2022/2/10

【直言】ファッションが示す、「サステナブル」の次

Kaori Nakano Co.,Ltd.
ファッション業界は、社会の変化にいち早く反応するため、産業における「炭鉱のカナリア」的な存在だ。
今やあらゆる業界で対応が求められる環境問題については、石油業界につぐ2番目に環境汚染してきたことが、問題視され、早い段階から改善のため模索してきた。
コロナ禍以降は、もはやサステナブルな要素がないものは消費者に選ばれなくなり、環境や人権問題などに配慮した上で、いかにビジネスを回せるかが、問われるステージに突入。課題先進業界であるファッションが、次に向かうのは、どこなのか。
NewsPicksでは、服飾史家の中野香織氏に、現時点で見えてきた3つのキーワードについて解説してもらった。
INDEX
  • ①マウンティングは時代遅れ
  • ②2022年の「キーワード」とは
  • ③ジェンダーフリーはもはや当たり前
  • ④ウイグル問題の「次」に来るもの
  • ⑤デザインで勝負しない服
  • ⑥実は好調な超ラグジュアリー

①マウンティングは時代遅れ

──1年前の取材では、コロナ禍で激変したものについてお聞きしました。それから一年経って、ファッションの潮流は変わりましたでしょうか。
コロナ禍に慣れてきて、戻ってきたもの、戻っていないものがありますが、時代の「価値観」そのものが一気に動いたという印象です。
リモート生活が長くなり、対人関係だったら、上下関係の上に立とうとしてマウントを取ったり、すごいものを所有するのを見せたりするのは、救いようもないほど時代遅れに見えています。
一方で、五輪でスケートボードが注目を集めたこともあって、1番だけを追いかけるのではなくて、互いをリスペクトし合おうというストリートスポーツカルチャーの空気が広まりました。
その流れを牽引しているのは、若い世代の富裕層です。
先日、若い世代の富裕層の男性とZoom会議をしたのですが、部屋の中に自転車が飾ってありました。
脱炭素のためにも、健康のためにも自転車はいい。中途半端な車を持つくらいなら、自分にとって最高と思える自転車を持った方がいい、という発想なんだそうです。