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1997年青山学院大学を卒業後、三菱商事に入社。エイベックスやローソンなどでメディア・コンテンツビジネスに従事。その後、海外に渡り、2008年にハーバードビジネススクールでMBAを取得。同年、サンリオに入社し、2010年、取締役事業戦略統括本部長就任。現在、経営戦略、海外事業、映画・メディア・IT等新規事業を担当。著書に『世界の壁は高くない』(廣済堂出版)、『ブロックバスター戦略』(監訳・解説/東洋経済新報社)、
『桁外れの結果を出す人は、人が見ていないところで何をしているのか』(幻冬舎)。サンフランシスコ在住。

1997年青山学院大学を卒業後、三菱商事に入社。エイベックスやローソンなどでメディア・コンテンツビジネスに従事。その後、海外に渡り、2008年にハーバードビジネススクールでMBAを取得。同年、サンリオに入社し、2010年、取締役事業戦略統括本部長就任。現在、経営戦略、海外事業、映画・メディア・IT等新規事業を担当。著書に『世界の壁は高くない』(廣済堂出版)、『ブロックバスター戦略』(監訳・解説/東洋経済新報社)、『桁外れの結果を出す人は、人が見ていないところで何をしているのか』(幻冬舎)。サンフランシスコ在住

予測の3つのポイント

・スター・ウォーズ筆頭に、ブロックバスターが市場を席巻。

・ネットフリックスなど、旬に合わせたコンテンツが台頭する。

・中国の映画市場は1兆円を超える。中国マネーの行方にも注目。

大型作品が目白押し

2016年は、世界的なメガヒットが予想される作品が軒並み公開予定になっている。

大型のブロックバスター作品は、製作期間に3年以上、製作予算に100億円以上が費やされる。つまり、来年公開される作品の多くは、3〜5年前から製作が始まって入念に準備されてきたものである。その中でも、2016年はかつて大ヒットした作品の続編や強力コンテンツを題材にした作品が多いのが特徴だ。

ディズニーからは、ルーカス・フィルム買収後、2015年末に公開が始まったスター・ウォーズ「フォースの覚醒/エピソード7」に続き、2016年冬にも派生作品の「Rouge One」の公開が予定されている。

また、同社のアニメーション部門のピクサーからは「ファインディングドロシー」(「ファインディングニモ」の続編)が公開される。マーベル部門からは、「キャプテン・アメリカ:シビル・ウォー」に加え、「X-MEN:アポカリプス(原題)」の続編も公開が予定されている。

ディズニーだけではない。ワーナー・ブラザーズからは、ベン・アフレックがバットマンに扮し、バットマンとスーパーマンが対立する「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」、FOXからは「アイスエイジ」の続編、ドリームワークスからは「カンフーパンダ」の続編、ソニーからはモバイルゲームが大ヒットした「アングリーバード」の映画版が公開される。ハリウッドの大手スタジオにとっては、楽しみな1年になりうる。

大型IPコンテンツの作品だけではない。映画として大ヒットした「インデペンデンス・デイ:リサージェンス(原題)」(FOX)、「ゴーストバスターズ」(ソニー)、「スタートレック」(パラマウント)などの続編も公開される。

各社とも、長い時間をかけて製作してきただけでなく、映画の業界の宣伝費が多額に費やされるため、消費者の目もそちらに向くことになるだろう。公開時には各映画に100億円規模の予算が費やされてマーケティングされるはずだ。

「アナと雪の女王」を上回る熱狂

ディズニーの「アナと雪の女王」が日本を含め、2013年末の公開以来、2014年、2015年と世界を圧巻してきたが、これから始まるスター・ウォーズ熱の規模は、それを上回るものになりそうだ。

2015年末から公開された「フォースの覚醒/エピソード7」の世界規模での興行成績は、3000億円を超えると予想されており、今世紀最大規模だ。

仮に興行成績がそこに届かなかったとしても、同作品のDVD販売、過去の作品のDVD販売があり、さらに冬に公開される次作「Rouge One」を含めると、いずれにせよその金額規模はさらに膨らむことになる。

また、その関連商品は「アナと雪の女王」と少なくとも同程度、あるいはそれを20%程度上回るとされる。その関連商品規模は6000〜7000億円に膨れるとウォールストリートのアナリストの間では予想されている。

つまり映画と関連商品合わせて1兆円規模の市場が公開から2017年度末までに生まれることになる。「アナと雪の女王」で見た現象以上にどこもかしこもスター・ウォーズだらけになりそうだ。

「アナと雪の女王」が女の子中心だったのに対し、スター・ウォーズは大人を含む幅広い年齢層に訴求できる。また、男性だけでなく、女性層への展開も化粧品業界にまで広がるほど活発だ。年始から夏にかけての熱量は間違いないが、ハロウィーンから年末商戦までピークを持続できるかどうかがブロックバスター度合を測る注目点になる。

デジタル勢の台頭に注目

ブロックバスター作品はもちろん楽しみだ。しかしながら、数年前から時間をかけて製作する必要があるだけに、“今”にあった作品が製作されにくい傾向にある。

インターネットやテクノロジーが消費者とコンテンツを近づけているにもかかわらず、製作サイクルはその逆になっている。

また、作品の大型化が嗜好性の多様化を阻害する可能性もある。はたして、消費者がブロックバスター作品にあきあきするタイミングが来るのか? レーダーに入っていない作品が突然変異のように出てくる可能性も十分にある。

大型コンテンツに片寄りが出ているときこそ、必ず新しい流れのコンテンツにチャンスがある。特に注目すべきは、ネットフリックスやオンラインメディアの動きだ。

ネットフリックスやオンラインメディアでの製作の自由度があるのが特徴と言える。米国では、CNNの共和党の大統領選討論の番組に合わせて、「House of Cards 4」の主人公フランク・アンダーウッドが大統領選での立候補演説を視聴者に訴えるCMを流し、話題をさらった。

オンラインメディアでは、旬なコンテンツが時代に合わせてつくりやすいし、流し安い。この“旬”に合わせたコンテンツの台頭に注目していきたい。

中国マネーと中国映画市場の行方

最後に、近年の中国マネーの流入により、ハリウッドでのプロダクションのやり方が変わってきている流れにも注目したい。

2016年の中国映画市場は1兆円を超えそうだ(2015年は約7600億円)。中国では、中国で上映できる海外映画(ハリウッド)の上映規制があるが、その規制を乗り越えてハリウッド作品を上映するには、製作か出資を中国側から受け入れなければならない。

最大市場になった中国を見据えたハリウッドの大手スタジオのほとんどは、中国のファンドから中国マネーを受け入れている。ファンドだけではなく、アリババのような大手IT企業も映画事業に参入してきている。

ハリウッド作品としては、ドリームワークスからは「カンフーパンダ3」の続編が、中国内の同スタジオで中米共同製作されたものであることから、中国でどれほどのヒットになるのか注目したい。

昨年は、中国オリジナル作品の「モンスターハント」が興行成績450億円を超え、「モンキーキング」のようなレーダーに入っていない作品が大ヒットした。今年もレーダーに入らない中国作品が出てくることが予想される。

中国では、中国作品が公開されると、中国作品以外のタイトルが突現公開停止になったり、劇場から出されてしまったりするようなこともあるようだ。また、まだまだ映画製作におけるシナリオや表現方法でのコンテンツ制約がある。

中国観客にとっては、海外映画が刺激的に映っているだろうが、次第に海外コンテンツに目がなれ、嗜好も肥えてくるだろう。それにあわせて規制が緩和されていくのか、むしろ強化されていくのか、ヒットする作風が変わっていくのか注目していきたい。

(写真:Tomohiro Ohsumi/Bloomberg)