2020/11/6

【核心】トランプが終わっても、分断は続く

洪 由姫
NewsPicks 編集部(シリコンバレー支局)

4年間で分断は拡大した

長引く米大統領選は、徐々にバイデン氏の優勢が伝わってきた。
だが、もし仮にこのまま、民主党のバイデン氏が大統領の座についたとしても、一つ確実に残るものがある。アメリカという国における圧倒的な「分断」だ。
あらゆる激戦州で、トランプ氏とバイデン氏が1%ポイント以下の差しかなかったことが示すように、アメリカではあらゆる政治問題で、右派と左派の見方が文字通り「真っ二つ」に分かれている。
「今や我々は、支持政党を超えて交わることがほとんどない根本的に分断された国に住んでいます」
国際政治の専門家で、ジャパン・ソサエティー(NY)理事長のジョシュア・ウォーカー氏は指摘する。
「右派側を象徴するトランプ-FOXニュースは、『移民が市民から仕事を奪う』『コロナはインフルエンザと変わらない』『社会主義者が私たちの自由を奪おうとしている』という見方で現在の問題を定義しています。一方、左派側における民主党-MSNBC(その他の主流メディア)は、『コロナは100年に1度の危険なパンデミック』であり、『BLMなど社会問題』を重要課題と定義しています」
さらに、SNSや検索のテクノロジーを通じて、自らに近しい意見を持った人たちの意見だけが表示される「フィルターバブル」が、こうした分断を強化していく。政治的志向の違いで、友人や家族の間も疎遠になっていくような例も枚挙にいとまがない。
そして、何よりトランプ氏の得票数が、2016年と比べて500万票以上伸びたことを見ても分かるように、分断はむしろ拡大しているのだ。
時を経るごとに左右の分断が進んでいることを示すピュー研究所の調査
「メインストリームメディアであろうとSNSであろうと、声が大きければ大きいほど注目され、トランプ氏が得意とするポピュリズムによる分断政治を生み出しており、一方の左派はもう少しバラエティがあるものの、AOC(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)やサンダースなどの先鋭的な意見がより目立ちます。私が一番懸念しているのは、両極の人が『妥協』することを反対意見と捉えることで、アメリカにおけるチェックとバランスが機能しなくなることです」(ウォーカー氏)
バイデン氏は、党内でも分裂する民主党をまとめ上げる存在として候補者になり、今は「アメリカをUnite(団結)する」と主張している。
だが、もし大統領に選出されたとしても、その道は果てしなく遠い。そもそも、両側にそれを望んでいない人が山ほどいるからだ。
大統領選の結果がまだもつれ込むなか、今回は、その存在が顕在化した「隠れトランプ」を含め、劣勢が濃厚になりつつあるトランプ支持者たちの声をあえて紹介することで、その「深い分断」を浮き彫りにする。

証言①赤い帽子は「攻撃対象」

・カイゾン・コーテ(男性、政府職員)/バージニア州
もはやトランプを支援している、と公言できない時代になりました。