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社員のエンゲージメントの向上で本当に企業価値が向上するのか
名和 高司一橋大学ビジネススクール客員教授
「パーパス経営」が21世紀型の経営モデルとして注目されています。私はパーパスという英語を「志」という日本語としてとらえなおし、「志本経営」と呼んでいます。資本主義(キャピタリズム)の終焉が唱えられていますが、その先に来るののがこの「志本主義(パーパシズム)」の時代です。 ただし、パーパスは美辞麗句で飾っても、画餅でしかありません。社員、顧客、そして幅広い人々の共感を醸成することがカギとなります。いかに自分ごととして、内在化できるか?その出発点は、社員一人一人の「思い」に根差しているかどうかです。だから社員のエンゲージメントが、改めて問われる時代になっているのではないでしょうか? ところで、「パーパス」は、今流行りの「サステナビリティ」とは微妙に違う点にも注意する必要があるでしょう?持続可能な世界は大切な前提条件ですが、「生存する」ことが志ではなく、「生き生きと生きる」ことこそが志につながるのではないでしょうか?カーボンニュートラルや人権問題などという「規定演技」だけに惑わされず、自分たちが求める 生きがいや働きがいを真剣に問う必要がありそうです。
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【名和高司】ユニクロが考える「本当に良い服」の条件
NewsPicks編集部
名和 高司一橋大学ビジネススクール客員教授
最終回の今回は、いよいよ日本企業のCSVを取り上げます。 日本発のCSVを、私はJ-CSVと呼んでいます。日本のJです。グラミンのユヌス先生が指摘したように、ポーター教授の唱えるCSVは、経済価値の向上が目的になっています。これに対して、「三方よし」や「論語とそろばん」の伝統を大切にする日本企業のCSVは、経済価値の向上は社会価値向上という大きな志のための手段にすぎません。 筆者はこのような資本主義(Capitalism)の先を目指す経営思想を、「志本主義」(Purposim)と呼んでいます。今回ご紹介するファースト・リテイリングだけでなく、花王、味の素、SOMPO、三菱ケミカル、YKK、オイシック・ラ・大地などは、いずれも志本主義に基づくJ-CSV企業です。 コロナ危機のさなか、中国でもJ-CSVに触発されて、C-CSV活動が始まりました(もっとも、私が仕掛けたものですが)。前回ご紹介したアリババを始め、中国を牽引するミレニアム世代の起業家たちは、デジタル・ネイティブであり、かつサステイナビリティ・ネイティブです。この志の波動が東南アジアやインドにも広がり、やがてA(Asia)-CSVという大きなうねりになっていくことを、心から期待しています。
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【言葉に学ぶ】名経営者たちが「利益」より大切にするもの
NewsPicks編集部
名和 高司一橋大学ビジネススクール客員教授
前回のヨーロッパ企業から一転して、今回はアジア企業をご紹介します。代表的な3社のCSV経営の概要は本文で語っていますので、ここでは私の個人的体験エピソードを共有したいと思います。 まずインド。ご紹介したタタグループは、インドで最も尊敬されている企業グループです。私の大学では毎年2月、エグゼクティブMBAの学生を連れてインドに1週間滞在し、これらの先進的なインド企業を訪問しています。 実はインドはアジアの中でもっともCSV経営が進んでいる国です。現在のモディ首相になってから、大企業は利益の2%を社会価値向上に充てることが義務付けられています。この資金をシードマネーとして、CSVを展開するスタートアップ企業が続々と登場しています。 インドのお隣、バングラデシュのグラミングループは、資本主義の先を目指していることで有名です。同グループ創始者のユヌス先生は「ソーシャル・ビジネス」と呼んでいますが、私の提唱する「志本主義経営(Purposism)」の1つの先進事例だといえましょう。 2014年3月には、MBA学生の有志をつれて、ユヌス先生を訪問しました(本文の写真参照)。先生のご自宅は、同グループの本社の裏手にある質素な「ウサギ小屋」のようなところです。その時に、「CSVとソーシャル・ビジネスはどこがちがうのでしょうか?」と問いかけたところ、次のような回答が返ってきました。「経済価値と社会価値のどちらを目的とし、手段にするかのちがいでしょう」そのあとにっこりとされた表情が、とても印象的でした。 そして中国のアリババ。同じく2014年の6月、某大手日本企業の次世代経営者をお連れして、杭州のアリババ本社を訪問しました。同社は同年9月のIPOを目指して、いつもにもまして活気づいていました。残念だったのはお目当てのジャック・マーCEO(当時)が人気のサッカーチーム買収を発表するため、急きょ広州に出張してしまったことでした。 ただ、我々を迎えてくれた30代の経営チームのみなさんが、アリババのパーパス(志)に基づく経営を、自分の言葉で熱く語ってくれたことがとても新鮮でした。シリコンバレーでのキャリアを投げ捨てて、アリババにジョインした人たちも少なくありません。「我々の手で、未来の中国、そしてアジアを作り上げるんだ」と語ったときのキラキラした目を、今でも忘れることができません。
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【経営論】ネスレに学ぶ「これからの企業」の生きる道
NewsPicks編集部
名和 高司一橋大学ビジネススクール客員教授
連載2回目の今回はヨーロッパのCSV先進事例を取り上げます。ネスレやユニリーバの例は有名ですが、私の1押しは実は3社目にあげた北欧企業、ノボノルディスクファーマです。糖尿病に全身全霊で向き合い、治療だけでなく予防や未病にも真剣に取り組んでいます。 私がマッキンゼーのコンサルタントとして同社と出会ったのが、1990年代の半ばです。CSVが提唱される20年近く前から、同社はトリプルボトムライン(TBL)という経営理念を実践していました。経済的なボトムラインに加えて、社会的ボトムラインと環境的ボトムラインの3つを目標にするという考え方です。 これらを3つのPで表現しています。すなわち、Profit、People、Planet。そしてその真ん中にあるのが、もうう1つのP、すなわちPatient(患者)です。しかもその裏側に、5番目のPが息づいているのが感じられます。それがPurpose(志)です。このような経営を、私は「Purposism(志本経営)」と呼んでいます。 もちろん、きれいごとを並べているだけではありません。なんといっても、彼らのROEは80%を優に超えているのですから。日本のコーポレートガバナンスコードが8%を目指そうといっているのに対して、まさに「ケタ違い」です。社会価値と経済価値を高い次元で両立させているCSVのチャンピオン企業です。ご興味を持たれた方は、ぜひ同社のベック日本支社長と私の対談をご覧ください。 https://www.novonordisk.co.jp/about-novo-nordisk/novo-nordisk-in-brief/interview01.html
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