2023/7/8

【ドルトン東京・前編】当たり前を塗り替える。開校5年目の挑戦

NewsPicks for Kids編集長/NewsPicks Studios
NewsPicksが昨年8月に創刊した、まったく新しい子ども向け新聞「NewsPicks for Kids」
今の子どもたちが社会で活躍するようになる2040年ごろには、多様な他者と対話・協調したり、新しい問いを立てて解決したりする力が、ますます必要になると予想されます。
そのために必要な「ミライの学び」とは何か? 私たち大人は、自分たちが受けてきた「過去の学びの常識」を、いかにアップデートしていけばいいのか?
本連載「Next Edu」は、自身も小学生を筆頭に3児の親である「NewsPicks for Kids」編集長の筆者が、さまざまな有識者の方々に話を伺いながら考え、探求していく企画です。
第7回のゲストは、学習者中心の教育メソッド「ドルトンプラン」の実践を掲げて設立された中高一貫校、ドルトン東京学園 中等部・高等部校長の安居長敏先生です。
学習者中心とは、具体的にどのような学びなのか。開校5年目を迎えた同校のチャレンジとビジョンについて、前後編で伺います。
INDEX
  • 今の教育の課題は「100年前と同じ」
  • 個を尊重する「ハウス」制
  • 教科書の順には学ばない
  • 先生も生徒も探究する場
  • 先生の兼業は「大歓迎」

今の教育の課題は「100年前と同じ」

金谷 初めて学校にお伺いしましたが、大きな吹き抜けを取り囲むようにガラス張りの教室が配置されていて、開放感がすごいですね。
生徒さんたちが図書室で寝転んでリラックスしながら読書しているなど、自由な雰囲気も印象的です。
「ラーニングコモンズ」(図書室)
安居 廊下に沿って教室が並ぶ、画一的なハーモニカ型校舎とはまったく違いますよね。
ドルトン東京学園は学習者中心の教育メソッド「ドルトンプラン」の実践を掲げて新設された中高一貫校ですが、それを実現するのに最適な校舎を作ろうと思ったら、こうなりました。
ドルトンプランは、今から100年ほど前、工業化社会に向かうアメリカで、詰め込み教育が行われていたことに危機感を抱いたヘレン・パーカーストが提唱しました。
普通の学校は、効率よく知識をインストールさせるための「型」が決められていますが、それに合う子はごく一部。子どもは本来、いろいろな横道にそれたりしながら学んでいくのが当たり前です。
そこで、子ども一人一人が学びやすい環境をつくり、可能性を最大限伸ばすための自由を与えようというのが、ドルトンプランの要となっています。
物理室・化学室・生物室の中央に位置するサイエンスセンター
当時、この考え方は世界中に広がって、日本でも「大正自由教育運動」が盛り上がったんですよ。成城学園などがその例ですね。
その後第二次世界大戦が起きて、一気に下火になってしまったんですけれど。