クリエイティブ思考の邪魔16リスト

「クリエイティブ思考」の邪魔16リスト#12

五十歩百歩では「驚き」がありません

2015/5/25
毎週1回、合計16回にわたり、学術書的な高度な専門学ではなく、日ごろの実務に基づく体験を元に「クリエイティブ思考の邪魔16リスト(16回やるから)」と題して、16の異なる視点から邪魔するものを紹介します。
#1:「俺はクリエイティブではない」と思ってはいけません
#2:自己ブランディングに罪悪感を持ってはいけません
#3:昨日と同じことをやっても生き残れない
#4:規則に従い、思考停止状態に陥ってはいけません
#5:多様な人材で異なる能力をうまく組み合わせるべし
#6:働きすぎて「100%仕事人間」になってはいけません
#7:リズムがない中で思うがままに過ごしてはいけません
#8:「集中」を分散させてはいけません
#9:「英語は不要」と思ってはいけません
#10:「制約はないほうがいい」とは限りません
#11:「ギーク=変わっていて好きになれない人」ではありません

写真のタブレットたち、それぞれどこの「ブランド」かわかりますか? ほとんどの人がわからないと思います。だって、ロゴがないとみんな似たり寄ったりだから。なぜ、こうも似たり寄ったりになってしまうのでしょうか?

2つ理由があります。1つは、タブレット(ノートパソコンも)製造工程部分のエコシステムが完成されているからです。

たとえばあなたは、仁宝電脳工業(コンパル)、広達電脳(クォンタ)、緯創資通(ウィストロン)、英業達(インベンテック)、和碩聯合科技(ぺガトロン)という会社を知っていますか?

彼らはデル、HP、レノボ、エイサーなどのタブレット、ノートパソコンを主に中国で製造している台湾企業です。その規模は実に世界の約90%以上に及ぶと言われています。

メーカーとの契約は数年毎に変更される場合もあるので、ほとんどの情報はこのエコシステム内で共有されてしまいます。

つまり、最初はアッと驚くデザインであっても、このエコシステムが徐々にその驚きをなくすのです。

2つ目は、競合を強く意識するからです。以下の1〜6は、似たり寄ったりになる工程を簡素化したものです。

1. 技術提供ベンダーと協力し、CPU、グラフィック、バッテリー、消費電力などの改善を行う。
 2. それに一部の消費者が喜ぶ。
 3. 競合がそれに追いつこうとまねをする。追いついたら広く案内する。
 4. 昨日はありがたがれていた技術が、今は当然だと感じられるようになる。
 5. 最低限要求される仕様的なハードルが高くなる。
 6. ステップ1に戻る。

差別化競争によって、過剰な活動が繰り返され、上記のの1〜6を繰り返す回数が多いほど、利用者が体感できる「驚き!」がなくなり、似たり寄ったりの製品が増えるわけです。だからこそ、今、クリエイティブな考え方が必要です。

「今、何に驚いているか?」。これはクリエイティブな考え方につながる問いです。マイケル・デル氏が寮で自分のパソコンを組み立てるために必要な部品を買ったとき、700ドル程度しかかからないことに「驚いた」ようです。

なぜなら、当時の「IBM PC」は2500ドルで販売されていたからです。デル氏はこの「驚き」がきっかけで、パソコンをお店で買うとなぜ部材コストの3倍以上もの値段になるのだろうか? という疑問を抱くようになりました。

そして、テクノロジー要素がなくとも、受注から発送までの流れを工夫することで、業界No.1の地位まで上り詰めました。

2013年9月に私は「Kano Computer」に一目惚れし、オンラインで予約しました。1年後の2014年9月にようやく自宅に届きました。Kano Computerは、組み立てとプログラミング学習が楽しめる、6〜14歳向けのパソコンです。金額は約1万5千円。

「驚いた」のは、今までまったくおもちゃの動く仕組みに興味がなかった私の息子(6歳)が、組み立てを通して、全体の構造を理解しようとしたことでした。

また、「Minecraft」「Pong」などのゲームを通して、プログラムを組み立てることに興味を示すようになったことでした。

子どもの深層心理をくすぐる組み立て方式で、パソコンが動く仕組みを理解させ、ゲームを通してプログラミングの感覚を学ぶ、今ある技術で、まったく新しい需要を引き出しています。

クリエイティブ思考の邪魔リスト#12:五十歩百歩では「驚き」がない。そんなときは、「今、何に驚いているか?」、クリエイティブな考え方へつながる問いを。次回、クリエイティブ思考の邪魔リスト#13は「毎日の積み重ねがおまえを弱くする!」。

※本連載は毎週月曜日に掲載予定です。