【躍進】米中摩擦で漁夫の利。「世界の工場」ベトナムの現在

2019/8/8

中国から「逃げる」メーカー勢

ドナルド・トランプ米大統領が中国に仕掛けた貿易戦争で、世界のどこより漁夫の利を得ているのがベトナムだ。
アメリカの対中追加関税により企業が中国での生産を見直したことから、ベトナムの工場に注文が殺到。さらにテクノロジー大手各社はベトナムでの生産拡大を目指している。スマートフォンその他ハイエンドなハイテク機器の製造大国に成長しつつあるベトナムの野心は、膨らむばかりだ。
とはいえ、製品のクオリティや生産力が上がらなければ話にならない。
ベトナム北部バクニン市にあるバク・ヴィエト・テクノロジーは、キヤノンのプリンターやコルグの電子楽器、サムスンのスマートフォンに使われる小さなプラスチックの部品を製造している。しかし毎月70〜100トンのプラスチックを輸入に頼っているうちは中国とは勝負にならないと、社長のヴー・フー・タンは嘆く。プラスチック資材のほとんどは中国産だ。
「中国とベトナムでは比較にならない」と、タンは言う。「資材を輸入するだけで、うちの製品は中国のものよりも5〜10%高くなってしまうんです」。プラスチックのメーカーを誘致したくとも、ベトナムの市場は小さすぎてできない。
だが、米中の関係悪化に震え上がった一部の企業にとって、世界第2位の経済大国中国はすでに生産拠点としての魅力を失っている。
トランプ政権が次の制裁対象に消費者に人気のスマホやゲーム機を据えるかもしれないとあって、とりわけこれらのジャンルのメーカーは、人件費の安い生産拠点を見つけて事業を移転しなければと焦っている。
(Linh Pham/The New York Times)

すでにはじまった人手不足