2022/6/16

【解明】値上げが難しい理由を、心理的に解説してみた

NewsPicks ジャーナリスト
「家計の値上げ許容度は高まっている」発言に、世間の注目が集まっています。
これは先日、日本銀行の黒田東彦総裁が発言したものです。
注目されるのも当然。
過去四半世紀にわたって物価が下がり続けるという「デフレマインド」が染み付いた日本。値上げは、そう簡単には許容されてこなかったからです。
実際、過去にユニクロや鳥貴族などが値上げをしたとたん、売り上げを大きく落としてしまいました。
SOPA Images/GettyImages
物価の上昇への不安について、よく見かける議論は、「所得の伸び悩み」や「老後の備え」などでしょう。
ところが今回の切り口は、いつもとは一味異なる「行動経済学」。
人間が本能的に持っている心理・行動特性を踏まえた経済です。人は、たびたび不合理な思考をする生き物であることがわかっています。
例えば、「100円の値上げ」と「100円の値下げセールの終了」では、どちらも購入価格が100円増えます。
にもかかわらず、前者の値上げに対しては不満を抱き、後者のケースではそこまで不満を感じません。
なぜ、そのように感じるのか。あなたが普段の買い物で「高い」または「値ごろ」と感じているメカニズムを解説します。
あなたが、これからコンサートに行く予定だとしましょう。チケット料金は1万円です。
ある実験では、2つのケースに分けて、被験者に質問しました。
2つの選択肢は「1万円相当を失った」という意味で同じです。しかし、この実験では回答に大きな差が出ることがわかりました。