2022/12/28

【電博強制捜査】広告産業は「分散化」へ。GO三浦から3 つの提言

株式会社GO 代表取締役 PR/CreativeDirector
毎年恒例、広告界の風雲児 The Breakthrough Company GO代表・三浦崇宏氏による広告業界大予測。
5年目を迎える今回は、東京オリンピックをめぐる大激震を受け、年末配信することになった。
汚職・談合──
電通のみならず、博報堂やADKなど複数の大手広告会社を巻き込んだ前代未聞の事態。誰もが見通しを立てられない現状と未来に、渾身の1万4000字で忌憚なく切り込む。

「談合」の何が悪いのか

三浦 「広告業界大予測」と銘打って、毎年言いたい放題してきたが、はっきり言って今年は予測どころじゃないよ! まどろっこしいことはなしだ。
まずは、みんなが一番気にしている東京オリンピックをめぐる問題について語ろう。
まず、贈収賄について。
これは断罪されてしかるべきで、業界や背景を問わず、決してあってはならない。だが、「談合」については、考えなくてはいけないことがある。
そもそもオリンピックという超巨大事業を引き受けられる企業が、どれだけ存在するのか。
(写真:picture alliance/アフロ)
蓋を開けてみたら会社としての体力がなくて破綻しました、では許されない。
実際に運営するための現金、社員数、そして国内外の企業とのネットワーク……これだけの圧倒的な体力がある会社は、現実問題として決して多くはない。
そうなってくると、必ず引受先の調整が必要になる。広告業界に限らず、そうした商慣習は、事業規模が大きくなるほど生まれてくる。
仮にそうした調整をせずに、完全にオープンな競争にした場合に何が起こるか。
まず各社の担当者が、何日も企画書や資料づくりに追われる。採択されなかった場合は無駄になる作業が膨大に積み上がっていく。また、実績がないのに発注してしまう不安もある。
例えば、GOのような企画力とプレゼン力に強みのある企業が、コンペで渾身の提案をして、うっかり採択されてしまうとしよう。
その場合、事業規模に耐え切れずにパンクするか、手が回らずに大失敗するのが目に見えている。
こうした競争に関する費用や失敗をリカバリーするための費用の出所は、税金だ。競争のために積み上がったコストは、国民が負担することになる。
つまるところ、オリンピックのような超巨大事業を受け切れる企業など、電通くらいしかないのだ。
無駄なコストを抑えるための調整なのか、それとも字義通りの談合なのか。これは、とても繊細な事柄だ。関係者によって解釈も異なるだろう。
フェアでオープンな競争は、得てしてサステナブルではないのだ。
念のためハッキリと言っておくが、三浦としては、決して談合を擁護する気はない。それがいたずらに利益を誘導するものであれば、批判されてしかるべきだ。
ただ、実態が曖昧な状況で「談合」という言葉のネガティブなイメージが一人歩きすることには、十分注意を払うべきと言いたいのだ。