2020/8/2

【名和高司】ユニクロが考える「本当に良い服」の条件

一橋大学ビジネススクール客員教授
教養を身につけたいけれども、忙しすぎて学ぶ時間が取れない。一方で、日々のニュースだけでは、体系的な知識を得られない──。

そんなビジネスパーソンに向けて、NewsPicks編集部が月ごとにテーマを設定し、専門家による解説をお届けする新企画「プロピッカー新書」。毎週末に記事を掲載し、計4本で「新書1冊分の知識」が身につくはずだ。

今月のテーマは「SDGs」。一橋大学大学院特任教授の名和高司氏が講師役を務める。ファーストリテイリング、味の素などの社外取締役としても活躍する現役経営者の考察をお届けする。

柳井正が語った「CSVの本質」

服を変え、常識を変え、世界を変えていく──。これは私が社外取締役を務める、ファーストリテイリングのミッション・ステートメントです。
少し聞いただけでは、どこにでもありそうな、ありきたりなものに思えるかもしれません。あるいは、服で世界を変えるだなんて何を言っているのかと、疑問を抱かれる方もいるでしょう。
しかし、そのミッションを愚直に突き詰めているのがファーストリテイリングであり、この会社は本気で「服で世界を変えたい」と考えています。
本連載では、CSVを中心にしながら、SDGsやCSRなどを解説し、企業と社会の関係性のあり方について解説してきました。
簡単に説明すると、CSVとは社会価値と経済価値を両立する経営戦略です。社会のサステナビリティだけを重視するでもなく、従来の資本主義にもとづいた企業利益だけを優先するでもない。
その2つを両立したサステナブルな企業経営のあり方を模索するものです。
そして私は、まさにファーストリテイリングこそ、日本企業の中で数少ないCSVを体現している会社だと思っています。
私は社外取締役をしている立場から、柳井正会長兼社長とCSVについて話をする機会があります。あるとき、「ファーストリテイリングにとってCSVとは何か」という直球の質問を投げかけてみました。
柳井氏の回答は「自分たちの本業のビジネスそのものがCSVである」というものでした。本当に良い服、新しい価値を持つ服を作り、世界中の人々に着る喜びを提供することそのものがCSVであるという考えです。
では、良い服を届けることがどう社会価値に繋がるのか。本記事では、ファーストリテイリングのCSVについての分析を試みます。
(写真:Koji Watanabe/Gettyimages)

ユニクロが考える「本当に良い服」