【提言】中国を知ることは、世界の「ネクスト」を知ることだ

2019/7/7
「日本人が本当に競うべきなのは、中国のトップエリートたちです。ここに集まっている人材の教育レベルやネットワークの質は、ものすごく高いですよ」。
そのように語るのは、中国の最高学府である清華大学で教鞭を執ってきた、紺野大介教授だ。そして日本人は、こうしたトップエリートたちの存在を、もっと理解するべきだと話す。
日本人は、大きくて複雑な「中国」をなかなかひも解けない。
例えば1人当たりのGDPを見れば、日本が約400万円なのに対して、中国は約100万円だ。そのため「平均的な日本人」と「平均的な中国人」を、比べてしまいがちだ。そして、日本の方がまだ豊かだと結論づける。
しかし14億人を率いるトップ層は、金銭的な豊かさだけでなく、アカデミーやテクノロジーの世界における存在感で、日本を凌駕(りょうが)しているのは明白だ。
NewsPicks編集部は、中国の「平均値」は追わない。次世代のトップ人材の動向を追いかけたい。そのコンセプトから生まれたのが『電脳チャイナ』の特集だ。
これは世界の「先行研究」
ドキュメンタリー第1話の主人公は、ものすごい速さで進化している、中国の顔認識のトップベンチャーであるメグビーだ。
【ドキュメンタリー】中国で広がる、すべてが「顔認識」の世界
これまで海外メディアの取材にも快く応じていたメグビーは今年5月に入って、大きく雰囲気が変わった。米国政府がファーウェイに続いて、ブラックリスト入りを検討していると、報じられたからだ。
そのためか、取材交渉は難航を極めた。
NewsPicksがようやく訪れたショールームでは、監視カメラに映った人間を、リアルタイムで「個人特定」するデモンストレーションを止めていた。陳列物の一部も撤去する徹底ぶりに、その警戒心の高さが現れていた。
全ての顔を、「人間の目」を超える精度で捉えるテクノロジー。中国で起きていることは、世界でこれから起き得ることの先行研究でもある。
天才が集まる「特別クラス」
14億人の学歴ヒエラルキーの頂点にあるのが、北京にある清華大学だ。
中国のトップ0.03%しか入ることができない清華大学。その中から、さらに数学やコンピュータの天才たちをよりすぐった「特別クラス」がある。そこから次世代のユニコーン企業が生まれているのだ。
【動画】中国モンスター企業を生む、秘密の「30人クラス」を追う
NewsPicksは、清華大学の特別クラスの卒業生に次々とインタビュー。中でもグーグルやバイドゥといった大手企業で働くのに飽き足らず、自ら自動運転分野のユニコーン企業をつくった鬼才に迫った。
日本では、誰もがハーバード大学やスタンフォード大学の名前を知っているが、この清華大学の影響力を理解している人が、どれだけいるだろうか。
拡散する「チャイナモデル」
中国は、世界で最も多くのユニコーン企業が生まれている場所である。
とりわけ注目なのが、フードデリバリーの分野だ。中国で最も人気のある出前アプリ「メイトゥアン」は、いまや時価総額にして約5兆円の巨大企業。24時間365日、いつでもスマホひとつで宅配をしてくれる。
【アプリ研究】アマゾンも勝てない、中国の「出前アプリ」の正体
背景にあるのは、新しいタイプの「オンデマンド物流」の誕生だ。中国では数十万人の電動バイクライダーたちが、あらゆるものをオンデマンドで配達する、新しい物流ネットワークを形成している。
米国のアマゾンですら実現できていない、全てのものが「3キロ圏内30分」で配送される世界。それを動画レポートでお届けした。
この中国のビジネスモデルがいま、東南アジアや南米などの新興国にどんどん広がっていることを、あなたは知っていただろうか。
電脳空間と「ネオ・イーコマース」
いまの若者たちは「電脳空間」に住んでいる。中国最大のイーコマース企業、アリババのダニエル・チャンCEOはそのように表現する。
だから中国のイーコマースは、リアルな買い物よりも便利で楽しいものになっている。海外からリアルタイムで配信して、物を売りまくる、買いまくる中国人たちのパワーは、電脳空間でこそ理解できる。
巨人アマゾンが置いていかれる、「EC激戦地」中国の真実
中国に精通するジャーナリストの高口康太氏が、日本人が知らない、中国流のイーコマースの奥深さを解説した。
月間ユーザーは「4億人」
最後に紹介するのが、中国のテクノロジー業界の「暴れん坊」であるバイトダンスだ。
彼らが運営するショート動画アプリ「TikTok」(中国版はDouyin)は、いまでは日本企業にとっても、中国のユーザーたちを魅了するために欠かせないプラットフォームになっている。
【動画解説】MAU4億人。本場中国の「TikTok」はここまで違う
月間アクティブユーザーは約4億人。このコンテンツプラットフォーム上で何が起きているのか、中国の著名インフルエンサーが解説をしてくれた。
NewsPicksは急成長するアジアの頭脳、ビジネス、テクノロジーを追いかけ続ける。そしてこれからも、猛烈なスピードで移り変わるその風景を、新しい表現でお届けするメディアであり続ける。
(執筆:後藤直義、デザイン:國弘朋佳)