2020/12/1

【バンダイナムコ社長】海外で愛される、日本コンテンツの作り方

NewsPicks ジャーナリスト
「ドラゴンボール」、「セーラームーン」、「ワンピース」、「マリオ」、「バイオハザード」...日本発のアニメやマンガ、ゲームというコンテンツは世界を席巻してきた。
そんな日本コンテンツの未来系として、「機動戦士ガンダム」が注目されている。
1979年にアニメ放送が始まったガンダムは、「ドラえもん」をはじめとする国民的なコンテンツというよりは、コアなファンによって支えられる作品コンテンツだった。
ガンダムは敵側にも正義の概念が存在し、勧善懲悪ではない世界観。その中庸さが、実に日本らしいが、複雑な世界観を持つ和製コンテンツは、必ずしも海外で受け入れられるとは限らない。
それが今や、中国をはじめとするアジアで人気が広がっている。北米でも知名度が高まっており、実写版ハリウッド映画も予定している。
そんなガンダムだが、横浜に「リアルガンダム」が12月19日に登場する。18メートルの実物大ガンダムが、実際に動く。
サンライズ提供
海外からも「ディズニーワールドに匹敵する偉業」という反響が出るなど、注目を浴びている。
数十億円を下らないとみられるリアルガンダムのプロジェクト。企画したのはガンダムビジネス歴40年で、バンダイナムコエンターテインメントの宮河恭夫社長だ。
バンダイナムコは、ゲーム・エンタメ業界でソニーや任天堂に次ぐ規模。海外に果敢に挑戦している企業の一社でもある。
そんなバンダイナムコを率いる宮河氏は、動くガンダムプロジェクトの費用対効果については、「考えたら夢がない」と一蹴する。
直感経営がモットーの宮河社長に、ガンダムというコンテンツが持つ経済的ポテンシャルについて聞いた。

記憶ほど大切なものはない

──今回の「動くガンダム」の企画は、ある種の勘で決めたそうですね。
今から10年以上前の2009年、私はサンライズ(アニメ制作などを手がけるバンダイナムコホールディングス子会社)でプロデューサーをやっていました。
当時はガンダム30周年記念。そういう記念年にはだいたい、映画化などを企画します。でも、僕はそれではありきたりだと思った。
その時、パッと「18メートルの実物大ガンダムを作るぞ」と思いついた。それ以外の理由なんてない。
それで、お台場にガンダムを設置したところ、50日間で400万人ほどの人が見に来てね。1日10万人が見に来ることもあった。
GREEN TOKYO ガンダムプロジェクト。期間:2009年7月11日〜8月31日、場所:東京 潮風公園(サンライズ提供)
その後、ある人が僕の耳元でこうささやいたんです。「ガンダムが立っているだけで400万人も来たのなら、ガンダムが動けばもっとすごいことになる」と。
僕もガンダムが動いたら、どれだけの反響があるのか見てみたいと思ったから企画した。ただそれだけ(笑)。
──総工費は数十億円かかるかと思いますが、ビジネスとして投資回収について考えているのですか。
少しだけ考えている。
僕は「費用対効果」にこだわるのが大嫌いです。そもそも、投資を回収できるかどうかなんて話、夢がないよね。
それよりも、人々の記憶に残るかどうかの方が、はるかに重要だと思うよ。
もちろん前回のお台場のガンダムでも、グッズを売るなどしてお金の回収はちゃんとやっていましたよ。
そのようなことはちゃんとやっているんだけど、商品や作品が人々の心に刻まれるかどうかの方が重要。子どものころや10代の時の大切な思い出は、いつまでも忘れないよね。
僕は記憶ほどバリューのあるものはないと思っている。