杉本博司「本歌取り 東下り」松涛美術館と渋谷(前編)
会期:2023年9月16日(土)~2023年11月12日(日) 2023
前期:9月16日(土)~10月15日(日)後期:10月17日(火)~11月12日(日)
URL:https://shoto-museum.jp/exhibitions/201sugimoto/
渋谷の駅前から東急BUNKAMURA(建て替え中)を抜けて静かな松涛の中に白井晟一設計の松涛美術館があります。
ここ数年、渋谷の街は転換期で大規模な工事が続いています。「原宿と異なり文化を産まなかった」と評されることもある渋谷ですが、堤清二がPARCO渋谷を建てた1973年から今年で50年です。セゾンカルチャーとレコード文化は失われてしまいましたが、西武B館8階では1960年代から1990年代の渋谷を写真で観る(本日11/12まで)ことができます。
第15回渋谷芸術祭2023 〜SHIBUYA ART SCRAMBLE〜『渋谷アーカイブ写真展』
2023年11月6日(月)- 11月12日(日)開場時間 10:00-20:00
西武渋谷店B館8階 特設会場 東京都渋谷区宇田川町21−1
渋谷は本当に面白くて、学生の頃から2000年代前半までは自転車でウロウロしていました。日曜ラストは1000円で映画を上映するシネマライズ(バンクシーの『Exit Through the Gift Shop』もここで観た)と巨大ブックオフもあってパルコから文化村(下図の赤線)は懐かしいです。
5月のドミューンでも再開発とジェントリフィケーションを扱った『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(AmazonPrimeで配信中)が議題に挙がり、シリコンバレーがアートを排除して得たものと失ったものや渋谷とバンクシーのブリストルが議論されていました。SUPER DOMMUNE 2023/05/12
80年代の脱大衆化運動にまんまとやられた男が乗り込んできて、渋谷PARCOというランドマークがセゾンカルチャーの魂を失わないように、地上9階のアンダーグランドとしてここに引っ越してきた。なぜなら堤清二のDNAを受け継いでいるから。松本俊夫(映像作家)の弟子であって視覚表現のアップデートを常に考えているから。猶更、このランドマークに9階に籠城する必要がある
PARCOは70年代に渋谷をエキサイティングな街に読み替える作業をした(中略)実は原宿と違って渋谷は文化を生み出していない。昔は円高だったから宇田川町にレコードが世界中で一番あってアーカイビングをやり、夜はそのアーカイブを使った実践が夜にできていた。いまのDisco GooseとSpotifyを合体させたみたい!
80年代には既にセゾン文化に飽きていた(と言われている)堤清二氏が73年に渋谷の公園通りを登り切ったあの場所に建てたPARCOも当時は「コンテンポラリー」にこだわって作家を紹介しており、その一点では全く様子の異なって見える松濤美術館と同時に考えることで得るものがあると思っています。
ちょっと曇ってる
美術館は地下2階、地上2階なので住宅地の中でもスペースを広く取る工夫がされています。
模型だと断面で確認が可能です
入り口から中に入ると
通路から空を見ることができます。
ぜひ晴れている日に訪問してみてください
白井晟一には珍しい(?)大きめの窓があり、左側から地下へ向かいます。
いい感じの階段だ!
下から見上げる
右中段にあるのは村田勝四郎の作品です
階段を降りると展示会場に着きました
展示の「本歌取り」は作品を借りて(読み替えて)自分流で表現し直すことです。「東下り」は本展示が姫路美術館からスタートして東京に来たことに由来しています。
本歌取りとは、本来、和歌の作成技法のひとつで、有名な古歌(本歌)の一部を意識的に自作に取り入れ、そのうえに新たな時代精神やオリジナリティを加味して歌を作る手法のことです。作者は本歌と向き合い、理解を深めたうえで、本歌取りの決まりごとの中で本歌と比肩する、あるいはそれを超える歌を作ることが求められます。
まずはネガポジ法を発明したタルボットの「カロタイプ」の複製(本歌取り)です
会場自体は何もない時はこのように地下でも自然光が入る設計になっています。白井本人は設計時に中央から降りられる階段を構想したそうですが安全上の課題があり取りやめになったそうです。
反対側
ここには目玉でもある和紙にピグメントでプリントした作品が展示されています
江之浦測候所には春日大社の御霊分けをした柑橘山春日社があります。鹿島神宮と春日大社を結ぶ線上に江之浦があることから実施したそうです。これを記念した作品になります。
江之浦測候所の方
2022年の姫路市立美術館での「本歌取り 日本文化の伝統と飛翔」に際し制作した狩野永徳の安土城を想像しながら撮った作品
屏風の中では一番感動したのがこちら。本歌は北斎の赤富士ですね。山梨県三つ峠から撮影した作品
床の反射も含めて「和紙と屏風とピグメントプリント」は最高だったのではないでしょうか。
他にも本歌取りの作品がありました。
水没被害にあったニューヨークスタジオの地下室から救出したシャガール風の絵(メトロポリタン歌劇場の壁画が印象に残って描いた)に水害による古色と時間経過の痕跡から美を見出し、10年後に入手した700年前(南北朝時代)の春日厨子に時計とセットで制作したそうです針の動きが逆にですが、厨子内の鏡で見ると普通の時計になります。
続いて第二会場です
階段を登ると杉本狂言公演の映像が流れます。これも非常に重要な作品なので、別の機会に取り上げます。
2階は何もないとこの様な部屋ですが
ライトも増えて作品が美術館に凄く合っていますね
ギャラリー小柳で購入することができるBrush Impressionシリーズもあります
後編に続く
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