2021/12/2

【新】謎多き「東京藝大」。その型破りな教育手法とは

NewsPicksエディター/音声事業 プロデューサー
ロジック頼みのソリューションの限界を、21世紀の「災害」は能弁に語っている。
ロジックが最も発達した分野の1つであるはずの金融工学は、サブプライムローンという「発明」がリーマン・ショックを引き起こすことを予測できなかった。
また、コロナ禍の2年間で人類が幾度となく目にしたのは、感染症学や統計学の叡智を結集させて対応にあたったはずの各国政府が、早すぎる緩和と強い規制を乱発し、機能不全に陥るさまだった。
そこで注目されているのが、一見経済における実利に直接結びつかないと思われがちなアーティストたちが持つ発想力だ。
企業向けにアートやデザインに関わるプログラムを開発してきた増村岳史氏は、数ある美術系大学のなかでもひときわユニークな教育を行う「東京藝術大学(東京藝大)」に着目し、そこで培われる思考法を著書『東京藝大美術学部 究極の思考』としてまとめた。
現実にあふれる答えのない難題に、「アート」はどのような価値を提供しうるのか。執筆の経緯や意図を増村氏に語ってもらいつつ、本書の中身を紹介していこう。
INDEX
  • 「問いを立てる」藝大の4年間
  • 出題者と受験生の真剣勝負
  • 芸術家にとって最重要な「観察力」

「問いを立てる」藝大の4年間

「藝大の4年間では、〈問いを立てる〉ことを常に要求されます。自ら問いを立て、課題を設定し、課題をクリアする道筋を徹底的に考えさせられるのです。私の知る限り、これは他の美大や芸大にはない大きな特異点でした」(増村氏)