「人生42歳まで」ネスレ日本・高岡社長の早回しキャリア

2016/8/13
「人生の締め切りは42歳」──。父と祖父が亡くなった年齢を期限に設定し、そこから逆算して早く成果を出す選択をしてきたネスレ日本社長の高岡浩三氏。「キットカット受験生応援キャンペーン」や「ネスカフェ アンバサダー」のヒット企画を生み出し、外資系企業で異例の抜擢をされた。武器となったのはマーケティングの手法。ビジネスと人生に必須だと説く。早回しキャリアの軌跡を全20話でつづる。

人生の締め切りは42歳

私の11歳の誕生日に、父は42歳で亡くなりました。
祖父も42歳で亡くなっています。
高岡家の長男は42歳で死ぬ運命なのではないか、とうっすら思うようになりました。
人生の締め切りは42歳。
短い人生を意識し始めたことは、会社選びや仕事の進め方に影響するようになります──。

トップになりたい

母は長男の私にリーダー教育を徹底的にしました。
私は絶対に「参謀」では能力が発揮できないタイプです。
ナンバー2ではダメなんです、トップでないと──。

竹村健一さんの考え方

物事のゴールに最短距離で到達するには、どのようなアプローチをするべきか。
竹村健一さんのように、自分も人が2、3年でやることをその半分や3分の1でやりたい。
彼のような生き方や考え方をすれば、密度の濃い人生が送れるのではないか、と考えるようになりました──。

変わった選択

「君は変わったところに行くね」
当時、神戸大学からネスレに就職した人はいませんでした。
ほとんどの同級生が銀行、商社、メーカーに就職していく中、日本経済が活況で日本企業も成長路線の一途にあり、外資系企業はほとんど誰も考えなかった時期でした──。

問題解決力より問題発見力

あらゆる部門でマーケティングが必要になってきます。
一番重要で困難なのは、顧客の問題を発見することです。
顧客の問題さえ発見できれば、解決策を考えることはそれほど難しくありません。
顧客の問題の中には、顧客が気づいているものと、気づいていないものがあります──。

ローパフォーマーの活性化

雇用を保証することにより、いいこともありますが、問題も生じてきます。
年を追うごとに、一定の割合でローパフォーマーが出てくることです。
そうしたローパフォーマーを活性化することは、大きな課題です──。

受験生応援キャンペーンの誕生

福岡の支店長から、「きっと勝つとぉ(きっと 勝つよ!)」という九州の方言と似ていることから、「キットカット」が受験シーズンによく売れると聞いたのは、2000年過ぎのことでした。
受験というと、私自身、大学受験の時に忘れられない記憶があります。
受験当日、緊張のあまり、宿泊していたホテルで用意されたお弁当を受け取り忘れてしまい、コンビニがない時代、お昼に何も食べられなかったのです──。

ローカルスタッフ、初の社長へ

その電話はネスレ本社の副社長フリッツ・ヴァンダイクからでした。
「ネスレ日本の社長をやってくれ 」
私は思わず、「冗談でしょ?」と返しました。
ローカルスタッフの立場でありながら、なぜ私は日本法人の社長になったのか──。

イノベーターとリノベーター

イノベーターとリノベーターの2つのタイプが存在し、その両方が大事であると私は考えています。
日本はイノベーション大国ではなく、リノベーション大国です。
イノベータータイプの経営者の次の経営者がイノベーターでない場合、企業の成長がピークまで到達すると、その後ジワジワと衰退していきますので、イノベータータイプの後継者を育成することは、会社の存続に関わる重要課題です──。
(構成:上田真緒、撮影:村田一豊)
マーケティングを武器に最速でトップに
高岡浩三(ネスレ日本 社長兼CEO)
  1. 「人生42歳まで」ネスレ日本・高岡社長の早回しキャリア
  2. “マーケティングの神様”コトラーからの連絡
  3. 「顧客の問題解決」というけれど、「顧客」とは誰か
  4. 「ネスカフェ アンバサダー」ヒットの陰に意外な心理
  5. 人生の締め切りは「42歳」と意識しながら生きてきた
  6. トップでないとダメ。ナンバー2では力を発揮できない
  7. ゴールに最短距離で到達する、竹村健一氏の考え方
  8. 「変わった選択」だったネスレ日本に就職した理由
  9. 千葉の支店に配属。売れない商品が完売したアイデア
  10. 外資系で英語と格闘。突然、英語が聴き取れるように
  11. 30歳で史上最年少部長に就任、初めて味わう挫折
  12. 出向先で大成功した「キットカット受験生応援」企画
  13. ゴルフとビジネスは「状況を受け入れて言い訳せず」
  14. 「返品制度」廃止。抵抗勢力を突破した2つの方法
  15. 異例の抜擢。ローカルスタッフの私が社長就任のワケ
  16. 学歴による差はない。独自の人事評価と採用制度
  17. 終身雇用の弊害「ローパフォーマー」を活性化せよ
  18. イノベーションの芽を見つける「眼力」があるか
  19. 「もしあの会社の社長だったら…」妄想を楽しもう
  20. 「イノベーター」と「リノベーター」の違いと役割
  21. 変革期のリーダーよ、「辺境」日本から奇跡を起こせ