【番外編・中】LINEが勝つには「買収」しかない

2016/6/27

LINEならヤフーに勝てる

──堀江さんから見てLINEの「トロイカ体制」(注:シン・ジュンホ・最高グローバル責任者、出澤剛・最高経営責任者、舛田淳・最高戦略マーケティング責任者)をどう思いますか。
僕、シンさんと舛田さんはそんなに知らないから、そこはそんなに言うべきことはないですね。
ただ森川(亮・前LINE社長)さんが最後、“上がりポジション”だったのはわかりますけど(笑)。でも、何か雰囲気があるのでしょうね、あの方は。結局みんなお金を出すんですよ、彼には。
出澤君は、逆にそんなにカラーがないところが、カラーというか。彼がトップだと、あんまり社員も不満を言わないというか。確かに(旧ライブドアの)モバイル事業部の人たちは、うまくやっていました。
彼は向いているんじゃないですか、社長に。
──堀江さんもLINEユーザーなのでしょうか。
日本でLINEを使っていなかったら、仕事にならないじゃないですか。コミュニケーションを取らないって言っているのと一緒ですよね、それは。
──LINEのマーケティングの部分は、元ライブドアの社員が担っているところが多いですよね。
LINEよりもっとマイナーなプラットフォームだったライブドアでも、彼らは稼ぎ出していましたから。
だから、元ライブドア社員たちはLINEで気持ちいいぐらいに仕事をしているんじゃないですかね。今までできなかったことが、簡単にできるみたいな。
「LINEニュース」とか、本当にみんな大喜びだと思いますよ。だって、ずっとライブドアニュースは勝てなかったわけですよ、ヤフーニュースに。
全然、足元にも及ばないみたいな状況があったので。それがLINEになって天下を取った瞬間に、完全に入れ替わりましたからね。
ブログサービスだって、ずっと「アメブロ(アメーバブログ)」にやられていたのが、最近はどんどんLINEブログがひっくり返していますよね。
有名人に公式アカウントをつくってもらう代わりに、ブログをやってもらって。
LINEのポテンシャルと課題を真顔で語る、堀江貴文氏。
──まさに破竹の勢いですね。
でも、本来そこは「ライブドアブログ」が取るべきポジションだったんですけどね。みんな覚えてないですけれど、みんな当時は「ライブドアブログ」を使っていたんですよ。
でもライブドア事件が起きたので、一気にアメブロに持っていかれたというか。
それは(サイバーエージェントCEOの)藤田(晋)君も言っていますけれど、堀江さんがいなくなってくれたおかげで、アメブロはうまくいきました、みたいな(笑)。
──旧ライブドアの社員たちも、当時から実現したかったことを、10年越しにLINEでやっていると。
LINEの持つプラットフォームで、すべてひっくり返せているんじゃないですか。うまくいっていないのは、eコマース(LINEモール)ぐらいでしょう。
あの分野は、生半可じゃできない領域ですからね。

LINEの「親子上場」には反対

──韓国ネイバーの子会社であるLINEが、2016年7月にいよいよ上場をする予定です。そもそも親子上場のメリットはどこにあるのでしょうか。
メリットもなにも、親子上場って基本的にダメでしょう。良くないと思いますよ。だって、どう考えても(親会社と)子会社の少数株主は、利益相反をしますもん。
基本的には、認めるべきではないと思いますよ。
──だとしたら、LINEの上場にも反対ですか。
いやいや。条件付きです。つまり(韓国)ネイバーが順次、持ち株比率を下げていくというのであれば、いいと思いますけれど。
だってそうしないと、子会社の(LINEの)独立とかって難しいと思うので。
──なぜ韓国ネイバーは、LINEの支配権にあれほどこだわるのでしょうか。
まあ、いろいろ難しいんでしょうね。だって、ネイバーの時価総額は、半分以上がLINEの評価だと思います。だから、そこがジレンマなのでしょうね。
韓国の事業がそんなにうまくいっていないのであれば、韓国の社名もネイバーからLINEに変えて、韓国内で資金調達をすると思うんですけど。
ただ、韓国ではLINEは全然知名度がなくて、やっぱりネイバーありきの国じゃないですか。
難しいと思いますね。だからLINEとして資金調達せざるを得ない状況というか。でも、支配権は失いたくないみたいな。

時価総額はせいぜい2兆円

──LINEの今後について、どれくらい成長のポテンシャルを見ていますか。
どうなんですかね。もう、企業買収をしていくしかないんじゃないですか。あとは別ブランドのアプリを立ち上げて、ヒットさせるしかないと思いますね。
たとえば(世界で1億5000万ダウンロードを超えた自撮りアプリ)「B612」とかでしょうね。
──利益を上げるためには、LINEに決済などオフラインサービスを乗せてゆく。
それは、ドミナント(独占的な市場シェア)になっている国でしかできないですよね。ドミナントを取っている国では、それをやればいい。
だけど、中東とかアフリカとかは、頑張って取りにいくしかない。ライトウエイト(簡易)版のLINEは重要になってくると思います。
ただ、同じくライトウエイト版のフェイスブックメッセンジャーも、けっこう出来がいいですね。アフリカとか、要はまだ勝敗が決していない国々を、どう切り崩していくというのが1つ。
あとドミナントを取っていない国では、買収していくしかないですね。ドミナントを取りそうなアプリを。 
LINEがどれだけ成功の果実をもぎ取れるかは、今後の買収戦略に大きく左右されそうだ。
──フェイスブックが写真共有アプリのインスタグラムを買収したように、ですね。
あるいは動画アプリなのかもしれません。だから、買収資金を得るためにも、上場するのはすごく大事なんですね。
ただ、上場してもフェイスブックの時価総額は30兆円超、一方でLINEの上場時の時価総額は約6000億円です。せいぜい2兆円くらいまでしか上がらない。だから買える会社は、フェイスブックと戦ったら、絶対負けますからね。
フェイスブックの戦略って、まさに自分たちの脅威になるようなサービスは、とにかく買いにいく。もし買えなかったら、対抗するサービスをリリースして、つぶすという戦略なので。
今、フェイスブックはちょうどスナチャ(スナップチャット)対策をしているじゃないですか。「MSQRD」でしたっけ、買収をして。
あの「MSQRD」の動画フィルターも、どこにヒットのツボがあるのかというのは、やってみないとわからないじゃないですか。自分の顔を、動物にしたりして。でも、わかったら即座に買収する。
あるいは、即座にパクる。
──そうなってくると、経営スピードが命ですね。
LINEだって、もともとはカカオトークのパクリなわけですから。
パクリだから、別に悪いことだって言っていないですからね。そして、カカオトークはワッツアップのパクリですから。
ちなみに僕は、カカオトークを知らなかったんですよ。ちょうど刑務所に行ったころなんですよね。(LINEがリリースされた)2011年6月に入ったんですよ、僕。
後編へつづく。
爆速成長アプリを生んだ日韓ハイブリッド経営
LINEの秘密
  1. LINE上場前夜。韓国人トップが語った言葉
  2. LINE上場、足止め2年間の全舞台裏
  3. 上場でLINEは韓国本社を超えるのか?
  4. 【インフォグラフィック】“LINEの父”シン・ジュンホの逆転劇
  5. 神出鬼没 謎に包まれたネイバー創業者の悲願
  6. グローバル化の鍵握る、韓国の黒子たち
  7. 韓国を牛耳る財閥とLINE。その実力を徹底比較
  8. 韓国のアプリ「監視社会」は他人事か
  9. LINEキャラを発明した韓流作家の素顔
  10. 【チョン・ヤンヒョン】LINEの父に伝えた、日本市場「3つの秘訣」
  11. 【パート2】LINEに流れる「ライブドア」の遺伝子
  12. 株式会社「ライブドア」が消えた日
  13. ライブドアが教えたLINEの“稼ぎ方”
  14. ゲーム事業との“離婚”。そしてトロイカ体制へ
  15. 【舛田淳】シンと私は分身のような存在だ
  16. 【舛田淳】フェイスブックに本気で対抗している
  17. 【パート3】LINEがフェイスブックに勝つ方法
  18. 決済で最先端ゆくウィーチャット。7億人の衝撃
  19. 絶対王者「ワッツアップ」を襲う、ロシアの異才
  20. スポティファイ来襲直前。LINEミュージックの誤算
  21. ついにLINE上場を認める、東証の“本音”
  22. 【編集後記】LINEに眠るドラマ
  23. 【番外編・上】ホリエモン、LINEのライブドア軍団を語る
  24. 【番外編・中】LINEが勝つには「買収」しかない
  25. 【番外編・下】ライブドアがあったら、iPhoneをパクっていた