人間が社会的動物(social animal)だからだろう。

単純に言うと、SNSをやめると他者よりも情報面で社会的に圧倒的に不利になってしまうのだ。その損失は、ニュースアプリをやめる以上に大きい。SNSをやめるということは(オンライン含む)友人とのネットワークから離れることだからである。

つまり、SNSをやめて「つながり」を断ち切ってしまうと、自分以外の「つながり」続けている友人との情報格差が圧倒的に大きくなってしまうのだ。さらに、SNSで発信できていたはずの自分の情報も拡散できなくなる。

SNSをやめると、受診・発信の両面のチャンネルを失う。しかも、SNSを続けている自分以外の「つながり続けた」人たちは情報を交換し合う。そうすると自分とのその他の人との格差は拡大し続ける。この、いわば負のネットワーク効果が、私達をSNSの鎖に繋ぐ正体なのだ

こうして考えると、常に罵詈雑言が溢れているTwitter/Xからなぜ離れられないメカニズムがよく分かる。その背後には、取り残されることへの恐怖(FOMO: fear of missing out)だけでなく、私達を「繋いで」いたものが重い「社会的」鎖の役割を果たしていることがわかる。

この鎖から開放されるには、一人だけがやめるのではなく、SNSに参加している人が「いっせーのーで」SNSをやめなくてはいけないが、それは現実的には不可能だろう。私達はゲーム理論的鎖に繋がれているのだ。

これは私達にいくつかの示唆を与えてくれる。1つ目は、身体に悪いと自覚していてもSNSにはやめられない合理的な理由があること。2つ目は、その理由(ネットワーク効果)を取り除くのは難しいこと。3つ目は、これからもSNSビジネスはしばらくは盤石だということである。

ちなみに著者はSNS(Twitter/X)をやめたおかげで非常に重要な公的な締切を1年で数回見逃していた。SNSをやめることのコストの高さを好みで体験したのだった。恐ろしい。

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