スタンフォードを破り寄付金番付ナンバーワンに
アメリカの大学が昨年度集めた寄付金ランキングで、ハーバード大学が約10年ぶりに1位に輝いた。
このランキングは、米教育支援評議会（ニューヨーク）が調査して、まとめたもの。それによると、ハーバード大学は昨年6月までの1年間で11億6000万ドルもの寄付を集めた（現金のほか美術品や不動産などの寄贈品の評価額を含む）。
第2位は計9億2800万ドルを集めたスタンフォード大学。同大としては歴代3番目に大きな金額となった。とはいえ、スタンフォードは2004年以降このランキングで首位を守ってきたから、ハーバードに敗れたのはちょっとした屈辱かもしれない。イエール大学は4億3000万ドルで、10年ぶりにトップ10入りを逃した。
だが、ハーバードやスタンフォードのように潤沢な資金のある大学が、寄付金ランキングでも上位を占めているということは、金持ち大学の競争的優位がますます固定化することを意味する。
より一般的な大学は、高騰する学費を払える学生を探すのに苦労して、財政基盤が悪化している。つまり「持てる大学と持たざる大学」の格差が広がっているのだ。
「大学への寄付という大きなパイがあるとすれば、金持ち大学に多額の寄付が集まることで、ほかの大学に集まる寄付は減ってしまう」と、コーネル大学高等教育研究所のロナルド・エーレンバーグ所長は語る。「余裕のない大学では、大学の運営と建設プロジェクトの両方で寄付を必要としているのだが」
2018年までに65億ドル調達へ
1636年に設立されたハーバード大学は、アメリカ最古の大学で最もリッチな大学でもある。なにしろ2014年6月時点での大学基金（大学の基盤整備や学生支援を行う基金で通常寄付の受け皿となる）は364億ドルにも上る。
教育支援評議会の調査を指揮したアン・カプランによると、ハーバードが昨年度受け取った寄付で最大のものは、ある財団からの3000万ドルの寄付だった。別の財団から2185万ドルの寄付もある。
ただ、ハーバードは昨年9月（今年度）、同大史上最高の寄付を受け取っている。香港の新興財閥・恒隆集団の陳兄弟（ロニー・チャンとジェラルド・チャン）が公衆衛生大学院に対して行った3億5000万ドルの寄付だ。
今年2月には、学費援助として1億5000万ドルの寄付もあった。「ハーバードはこの勢いをしばらく維持すると思う。億単位の寄付ができる人が大勢つながっているから」と、長年イエール大学とコーネル大学の資金調達を指揮してきたインゲ・リーチェンバックは語る。
ハーバードが昨年度、資金調達で好成績（前年比46％増）をあげた背景には、2018年までに65億ドルの調達を目指す「ハーバード・キャンペーン」がある。「キャンペーンの開始以来、卒業生や友人たちから実に寛大な寄付があった」と、エリオット・ロジャース同大副学長（卒業生事務・開発担当）は認める。
来年はスタンフォードが巻き返し？
マサチューセッツ州ケンブリッジにあるハーバード大学が東海岸の雄だとすれば、カリフォルニア州パロアルト近郊にあるスタンフォード大学は西海岸の雄だ。歴史はハーバードよりも浅く、1891年に開校。現在の大学基金は214億ドルで、2004年以降はハーバードを上回る寄付金を集めてきた（昨年度逆転されたわけだが）。
スタンフォードは2年前、年間10億ドルという記録的な額の寄付金を集めた（これも昨年度ハーバードに抜かれたが）。さらに大学の合格率でもハーバードより「狭き門」であることを証明した（スタンフォードは5.1%、ハーバードは5.9%）。志願者の数もハーバードを8000人上回った。
2015〜16年度は、スタンフォードが再び寄付金で巻き返す可能性がある。新たに開設された現代美術館に、100点以上のコンテンポラリー絵画（マーク・ロスコやウィレム・デ・クーニングなどの巨匠の作品を含む）が寄贈されることも決まっている。その価値はまだ確定していないと、マーティン・シェル副学長は言う。また、「寄付者は今後も本学をサポートしたがっている」とし、寄付金の多くは幹細胞研究やガン研究など人類を脅かす問題への取り組みに使われる予定という。
勝ち組大学は勝ち続けるが
株式市場の好調を受け、2013〜14年度のアメリカの大学への寄付額は計375億ドルと、1957年の調査開始以来で最高を記録した。前年度と比べると11％の増加だ（ちなみに同時期にS＆P500種株価指数は21％上昇した）。
その一方で、全米に3000以上ある大学の1％未満にあたるわずか20大学が、寄付総額の30％を集めているという現実がある。5億ドル以上を集めたのが7大学（南カリフォルニア大学、ノースウエスタン大学、ジョンズ・ホプキンス大学など）、4億ドル以上が14大学（デューク大学、ミシガン大学、ペンシルベニア大学など）、2億ドル以上が約35大学（ブラウン大学、プリンストン大学、エモリー大学など）だった。
（執筆：Janet Lorin記者、写真：@iStock.com/jorgeantonio 、翻訳：藤原朝子）
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