【島田太郎】日産ルノーを舞台とする「赤壁の戦い」に勝利
最高デジタル責任者としてデジタルトランスフォーメーション(DX)の旗振り役を担うとともに、東芝デジタルソリューションズの社長に任命された。
「なぜか3年ごとに転機が訪れる」というそのキャリアの軌跡と、これからの全産業に共通の、デジタルで生まれる新しい儲け方に迫る。(全7回)
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飛行機の設計をやめて何年も後悔したのは、
自分で複雑なモノを作る事の楽しさを、
忘れられなかったからです。
しかし、一方で、次々と違う会社で設計や
製造のプロセスを見ていくと、その差に
驚きました。
飛行機では、リベット1本まで構造計算を
します。
しかし、自動車はやらない
でも飛行機は何年もかけて設計するのですが、
自動車は1年を切る。
当時の自動車業界のトレンドは、如何に早く
設計するか?でした。
そのトレンドは、現在は変わってきていると
おもいます。
消費財電気業界は、また全く違います。
会社のカラーも違います。
私のこの時期は、日本の一流の会社のプロセスを
体感した時期だと思います。
実はその中の一つに東芝もありました。
赤壁の戦いについて、補足させていただきます。
これは検索すればいくらでも出てくる公然の事実ですが、CAD/CAMや、CAEと呼ばれる設計やシミュレーションを担う「工業ソフト」があります。自動車や航空機、家電など工業品を設計し、動きを事前にシミュレーションする際に欠かせないものです。
この分野の王者がフランスのダッソーシステムズが手がける「CATIA」でした。
ユーザーの使い分けなど一概には言えないのですが、無理やりまとめると、トヨタとホンダは主にCATIAを採用しています。
さらに時系列を一切無視すれば、日産までもCATIAに乗り換えるとなると、グローバルプレゼンスを有する日系大手3社を掌握したCATIAが牛耳る世界になります。
これは、日本のものづくり史において見逃せないテーマでもあります。日本の自動車メーカーは、かつて自社で内製化した設計ソフトを使ってきましたが、駆逐されてきた歴史があります。
それは、いくら使い勝手は良くても、世界のスタンダードを獲得したソフトには駆逐される運命にあります。例えるなら、一太郎がいくら使い勝手が良くても、デファクトスタンダードのマイクロソフトのものに駆逐されるのと同様です。
そうして日本の工業ソフトを駆逐してきたのが「CATIA」ですが、有識者や実際の社員のヒアリングをまとめると、例えばホンダがCATIAを採用する過程で、ホンダの開発設計のノウハウがCATIAを開発するダッソー社に流れ、そのノウハウが世界に流出したという声もあります。
そうした中、日産はルノーとの提携と言いつつも、対等な関係ではなく、いわば支配下に置かれていた状況です。こうして、日系トップ3のものづくりの魂が、CATIAに吸い尽くされる(言い過ぎをご容赦ください)。そんな懸念があったかと思います。
そうした中、三国志における「魏」とも呼べるCATIA帝国の世界制覇計画に対し、今の「NX」というソフトが生死をかけた戦いに挑む。舞台は日産・ルノー、CATIA帝国に対するNX側のキーパーソンが島田太郎さんという構図です。
東芝の最高デジタル責任者で、東芝デジタルソリューションズ社長の島田太郎さんの連載第3回です。
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ドイツの総合テクノロジー企業シーメンスの要職に就き、将来を嘱望されていたにもかかわらず、経営再建の道半ばにある東芝に移籍した島田太郎氏。
最高デジタル責任者としてデジタルトランスフォーメーション(DX)の旗振り役を担うとともに、東芝デジタルソリューションズの社長に任命された。
「なぜか3年ごとに転機が訪れる」というそのキャリアの軌跡と、これからの全産業に共通の、デジタルで生まれる新しい儲け方に迫る。(全7回)
■第1回 東芝が再び輝く時代がやってくる
■第2回 3年集中して突き抜ける、私のキャリア
■第3回 日産ルノーを舞台とする「赤壁の戦い」に勝利
■第4回 褒めて乗せるアメリカ人、否定して不安がるドイツ人
■第5回 日本の経営者が決断できない理由
■第6回 長時間労働なんかしていたら、もう生き残れない
■第7回 モノを売って儲ける時代は終わった
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