2020/12/25

【秘話】プレステ生みの親が明かす「イノベーションの思考法」

NewsPicks ジャーナリスト
プレイステーションを生み出した久夛良木健氏が、ビジネスの最前線に舞い戻ってきた。
2020年8月に、次世代のロボットシステムや自動運転システムの開発を担うスタートアップ企業、アセントロボティクス(渋谷・広尾)のCEO(最高経営責任者)に就任。プレステで起こしたイノベーションを、今度はAI分野に応用していく。
久夛良木氏は、1994年12月に産声を上げた初代プレイステーションをはじめ、その後に発売されたプレイステーション2やプレイステーション3の開発も主導した中核人物だ。
ただ、当時のソニーにとっては、プレイステーションというゲーム機ビジネスは完全な新規事業。「一か八か」の賭けという扱いで、ベンチャー企業としてソニー本体から切り出された。
そこからプレイステーションは大ヒットし、後に久夛良木氏はソニー・コンピュータエンタテインメントの社長、ソニー本体の副社長を歴任した。
このように稀代の起業家としての側面を持つ久夛良木氏も、今年70歳の古希を迎えた。そんな当人が2020年代に狙うのは、AIを使った次世代ロボットと自動運転の普及だ。
これからの社会は、リアルの世界と、サイバー上にあるデジタルの世界が融合した領域にイノベーションが起こるといわれる。
そしてそのヒントは、四半世紀前に生み出した「プレステ式イノベーション」に眠っているという。
久夛良木氏に、新たなイノベーションへの秘策を語ってもらった。

「難しい」から面白い

──複数の会社の社外取締役を務めている久夛良木さんが、なぜ、アセントロボティクスという会社のCEOという重責を担ったのですが。
最初は「無理だ」と断ったんだけど、よく考えてみると、これからもっと面白い時代が来ると思ったんだ。
というのも、自動車を見ても、まだ「レベル4」以上の完全自動運転で公道を走っているものは一台もないじゃない。イーロン・マスクのような起業家が、いくらやる気であっても、なかなか実現が難しい。
もちろん、それは不可能だという意味ではなくて、実現するには時間がかかるということ。難しい理由は、リアルの世界とデジタルの世界を融合するには、その両方を知らないといけないから。
世界中にこれだけ優秀な人と、優秀なプレーヤー(企業)がそろっているにもかかわらず、意外にも、リアルとサイバーの世界を両方とも知っている人は多くはいない。
僕のような世代は、生きるのに必死だったからなんでもやってきたし、自分の手で物も作ってきた。だから、リアルに詳しい人間とデジタルに詳しい人間の両方に声をかけられる。だからきっと、面白いことができるはず。