2023/10/24

【激震】動き出す2000兆円。新NISAが開く地獄の扉

濵田 尚子

NewsPicks マクロ・マーケット担当記者

決済から銀行、証券まで。あらゆる金融サービスの提供を目指す、新たな経済圏の覇権争い。その引き金となったのは、2024年に始まる新NISAだ。

2000兆円の個人の金融資産が、遂に投資に向かい始める──。そんな期待感から、経済圏における「資産運用」というピースがにわかに重要性を増している。

10月に発表されたNTTドコモとマネックス証券の提携は、まさしくその流れをくむもの。

これまで金融に距離を置いてきたドコモも対応を迫られた。

PayPay証券が新NISAに対応するなど、そのほかの経済圏も証券事業の取り込みや強化を急ぐ。

急激に大きくなる資産運用のニーズを取り込んで、経済圏の中核に──。各社はそうもくろむ。

だが、雲行きはかなり怪しい。資産運用市場の起爆剤と期待されている新NISAは逆に、金融業界を大混乱に陥れるきっかけになるかもしれないのだ。

新NISAはどのような地殻変動を起こそうとしているのか。すでに始まった熾烈な争いを見てみよう。

INDEX

• ドコモは高値掴み？　
• 1800万円の衝撃
• 強者が総どり
• 独走態勢を狙うSBI
• "最悪の"タイミング
• 経済圏で得するのは誰？

コメント

注目のコメント

• 永濱 利廣

  第一生命経済研究所 首席エコノミスト

  ・2023年10月24日

  私がエコノミストの駆け出しのころ（四半世紀前）に常識として教わったのに間違っていたことが二つあります。
  一つは、政府債務残高が拡大すると長期金利が上がるということと、もう一つは高齢化が進むと高齢者が貯蓄を切り崩して家計の貯蓄率が下がり、家計金融資産が減るということです。
  前者は、政府部門でしか資金需給を見ていないことが誤りであり、後者は高齢者が支払ったお金はマクロで無くなるわけではなく、企業を通じて現役世代に移転したりもするということを無視しているということです。
• 唐鎌 大輔

  株式会社みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

  ・2023年10月24日

  ヘッドラインだけ見ると、NISAに伴う円売りがさらなる円安を惹起するという意味での地獄の扉かと思いましたが、職業病でした。なお、円に限定した場合の現預金は約1100兆円ですから、5％外貨に動くだけでも55兆円（22年度の経常黒字にして5年分）が円売りになります。過去四半世紀で徐々に、しかし確実に外貨建て運用比率は増えていますし、人口動態において今の現役世代が資金循環統計の支配層になってくると本格的に「貯蓄かから投資」は加速する可能性があると思いますし（形式上は）政府・与党もそれを望んでいるという状況にあります。
• 清水 勝彦

  慶應ビジネススクール 教授

  ・2023年10月24日

  いろいろ考えると「NISA口座を移す手続きが煩雑」という点が結構大きい気がします。なぜそうなっているかはわかりませんが、どこかで(昔の携帯のように)新規加入者獲得競争から他社からの奪い合い競争に転じるでしょう。結局その時も手数料だけが差別化要因とすれば、大手数社に集約されていくのは見えています。