2023/9/15

【解説】公表資料からわかる「線虫がん検査」の不可解さ

須田 桃子

花谷 美枝

洪 由姫

本特集ではこれまで、線虫がん検査「N-NOSE」にまつわる深刻な疑義を、多くの関係者の証言や複数の内部資料によって浮き彫りにしてきた。

一方、N-NOSEを提供するHIROTSUバイオサイエンスは、多くの大学や病院との共同研究の成果を、学会や学術誌で発表してきた。それら多数の「科学的根拠」は、どう解釈すればいいのだろうか。

実は、そうした数々の論文やHIROTSU社のホームページ、プレスリリースなどの公表資料を読み解くと、多くの「おかしな点」があるのに気付く。

そこでこの記事では、公表資料からわかる線虫がん検査の不可解さを、幾つかのポイントに絞って解説する。

INDEX

• 「精度の根拠」は非ブラインド検査
• 「唯一のブラインド検査」からわかること
• 「すい臓がんに特化した検査」の不思議
• 海外論文による「再現性」は本当か
• 「販売一時停止を」

「精度の根拠」は非ブラインド検査

コメント

選択しているユーザー

• Tanaka Junichi

  NewsPicksを見られない世間一般の方にもN-NOSEの疑義を知ってもらう必要があるよね。

注目のコメント

• 髙橋 宏瑞

  順天堂大学医学部総合診療科 准教授

  ・2023年09月15日

  素晴らしい記事です。複数の医学研究論文に批判的吟味を行い、疑義を突きつけています。研究論文については、論文に対する批判をletter to the editor という形でジャーナルに書く事が出来て、その論文に対する批判的吟味を広く周知する事ができます。
  
  この記事でやられた事はまさにこの方法と同じで、論文に対する疑問点を広く世の中に伝えており、とても質の高い記事だと思います。
  
  ただ単に線虫検査を批判するのではなく、公表されている資料から矛盾点を導き出して、科学的に批判されていて、私自身も勉強になりました。
  
  医学で使われる検査では、国の検査機関で厳しく有効性が評価されてから世に出る事になりますが、ビジネスで行われるものについては第３社の評価が行われないままに世の中に出る事になります。つまり、性能が保証されていない事になります。
  
  線虫検査も、企業マーケティングによって、多くの人を信用させる事に成功していますが、そんなに素晴らしい検査であれば医療機関で使われているはず、という考え方を持つことも重要です。
  
  追記
  線虫検査について、ChatGPTに聞いてみた内容を記事にしましたので、興味のある方は読んでみてください。
  
  https://newspicks.com/topics/new-medical-norm-with-chatgpt/posts/30?ref=TOPIC_POST_MANAGEMENT_VIEW
• 須田 桃子

  NewsPicks 編集委員 / 科学ジャーナリスト

  ・2023年09月15日

  特集第5回。これまでの記事は関係者への独自取材に基づく内容が中心でしたが、この記事では、論文やプレスリリースなどの公開情報を紐解くことでわかるN-NOSEの問題点を、幾つかピックアップして紹介しました。同日公開の社長インタビューの予習的な内容にもなっていますので、ぜひ併せてお読みください。
• 山田 悠史

  マウントサイナイ大学 アシスタントプロフェッサー

  ・2023年09月15日

  企業側が検査は「科学的根拠に基づく」と主張するのであれば、既存のエビデンスに対して内部、外部双方から複数の疑惑が出されている以上、販売を一時的に停止して、再現性を明らかにすることこそ、科学に誠実な姿勢であり、最良の方法ではないでしょうか。
  
  それを既存の不十分なエビデンスで回答したり、机上の討論で対応するのはもってのほかだと思います。このような状態で、検査が続けられれば、被害に遭う方をますます増やしかねません。
  
  また、今から私たち一人ひとりにもできることがあります。それは、まずはとにかく興味本位でこの検査を受けないこと、勧めないことです。将来的な可能性まで否定するつもりは全くありませんが、このような状態では受け入れられないと、今はこの検査にNOを突きつける必要があるのではないでしょうか。