2021/7/10

【ザッカーバーグ】子会社インスタグラムに仕込んだ「爆弾」

2012年にフェイスブックの傘下に入り、2018年に年間収益100億ドルと爆速成長を遂げたインスタグラム。だが共同創業者のケビン・シストロムとマイク・クリーガーは、同年9月にCEOを電撃退任し、インスタグラムを去る。

その直前の2018年前半、ザッカーバーグはインスタを利用して何を仕掛けようとしていたのか。インスタ創業者らの苦悩を通じて、皮肉にもザッカーバーグの天才的な「構想」が浮き彫りになる。

話題の新刊、『インスタグラム:野望の果ての真実』よりお届けする。
INDEX
  • インスタに許された「採用枠」は68人
  • 社員800人で10億人の面倒を見ろ
  • 狙いは「インスタの独立性を殺すこと」
  • インスタ創業者間に「亀裂」が走る
  • ザッカーバーグの「ファミリー構想」
  • 子会社ワッツアップ創業者の「怒り」
  • 私はユーザーのプライバシーを売った

インスタに許された「採用枠」は68人

インスタグラムはフェイスブックを脅かす存在なのか――。
フェイスブックによるインスタグラム買収後、この議論は、ことあるごとに、両社幹部の関係に影を落とすようになった。
影響が特に大きかったのが「採用」だ。
インスタグラムが勝手に採用することはできず、創業者ケビン・シストロムとマイク・クリーガーが詳しい説明をマーク・ザッカーバーグにして、許可をもらわなければならなくなった。
インスタグラム共同創業者の2人。マイク・クリーガー(左)とケビン・シストロム(右)(写真:Chris Saucedo/Getty Images)
2018年、ザッカーバーグがインスタグラムに許可した採用は68人。8%ほどの増員にあたる。
インスタグラムにとって、これは信じられないほど小さな数字だった。
さまざまな問題に直面していて、対処が必要だ。IGTVなるものを開発して動画機能を拡充する計画もあった。ストーリーズに続いて大人気になると期待しているものだ。
そうでなくとも、既存事業でもやらなければならないことが増えていて、手が回らなくなっているという状態で、である。

社員800人で10億人の面倒を見ろ

インスタグラム側はデータを集めて反論した。
クリーガーはザッカーバーグに対し、1ユーザーあたりの社員数をフェイスブックとインスタグラムで比較してみせた。
2009年、フェイスブックはユーザー3億人の面倒を1200人の社員で見ていた。
2012年、ユーザーが10億人になったとき、社員数は4600人だった。
2018年にはインスタグラムのユーザー数も10億人に達する見込みだったが、社員は800人にも満たない。成長速度に比べて増員速度が遅すぎる。