ドローンの広がりで生まれる可能性と、新たに対処すべき課題

2017/4/24
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
24日は、東京大学大学院教授の土屋武司さんが出演。「農薬散布に高性能映画撮影、ドローン製造最大手DJIが製品を多様化」(Bloomberg)を題材に、ドローンの可能性と課題について解説しました。

ドローンの活用が広がる

サッシャ 今日は「農薬散布に高性能映画撮影、ドローン製造最大手DJIが製品を多様化」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の土屋武司さんです。
土屋さんは東京大学大学院工学系研究科の教授として、航空機の飛行力学、さらに飛行制御に関する教育研究に従事されています。よろしくお願いします。
土屋 よろしくお願いします。
サッシャ まずはこのニュースの内容ですが、色んなドローンが増えたということですか?
土屋 そうですね。このニュースは中国のドローンの最大手であるDJIが、新しく農薬散布向けのドローンを開発しているという内容です。
いまはDJIをはじめ、趣味で飛ばすドローンが一般的なんですけれども、次はビジネス向けにドローンが使われて行くだろうと。そのなかで、畑に農薬をまく可能性にDJIが注目しているということです。
サッシャ なるほど。少し前にアマゾンがアメリカでドローンで配達するというニュースもありましたけれど、いまドローンはどんな状況にあるのでしょうか。世界的にはDJIがトップシェアなんですか?
土屋 そうです。約7割がDJI製と言われています。
サッシャ 中国の独占になっているわけですね。
土屋 DJIは、値段が安いですし、性能もかなりいいため、趣味で空撮をするようなドローンでは、世界を席巻しています。
サッシャ いくらくらいのものが主力なんですか?
土屋 値段はピンキリありまして、安いと4~5万円、プロ向けだと100万円近いものもあります。
サッシャ 映画撮影に使うようなものですね。それでは、農薬散布以外ではどんな場面で活用される可能性がありますか?
土屋 いま、みなさんが目にしているものとしては、テレビや映画の撮影用としてのドローンがあると思います。
あとは、測量とかビルや橋を点検するために、人がたどりつけない場所にも、ドローンが使われ始めようとしています。
サッシャ やはり俊敏性があり小型なので、人が行けないところをぐるっと回って撮って、チェックができるということですね。

ドローン増加で発生する課題

寺岡 ドローンというと、テレビのニュースなどでは衝突や、敷地に入ってしまったという事故や、プライバシーなどの問題についてよく聞きます。それは今後どう対応していくんですか?
土屋 以前、ドローンが首相官邸に墜落したことが、大きなニュースになりましたよね。
そこから一気に規制が強くなって、たとえば200gを超えるドローンは東京都内では許可を取らないと飛ばせなくなってしまいました。
それでもドローンの可能性を見て、色んな人が許可を申請して飛ばし始めています。
そうなると、今後は飛行するドローンの数自体が増えてくると思います。
それこそ、アマゾンがモノを運ぶためにドローンを飛ばすとか、先ほどお話しした空撮でもドローンが飛ぶでしょう。
また、大きな災害があったときに、ドローンで災害の状況をいち早くつかむために飛ばすことも考えられます。
こうしたなかで、たくさんのドローンが同じ地域で集中して飛ぶようになると、ドローン同士の衝突や、ドローンと有人飛行機との衝突も問題になってきます。
実際、海外ではドローンと旅客機の衝突やニアミスをした例があります。そのため、航空機においては航空管制がありますが、ドローンも同じような仕組みが求められると思います。
ドローンを飛ばしている人に、「いま、ここの領域では飛んではいけません」「ここから先は有人飛行機がいるので侵入してはいけません」といった内容を伝えるシステムが必要になると思います。
サッシャ これは飛行ルートを大体決めて、プログラミングで飛べないところを指定することをルールにすれば、そんなに難しくなさそうですが。
土屋 そうなんですけれども、時々刻々と状況は変わることに加え、管制されている飛行機のほかに、ヘリコプターなどが高度100メートル台くらいに降りてくることもあります。たとえば、報道用のヘリや、人命救助用のヘリも割と低いところに降りてきます。
それを、飛ばしている側に伝えることが必要なのです。

今後求められる新たなシステム

サッシャ 具体的にどういう方法が考えられますか?
土屋 まず、いま飛んでいるドローンが「どこを飛んでいるのか」をみんなに周知するシステムが必要です。
GPSがあるので、ドローン自身は自分がどこを飛んでいるのか分かるんですけれど、それを他のドローンや飛ばしている側に伝えないといけないんです。
サッシャ 受信だけでなく、送信しなくてはいけないと。
土屋 そうなんです。送信をどういう方法にするのか。
また、送信された情報を、たとえばサーバーやクラウドシステムみたいなところに集めて、ドローンを飛ばしている人に提供するようなシステムも必要です。
サッシャ なるほど。中国がドローンの最大手ということですが、その意味でも日本だけで通用するルールではなく、世界と同じプラットフォームに対応しないと厳しいですよね。
土屋 そうですね。アメリカだと、たとえばNASAもそういったものを考えていますし、日本ではJUTM(日本無人機運行管理コンソーシアム)がドローンの管制をするシステムを考えようとしていて、ちょうど協議を始めたところです。
サッシャ やはり、個人で飛ばそうと考えている方は、23区は難しいんですか?
土屋 室内だったら大丈夫です(笑)。
寺岡 室内かあ(笑)。
サッシャ 河川敷とかもダメなんですか?
土屋 ダメですね。この辺りに関しては、国交省のホームページを見ると地図が出ていますので、確認した方がいいと思いますね。
サッシャ わかりました。楽しそうなんだけどなあ。
今回はルールづくりのお話でしたが、車もルールがないところから信号などが生まれたわけですから、われわれはルールがつくられる現場に立ち会っているということですね。
土屋さん、ありがとうございました。
土屋 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした土屋さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
25日はレノボ・ジャパン代表の留目真伸さんが出演予定です。こちらも合わせてお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください
(構成:菅原聖司)