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NP“コンフィデンシャル” 1人目

LA在住ピッカー・野村修平さん「コメント力向上を決意した日」

2016/7/16

NewsPicksにはコメントを通じて、ニュースへの深い理解に貢献しているピッカーさんがたくさんいらっしゃいます。

私自身は「LA“コンフィデンシャル”」の執筆者として、毎回たくさんの感想やご意見をいただき、励まされ、勉強になっています。そしてコメントを頂戴するごとにピッカーさんへの興味は募り、どんな方なのだろう、と妄想を膨らませてきました。

私の関心は、プロピッカーの方々よりも、一般のピッカーさんたちにあります。

時間も労力もかかるコメント投稿を、どんな思いで続けているのか? なぜ、プロ顔負けのコメント力をお持ちなのか?

そんなことをNewsPicksのコミュニティチームと話していたところ、「インタビューしてみたら?」との提案をいただきました。そこで、私が独断と偏見で「この方にお話をうかがいたい!」と思った方にアプローチしていく連載「NP“コンフィデンシャル”」をスタートします!

お一人目のピッカーは、野村修平さんです。

ワークスアプリケーションズの米国拠点の立ち上げを任され、LAに駐在中の野村さん。私もLAに在住していることから、せっかくなのでオフィスにお邪魔してきました。

ついついシニカルな発言をしてしまいがちなネットの場において、野村さんはいつもポジティブ、そしてさわやか。これは意識的なものか、はたまた天然なのか……。そんな疑問を直接ご本人にぶつけてきました。

NewsPicksでの初コメント、覚えていますか?

──実は今日(インタビュー当日)、野村さんの初コメント2周年記念の日なんです。初めてのコメント、覚えていらっしゃいますか?

野村:いやぁ、ぜんぜん覚えてないですね。

──「東京の地下鉄は世界一なのです」という記事へのコメントでした。当時はまだNewsPicksのオリジナル記事もなかった頃ですね。NewsPicksを使い始めたきっかけは?
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Twitterで、著名な方が「NewsPicks」を紹介しているのを目にしたことがきっかけだった気がします。あまりはっきり覚えていないんですが……。

ただ、すごく印象に残っているのは、NewsPicksのアプリを立ち上げた瞬間のことです。

いろんな属性の方々のコメントが表示されたのを見て「これは単なるニュースサービスとは違うな」と思いました。

そして、ニュースに対してみんなで知見の肉付けをしていくような、情報交換の場である点に面白さを感じました。やはりユーザーのコメントが、NewsPicksの最大の魅力だと思います。

野村修平(のむら・しゅうへい) 1979年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。北海道大学大学院経済学修士(ベンチャーキャピタル研究)。2004年からWorks Applicationsに在籍。Sales & Marketing部門に在籍、マネジャー職の後に、新たなSalesチームの立ち上げを実施、現在はWorks Applications America Inc.に所属、カリフォルニア州ロサンゼルスにてERP市場規模では日本の7倍にあたる米国市場でのセールス拠点の立ち上げに従事。

野村修平(のむら・しゅうへい)
1979年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。北海道大学大学院経済学修士(ベンチャーキャピタル研究)。2004年からWorks Applicationsに在籍。Sales & Marketing部門に在籍、マネジャー職の後に、新たなSalesチームの立ち上げを実施、現在はWorks Applications America Inc.に所属、カリフォルニア州ロサンゼルスにてERP市場規模では日本の7倍にあたる米国市場でのセールス拠点の立ち上げに従事。

「燃え尽き症候群」だった高校時代

──野村さんといえば、金融からIT、国際情勢、硬いネタからゆるいネタまで、ありとあらゆるニュースでコメントをお見かけします。野村さんは子どもの頃から好奇心旺盛だったのだろうか、と気になって、過去のコメントを読み返したら、こんな発言がありました。
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──燃え尽き症候群で、高校時代は遊んでばかりいた、とおっしゃいますが、野村さん。内部進学で慶應義塾大学の経済学部に進まれるって、上位の成績優秀者だけだって聞きますよ。

そんなことないですよ、赤点さえとらなければ大丈夫ですよ(笑)。

高校の3年間、勉強にしても部活にしてもほんとに何をやっても力が入らなくて、だらだらと遊んでばかりだったんです。このままじゃまずいぞと危機意識はあっても、努力がまったく続かない。

そのままエスカレータ式に進学した大学1年のときに、たまたま中学時代の同級生3人と会う機会がありました。久しぶりに話したら、3人とも経済とか社会問題に関する知識量が爆発していた。

実は4人いた仲間のうち、僕以外全員は日経新聞を読み始めていたようで、記事のネタで盛り上がっていました。

──そのときすでにリアル版のNewsPicks状態だったわけですか。

確かにそうですね! それにしても、僕だけが話題についていけなかった。目に見えない差をどんどんつけられている気がして、慌ててみんなの真似をして、日経を読み始めました。

最初の頃は、全ページ読むだけで、1日4時間ぐらいかかりましたし、いまいち理解もできなかった。でも、だんだんと世の中のお金の流れや、業界の構造が分かるようになり、ニュースのトレンドがつかめてくると、ようやく面白いと思えるようになりました。

「ベンチャーキャピタル」という言葉を、紙面で目にしたのもその頃です。僕は特に日米のベンチャーキャピタルの違いに興味を持ち、日本で第一人者といわれる濱田康行教授のもとで学びたいと、北海道大学の大学院に進学することにしました。

「小物感がハンパない自分」を痛感した日

──コメント数でみていくと、2016年5月が最高で、月間300コメント以上しています。そして5月2日の野村さんのツイッターを拝見すると、「Like数獲得ランキングTOP30入り」とつぶやかれていました。

「コメント力向上のためにチャレンジしてきましたが、こうした結果が出せました」とあります。コメント力を向上させようと意識したのはなぜでしょうか?

野村さんの月間コメント数の推移。途切れることなく毎月200件以上コメントしている。2016年5月には月間コメント数が300件を超えた

野村さんの月間コメント数の推移。途切れることなく毎月200件以上コメントしている。2016年5月には月間コメント数が300件を超えた

習慣的にコメントするようになったのは、2015年の3月末頃、政治・経済・ビジネス・科学技術・文化など、様々な分野の第一線で活躍するリーダー陣が集う、グロービス主催の「G1サミット」というイベントに参加したのがきっかけです。

弊社代表の牧野(正幸)以外にもうひとり参加可能ということで、僕がお供することになりました。

そこに参加したとき「自分はなんて小物なんだ……」と思ったんですよ。ほかの参加者の方々は、企業の経営者や、フリーで数々の修羅場をくぐり抜けて戦っている方ばかり。雑談ひとつとっても、皆さんと自分の違いに気づかされました。

皆さんはご自身が主語。それなのに僕が話せることといったら「会社は」とか「牧野が」とか。要するに、相手に興味を持ってもらえそうなことを話そうとすると、主語が自分ではなく、会社や社長になってしまうのです。

これはつまり、自分がしたこと、成し遂げたこと、自分を主語にして話せることが少ないからだと痛感しました。とにかく自分の小物感がハンパ無かった。

自分を主語に語るために、自らの手で何かを創り出したい、今まで経験したことのないチャレンジをしよう。そう思い、海外拠点の立ち上げを自分に挑戦させてほしいと手を挙げました。2016年春には住まいもカリフォルニアに移しました。

チャレンジをする上で切実に重要だと感じたのは、自分から発信し続けることの大切さ。

G1サミットの場にいらした方々は情報発信が上手な方が多かった。行動して成し遂げることも重要ですが、自分のビジョンや考えを発信することも重要。ただ僕は言葉にすることが苦手な方なので、日ごろから鍛えないと身に付かないと考えました。そんな思いから、NewsPicksでは発信力を鍛えようと意識するようになりました。

LA南西部の街・トーランスにある、ワークスアプリケーションズのオフィス。「国籍や人種を問わず、全員が存分に力を発揮できる組織をつくりたい。ゼロから1を作る力が試されますね(野村さん)」

LA南西部の街・トーランスにある、ワークスアプリケーションズのオフィス。「国籍や人種を問わず、全員が存分に力を発揮できる組織をつくりたい。ゼロから1を作る力が試されますね(野村さん)」

コメントのPDCAを回す

──発信力についても、こんなコメントを野村さんはお書きになっています。

「考える営業は、アポの電話のスクリプトを書き上げ、その細かい差によって顧客の反応を見て、言葉を取捨選択して、スクリプトの精度をあげていく。1つ1つこだわってPDCAを積み重ねていくと、小さなイノベーションが生まれていく。(「仕事のできない人はPDCAがわかっていない(2016/1/11東洋経済オンライン)」へのコメント)

やはり野村さんのなかでは、コメントについても精度をあげる、PDCAをまわすという感覚があるのでしょうか?

ありますね。

読まれるコメント、って、読まれるだけの理由がある。ただ単に情報を調べて付け加えるだけではなく、書き手の息吹が込められている。それが分かってからは、魂を込めて1mmの差にこだわるといったように、書き方も意識するようになりました。

実名でのコメント、やりにくくないですか?

──野村さんはNewsPicksを始めたときから実名・会社名を公開されているそうですが、コメントしにくいと感じることはありませんか?代表の牧野さんをはじめ、同僚やクライアントさんもご覧になるかもしれません。職業病に関するコメントでも、「会社の名前を見るだけで、クライアントかどうかがすぐ分かってしまう」と書かれていますが。
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機密事項はもちろんですが、「コメントしにくい」と思うようなことは、書かないようにしています。

それから、読んだ方をネガティブな気持ちにするコメントも、書かないことに決めています。コメントを実名で書くのは、発信したことに責任を持ちたかったから。自分の魂を込めた言葉を発信するとき、素性があいまいですと、言葉自体もぼやけてしまいますから。

ピッカーさんの中でも、常にポジティブなコメントを書かれる方がいらっしゃいます。たとえば荘司雅彦さんのコメントは、ハッとするような気づきを読む人に与えてくれるので、お手本になります。自分もそんなポジティブなコメント力を磨きたいです。

ゼロからイチを作る、野村さんの挑戦

──こちらのコメントで野村さんは「語学だけではない、いろんな仕事力が必要」とお書きになっています。野村さんの考える仕事力について、もう少し聞かせてください。
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語学力は……全然足りないです。大学院時代に半年間だけ語学留学しましたが、コンプレックス化するぐらい英語ができませんでした。就職活動のときはTOEICが300点という有様でしたから。

ただ、英語が話せる後輩達もたくさんいますが、英語ができるから案件が進むか、というとそんなに簡単ではないですね。やりとりを重ねるなかで、要所をおさえ、案件を進めるためのスクリプトを準備して盛り込むと、商談の進み方が変わります。海外での仕事は、総合力が試されるなと気づかされました。

──語学以外の仕事力の強化ポイントは?

ゼロから1を作る、その力を磨きたいですね。ここではまったくの更地から立ち上げる、ということをやろうとしています。新しいことをやろうとすると、本当に何もないんだというのを痛感しています。日本のように過去に築いた資産があるわけでもないので、「こんなものもないのか!」と驚くことの連続ですが。ひとつずつクリアしていって、しっかり成果を出して、「ゼロから1を作る力が付いたな」と思える3年後、5年後にしたいです。

アメリカのERP市場はだいたい日本の7倍あると言われています。単純に日本のように売れるとすると、普通に7倍売れなきゃおかしいよね、という市場。その拠点をゼロから作れるというのは、この上なくチャレンジングです。

野村修平さんのおすすめピッカー

斎藤陽さん

「自動車産業に造詣が深く、経営者のご経験など比類ない豊富なご経験をお持ちの斉藤さん。バシッと意見を言われる時もスッと入ってくるコメントが印象的で、勉強させてもらっています」

Mr. チワワさん

「コメント力向上のきっかけをもらったピッカーさんです。金融のバックグランドからくる幅広い業界への専門知識もさることながら、読ませるコメントにとても感銘を受けています」

荘司雅彦さん

「書きにくいこともポジティブなコメントで、誰にでもわかる言葉で、さらっとすごいことをお書きになる。まさに“コメントのプロ”」

小野 編集後記
「どんな起業をするにせよ、営業力が必ず必要」と考え、営業力を磨こうとワークスアプリケーションズに入社された野村さん。すぐに頭角をあらわし、5年目からマネジメントにも携わられ、2012年に既存クライアントへのリセールに特化した部門を新設。そして3年間で売上げを3倍にされたという実績の持ち主です。

そんな偉業さえも、謙遜をまじえながらサラリとお話しになる。このコメント力こそ、NewsPicksでの日々のトレーニングの成果に違いありません。
チャレンジの成功、お祈りしております!