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出生率1.20、最低更新 23年生まれ72万7千人
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
価値観の多様化と、出産できる人口の減少とともに出生率が以前よりも下がるのは必然なのですが、
大事なのは、お子さんを望んでいる人が何人望んでいるか、という「希望出生率」との差。
お子さんを望んでいない人に無理に産んでもらうなんてありえないので、やみくもに出生率の目標を設定するのは得策ではなく、
目指すは希望出生率の達成。
と、並行して、希望出生率で社会を維持できる制度設計と、
もし希望出生率がかなっても社会として困るかもしれないのであれば、希望出生率自体があがるような(お子さんを望む人が増えるような)取り組みも必要かと。
まずは、希望出生率の達成が健全な少子化対策。なので、合計特殊出生率の算出だけでなく、希望出生率もだすことが大事。1.8というのも2010年のデータなので。
東京が出生率低いとかいっても、そもそも東京でお子さんを望んでいる人の割合が少ない可能性もありますし、一概に問題視できるわけではない。
望む人数のお子さんに恵まれるようになるためにできることが、国にも自治体にも組織にもあります。
出産費用を“見える化” 一覧できるサイトを厚生労働省が開設
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
本日この発表会見で、産婦人科医としてコメントして参りました。
このサイトは、いわゆる「価格比較サイト」ではなく、
無痛分娩できるのか、24時間対応なのか、
立ち会い出産はできるか、
母子同室か否か、
などが分娩施設ごとに様々で、それをこれまでは妊婦さんが1つ1つ調べないと分からなかったのを、希望の条件を入れるとマッチする施設がでてくる、というもの。
各施設の詳細情報の中に、平均費用も記載されている、という形です。
価格の違いは、医療資源の違い、サービスの違いが価格に反映されているということで、高いところがぼったくっているというわけではありません。
分娩施設は施設ごとに本当にサービスが様々で、妊婦さんのご希望もいろいろあり、この出産なびによってそのマッチングがしやすくなることは双方にとってとてもよいこと。
ただ、お産はなにがあるか分からないので、ある程度近いことも大事で、価格だけを重視して遠くの病院を選ぶ、というような使い方はしないで頂きたいと思います。
妊娠出産は本当になにがあるかわからないので、赤ちゃんや母体の状態によって急遽大きい病院へ転院となることもあり、せっかく選んだのに想定と違うところでのお産になってしまった、、ということもありえますが、ぜひ、妊婦さんと赤ちゃんの安全優先で、受け入れて頂ければと思います。
なお、この「見える化」が始まるきっかけが、出産育児一時金増額の時に「便乗値上げ」と言われ、その牽制のためという声もきかれましたが、便乗ではなく、出生数が減っている中でこれまでと同じレベルの周産期医療を維持するには単価をあげないと維持できないけれども、妊婦さんの自己負担をなるべく増やさないように各病院がんばっており、一時金があがるタイミングくらいしか上げられなかっただけ、ということはご理解頂ければと思います。
服用後に性交渉、相手が妊娠 胎児に奇形の恐れある薬、初事例
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
レブラミドは血液腫瘍の治療に使う薬で、サリドマイド類似薬であり、催奇形性が確認されているため、服用にあたっては男性も女性も避妊を遵守するよう添付文書に記載されています。
今回は、服用していた男性が避妊をせずに性交渉をして相手の女性が妊娠した、とのことですが、避妊遵守の説明が十分でなかったのか、説明は十分に受けていたが男性が守らなかったのかは定かではありません。
催奇形性があるため避妊を、というのはもちろん重要なのですが、
妊娠を望んでいるわけでなければ、薬の服用にかかわらず、男女ともに避妊をする、というのは大事なことです。
催奇形性にかかわらず、望まない妊娠自体が女性にとってはライフプランに大きく影響します。
そして服用中は妊娠を避けるべき、もしくは妊活前に変更するべき薬はレブラミドのほかにもあるので、常用薬がある方は妊娠に影響しないかを確認しておくことをおすすめします。
緊急避妊薬 試験販売の薬局数増加へ“購入8割以上今後も希望”
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
緊急避妊薬は、なんらかの事情で避妊せずに性交渉した場合に、その72時間以内に内服(なるべくはやい方がより効果が高い)することで妊娠を回避できる可能性があるのですが、
これまでは、産婦人科を受診しないと処方できなかったのを、時間的制約があることもあり、なるべくアクセスのハードルを下げるべく、薬局での販売(OTC化)を目指して試験販売中で、その中間報告ですが、
特にトラブルなく運用できているということでなにより。
試験販売の薬局数を増やす、とのことですが、
なにが確認できたら本運用になるのか、の出口戦略が気になります。
あと、アンケート結果に、
>「医師の診察を受けずに、薬局で薬剤師の面談を受けてから服用したい」が82.2%
とあるのですが、これは、診察は嫌、薬局がいい、とかそういう問題ではなく、状況に応じてはやく手に入れられる方でよいのです。
たとえば、対応できる薬剤師さんもいつもいるわけではないので、対応できる薬局が近くになければ病院を受診する、でよいのです。
そしてあわせて、緊急避妊薬しか避妊法がないわけではない、むしろ、普段からの避妊が大事、ということも再確認です。
34歳女性記者の体験記「卵子凍結に本気で取り組んでみた私の1年間」 | 実際にかかる費用と体への負担は?
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
>卵子凍結にかかる費用の助成が、企業の人材獲得競争の切り札として使われはじめている
これは、1つの選択肢への補助として、であればよいのですが、
出産は先延ばしにして働くことを奨励、という意味であればそれは本当に女性のためを思った福利厚生とはいえません。
卵子凍結は、凍結しておけばいつでも妊娠できる、というわけではないので、
(たとえばすでにパートナーがいるなど)先延ばしにせずにすむ妊活は先延ばしにしないに越したことはないのです。
ですので、妊活したいタイミングで妊活できる組織、であることの方が重要です。
>多くの女性は中年になっても自然妊娠できるのに、不妊治療産業は、出産を先延ばしする女性たちの焦りにつけこんで、金儲けをしていると批判する人もいる
これは誤った批判です。日本ではまだこのような主張は見受けられないですが、このような論調がでてきてほしくないので、強めにお伝えしますが、
先延ばしにしないでよい妊娠出産は先延ばしにしない方がよいですし、不妊治療もはやめの方が成功率は高いです。
この「卵子凍結があるのだから不妊治療を急がなくてよい」という主張は、女性の人生よりもビジネスを優先した考え方です。妊娠を先延ばしにさせた結果、もしお子さんに恵まれることができなかったとしても、だれも責任をとってくれません。
パートナーが産後うつに──上場金融ベンチャーCEOが語る、スタートアップ経営と家庭の両立
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
産後うつは、育児疲れだけでは説明できない倦怠感や抑うつ、不眠などで、産後の女性の10-15%がなるといわれています。甘えや弱いわけではなく、治療が必要な状態。実は周産期死亡の死因1位は自殺で、産後うつを軽く捉えてはいけません。
もし、産後、ママの様子が気になる場合は、お産した病院などで相談しましょう。
また、男性も産後うつになることがある、ということも知っておいて頂きたいと思います。
もう1点、この記事で大事なポイントは、
家庭の事情を、仕事上必要な範囲で共有することは「弱音」ではありません。
家庭を維持しつつ、仕事の調整を円滑に進める上で、必要な「情報共有」です。弱音というネガティブなものではない。
産後うつに限らず、不妊治療や病気の治療なども同様。上からだけでなく部下も必要があれば事情を伝えることができる心理的安全性が重要と思います。伝えることで、打開策につながります。
生田斗真さん「旦那様に無痛おねだりするか」投稿に批判殺到。SNSで謝罪するも「何が悪かったのかわかってなさそう」
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
「おねだり」という表現は、もしかすると茶目っ気として使ったのかもしれませんが、生田さん個人の問題ではなく、無痛分娩について誤解があってほしくないので解説します。
「無痛分娩」は、麻酔を用いて経腟分娩することですが、完全に「無痛」になるわけではなく、痛みが緩和される、というイメージ。
お産の経過や、病院の体制によって、いつから麻酔をするかなど痛みの緩和具合も様々。
無痛分娩にすればお産は楽、というわけでないのと、麻酔などのリスクの可能性もあります。
麻酔を行う分、費用は上乗せになります。
それを家族で相談してみては、と生田さんは言いたかったようですが、
旦那さんにお願いして無痛させてもらう
と誤解される表現でした。
無痛分娩にするかどうかは、
お産する病院やご家族と相談して決めることですが、
残念ながらお産は女性しかできませんが2人の子の誕生のためのことであり、
無痛させてやってる という認識は決してもたないで頂きたいです。
15歳未満の子どもは1401万人 43年連続の減少
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
子どもの日に悲観的なニュースに聞こえるかもですが、
年々減少傾向なので、出産可能世代の人口自体が減ってきているのと、
以前に比べて結婚も子どもも望む望まないの多様性が大きいので、
極自然な傾向です。
出生数が減少傾向なのは自然な傾向ですが、子どもを望んでいる人は恵まれる社会であってほしいと思います。
また、人数が減っても、せめてその子たちはのびのび育ってほしいです。
そして出生数が減っていっても維持可能な社会の体制に、なっていかないとですね。
最後に、子育てに対するネガティブな声や空気感が時折あるのは否めませんが、SNSやメディアで特に目立っているという事情はあり、現実世界の育児はそこまでネガティブなものではない、というか、(個人の感想ですが)子育てはとても楽しいです。もちろん大変なことも多くありますが。
ただ、児童手当でなく、年少扶養控除は戻して頂きたいですね本当に。
国内初の飲む中絶薬「メフィーゴパック」、発売半年で724人服用…副作用14件も重篤例なし
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
日本での販売開始からまもなく1年の経口中絶薬の実際の処方例のデータ。
>副作用は嘔吐(おうと)4件、出血と下腹部痛が各3件
とみると、724人中、出血があった人は3人だけだった、と思われるかもしれませんが、そうではなく、
子宮内の妊娠組織を外へ出す(=中絶)ための薬なので、全例で出血はします。
そのうち、異常なほどの出血は3例だった、という意味です。
腹痛も同様で、子宮が収縮するため、下腹部痛を全く感じないのはかなり稀で、添付文書でも「より強い鎮痛剤の使用が必要になったもの又は治験担当医師が異常な痛みと判断したもののうち、因果関係が否定できないもの」を腹痛の副作用、とされています。
安全に使用されていることはなによりですが、痛みや出血はないと思っていたのに…とならないよう、このような情報がちゃんと理解された上で、女性が、薬か、麻酔下で日帰りの手術か、選択できるとよいと思います。
薬での中絶は何日かかるかわかりませんが、
手術の場合は、麻酔がかかっている間に約15分でおわるため、
どちらの方が負担が軽いかは、一概にはいえず、個々の価値観によります。
ラファ空爆、子ども13人含む19人死亡 犠牲の妊婦から新たな命
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
産婦人科医としてどうコメントしたらよいものか、、担当医の先生のお言葉の通りです。
母体は亡くなったのに生児が誕生してよかった、1400gで誕生したけれど様態安定していてよかった、と単純に喜べる話ではありません。
せめて赤ちゃんが元気でなによりですが、産まれる前にご両親を失うなんて、赤ちゃんも、亡くなったご両親も、つらすぎます。
胎児は母体から酸素も血流もきているので、妊婦さんが亡くなってから、かなり迅速に娩出しないと児は助からないため、
この紛争下にも懸命に命を助けようとされている医療従事者のみなさまの存在も痛感する報道です。
この赤ちゃんにはどうか無事に育って頂きたいですが、
このような痛ましい出来事がおこらない世の中になってほしいと切に願うばかりです。
オゼンピックで「できちゃった」、不妊治療効果の可能性巡り議論噴出
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
肥満は排卵障害などにより不妊となることがあります。(やせすぎも妊娠しにくさに影響します。)
妊娠しやすさに影響するほどの肥満の方が、減量して適正体重になることで妊娠しやすくなる、というのはごく自然なことです。
ご本人は予期しなかったかもしれませんが、医学的には十分ありえることです。
体重を適正にするという以外の、妊孕性に有効な効果がGLP-1にあるかどうかについては知見がありませんが、
ただ、そもそもGLP-1は妊娠中の使用の安全性が確認されていないため、糖尿病の方で治療のために使用している方も妊活開始前にはインスリン治療に切り替える必要があります。
ですので、妊娠を希望している方がGLP-1を使用すること自体が本来は避けるべきことです。
なお、米国と日本とでは肥満の度合いが異なりますし、日本で、ほぼ適正体重の方がGLP-1を服用することで妊娠するかというと、米国と同様の期待はできないでしょう。
卵子凍結を選んだ30代女性が考える「自分の価値」
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
卵子凍結をすればいつでも妊娠できる、というわけではないですが、
いつかは子を望んでいるけれども、まだパートナーが見つからない
やむを得ない事情でどうしても妊活が少し先になってしまう
などの場合には、1つの選択肢となります。
先延ばしにしないですむ妊活は先延ばしにしないに越したことはない、
医学的にはこれが大前提です。
どうしても出産で仕事を一時的に離れますが、それがキャリア上の評価を下げない社会に変わる必要もあります。
時間ではなく「生産性」で評価されることと、
産後に同じポストに戻れる保証(仏は法で定められています)があると、
妊娠を躊躇せずにすみます。
もちろん卵子凍結事業は、妊娠を推奨するものではありません。妊娠を望まない人がプレッシャーを感じる必要はなく、あくまで望む人のサポート。
なお、都は男性の精液検査にも助成をだしています。
妊娠は女性だけの問題ではありません。
脊髄難病の胎児手術成功、阪大 母親の子宮切開で日本初
稲葉 可奈子産婦人科専門医 医学博士
妊娠中に診断がつく疾患が増えてきた中で、治療法の進歩は、患者さん親子にとっての希望となります。
胎児期に治療ができるものとして、先天性横隔膜ヘルニアや重症大動脈弁狭窄症など、胎児治療はいくつかの疾患で行われています。
脊髄髄膜瘤は、先天的に脊椎(背骨)の一部が欠損している「二分脊椎」のうちの、神経組織が皮膚に覆われていないのが「脊髄髄膜瘤」です。
米国での胎児治療と出生後の治療との予後を比較した研究では、
運動機能など胎児手術群の方が良好でしたが、
胎児手術では早産や羊水過少などのリスクや母体へのリスクがあるため、治療の適応は慎重に検討されます。
なお、妊活中から妊娠初期に、葉酸を十分に摂取することで、二分脊椎の
発症リスクは大幅に減ります。妊娠を希望している方は、妊娠中から葉酸の摂取を。サプリや葉酸ゼリーなどでも大丈夫です。
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