ウクライナ解説⑧陸軍大国ポーランド、爆誕か

2022年7月28日
全体に公開

皆様、いつも読んでいただきありがとうございます。

今日は久々に「ウクライナ解説」の続きを書いてみたいと思います。

中でも、今回はウクライナの西側に接するNATOの加盟国、ポーランドについてです。ポーランド、今非常に興味深い動きを見せています。

脅威の、戦車1000両購入計画

日本時間の7月27日、あるニュースが韓国で報じられました。

韓国の大手メディア聯合ニュースなどによると、ポーランド政府は韓国から兵器を調達する契約を新たに結んだと発表しました。

驚きなのはその中身で、なんと戦車1000両に上ります。まず180両を購入し、残りの約800両はポーランドでの現地生産で確保するということです。

これだけではなく、射程が40キロに及ぶ自走砲約48門や、48機の戦闘機も調達するとしています。

戦車1000両というと、中規模な国まるまる1国分の戦力に相当するような数に当たり、割とものすごいディールです。

もちろん、こうした物量の問題だけでなく、今回のポーランドの動きは2つの側面から、非常に興味深いと言えます。

「信頼できる同盟国」ではなくなったドイツ

まずは今回の取引の政治的な背景です。

ポーランドは世界でも最も強くウクライナを支援している国の1つです。

ウクライナの西隣に位置するポーランドは、もしもウクライナがロシアにやられれば、次にロシアの標的になるのは自分たちだという危機感があります。

このため開戦直後から特に軍事面を中心にウクライナを支援し、避難民も世界で最も多く受け入れました。

軍事支援では世界2番めの支援国となっていて、これはすごい支援の規模だと言えます。

すでに届けられた兵器の物量では、アメリカと遜色ないレベルです。(出所:https://app.23degrees.io/embed/csrwr27izyFhR1pT-bar-grouped-horizontal-figure-7_csv_v3_final)

そしてこの支援の中で、ポーランドはウクライナに対して主力級の戦車を大規模に供与しています。

そしてこの取引はポーランド単独で行っているものではなく、ドイツが絡んでいます。

ドイツはロシアを刺激しないという観点もあって、自らはウクライナへの支援をなるべく行わずに、ここまでなんとかやり過ごしてきました。そしてウクライナが求めた戦車についても、自らは提供しない決断をしました。

その代わりに提案したスキームが次のようなものです。

戦車の提供をドイツがしない代わりにポーランドに代わりにやってもらい、その代わりにドイツがポーランドに最新鋭の戦車を提供するというもの。

🇩🇪ドイツ → 戦車を提供 → 🇵🇱ポーランド → 戦車を提供 → 🇺🇦ウクライナ

こうした流れでポーランドはウクライナに主力級の戦車を、それも何百両という単位で送ったのですが、その後になってドイツがポーランドへの戦車提供に難色を示しました。

これはやはり、ドイツとしてはロシアを敵に回したくないという発想です。「やっぱり、ここでポーランドに戦車を送っちゃうと、事実上ドイツが送ったことになるよなあ、それはまずいよなあ、、、」といった感じですかね。

もちろんポーランドはこれを公然と「裏切り」だと非難しています。

対ロシアで一見、まとまっているかに見えるNATOですが、こうした姿勢の違いからドイツは明らかに信頼性を落としていると言えるでしょう。

少なくてもヨーロッパ最大の安全保障上の懸念に浮上したロシアと相対する時、全く頼りにならないのは明らかになった感じです。これは、フランスも同じですね。

国防費GDP5%も?

そして2つ目の観点は「お金」です。

ロシアの侵略が始まって以来、日本でも国防予算をGDP比で2%に引き上げるべきだという議論が展開されました。

ポーランドはそもそもこの値が2.1%と、多くの西側諸国よりも高いのが特徴です。

ポーランドの安全環境の厳しさを考えると、合理的な数字と言えるかもしれませんが、ウクライナ戦争が始まって以降は、これを3%に大幅アップさせることを決めています。

そして驚くべきことに、ポーランド議会の与党党首は、5%まで増額させるべきと発言したそうです。

政府関係者の発言ではないようなので、このまますんなり実現するかは不透明ですが、いずれにせよ、防衛力を拡大する方向で突き進むのは間違いないでしょう。

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この話、見方を変えてみるとそれだけの武器を供給できる韓国の軍需産業も、並大抵ではないなあと思います。

韓国はもともと、北朝鮮を念頭に自主国防を標榜してきた国です。

そうした長い歴史もありつつ、足元では有望な輸出産業として国がバックアップして育成していたともいいます。

こうして、兵器という側面を見ても、旧東側諸国の一員だった国々が「脱ソ連化」をしていくのは、歴史を眺めているように感じて感慨深いです。

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