2023/12/14

【解説】認知症の超大型新薬「レケンビ」が投げかける問い

NewsPicks 編集部 記者・編集者
エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レケンビ」(一般名、レカネマブ)がいよいよ日本で発売される。
12月13日、日本での薬価(公定価格)が厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)で承認された。
薬価は、体重50kgの人の場合で年間約298万円。12月20日に発売予定で、アメリカに次いで2カ国目の発売となる。
高齢化の進展に伴い、国内の認知症患者数は2025年に700万人になるとみられている。その7割を占めるのがアルツハイマー病だ。
アルツハイマー病は、脳の中にアミロイドβ(ベータ)という異常なタンパク質が蓄積していき、神経細胞が死滅し、認知機能が失われていくと考えられている。
家族など周囲の人が長期間介護に携わることが多く、社会的な課題になっているが、根本的な治療法はまだない。
そうした中で、脳内のアミロイドβを取り除くレケンビは、アルツハイマー病の基本的なメカニズムに働きかける初めての薬として世界的に注目を集めている。ピーク時で年間1000億円規模の売り上げが見込まれる大型新薬だ。
しかし一方で、その効果はまだ限定的であり、また薬価の社会的な負担が大きいため、医療保険財政を圧迫するのではという懸念もある。
レケンビとはどんな薬なのか。社会にどんな問題を投げかけているのか。
INDEX
  • レケンビはどんな薬?
  • 患者の費用負担は?
  • どれくらいの売り上げになる?
  • イノベーションと財政の持続可能性
  • 「効果」の評価が難しい

レケンビはどんな薬?

レケンビは、認知症の中でも、軽度の認知障害(MCI)と早期アルツハイマー病患者を対象にした治療薬。体重1kg当たり10ミリグラムを2週間に1回、1時間ほどかけて点滴する。使用期間は原則1年半まで。
レケンビは、望めば誰でも、どの医療機関でも使える薬ではない。