クリエイティブ思考の邪魔16リスト

「クリエイティブ思考」の邪魔16リスト#16(最終回)

完璧を目指して時間を費やしてはいけません

2015/6/22

1日で最高の結果を出すのは難しいです。だからこそ、素早く何かを始める必要があります。今ある考えを実行に移すことが大切です。クリエイティブの第一歩とは、評論家になることはやめて、今ある考えを行動に移すことです。何かを実際に行うことは、詳細な計画を練るよりはるかに重要です。

たとえば、「事業計画書は8割くらいの完成度で実行に移せ」とは、よく聞くせりふです。でも、私が先輩から学んだのは「5割で実行に移せ!」でした。なぜなら、20代後半から40代というのは、企業の第一線で毎日激務をこなす中で、なんとなくの計画を持っているはず。

だから、最初の一歩を勇気を持って踏み出し、計画をどんどん適切な方向に修正していくことのほうが重要というものでした。

友人のコンサルタントがつぶやいていました。彼いわく、「10年ほど前までは、企業で構築するITのために、何十億を投資するのが当たり前だった。投資額が大きい分、失敗しなさそうな統計で固められた何十枚と分厚い計画書と、社内調整に膨大な時間がかかっていたのが懐かしい……」。

今は違います。公開されている情報がネットにあるため、計画はほどほどにして、まずは完成度そこそこのサービスをつくり、とりあえず試せるようにすることが重要です。

友達のロシア人は外資系企業に勤めるエンジニアです。彼は会社とはまったく関係のないアプリサービスをつくっては世間の反応を学習し、本業へもその学びを生かしています。

サーバー費用も心配する必要はありません。昨年、フェイスブックが買収したParseのサービスを利用すれば、ユーザー数が少ないうちは無料で利用できるので、おカネをかけずに誰もが世界を変えられるサービスを生む機会を得られるようになりました。

計画書に時間をかける暇があれば、最初の一歩を踏み出すべきです。何かアイデアがあるなら、今すぐできることを実行してみましょう。信頼できる友人に見せるのもいいかもしれません。

他の人がきれいなパワーポイント資料を準備しているなら、1枚の手書きメモを使って、説得力あるストーリーを考えましょう。ホワイトボードに書きながらでの説明でもいいと思います。クリエイティブな考え方は実行しながら身につくものであって、計画してから実行するものではありません。

クリエイティブ思考の邪魔リスト#16:「8割で実行に移せ!」ではなく「5割で実行に移しましょう!」。行動と学習を通じて、どんどん新たな発見をしましょう!

細々と計画をすればするほど、結局やめておいたほうがいいのではないか、ということになります。何かを実行するときは「知らぬが仏」精神のほうがいい。「5割で実行に移せ!」。今ある考えを実行に移す勇気を持たない限り、クリエイティブな価値は生かされません。

ピッカーの皆さんのコメント約1500件(4/6時点)すべてを確認し、クリエイティブ思考に関する共通したコメントを2つ見つけました。

1.「なぜ、日本が最もクリエイティブなのか? なぜ、東京が最もクリエイティブなのか?」

2.「結局、クリエイティブとは何なのか?」

今回は2に絞り、まとめました。

人は誰もがクリエイティブ思考を持って生まれてきています。芸術的な美を創造する芸術家だけがクリエイティブ思考を発揮するのではありません。経理の仕事だろうが、営業の仕事だろうが、どんな仕事にもクリエイティブ思考を生かすべきです。

米国のビジネススクールの教授、Mohan Sawhney氏に直接聞いたところ、クリエイティブ思考とは「さまざまな情報をつなぎ合わせ、問題を解決できること」と言いました。

結局、クリエイティブ思考とは「つなぎ合わせること」だと考えています。

たとえば、30%もの営業利益を出す驚異的なデバイス「iPhone」(参照元:「iPhone」がもうかる本当の理由)は、通信、人工知能、パソコン、インターネットの要素をひとつに集約したデバイスです。さまざまな要素を「つなぎ合わせる」ことで実現されています。

過去4カ月間にわたって紹介してきた16リストを「つなぎ合わせて」まとめると、こうです。

クリエイティブ思考とは、人が生まれたときから持つ5つの資質をさまざまな「組み合わせ」で何度も試すことによって、知識の種類が多様になり、関連づけ思考がより強化できること(♯14)。

クリエイティブ思考とは、質の高い毎日のリズム(♯07♯13)、驚き(♯12)、疑問(♯04)などによって、パズルのようにバラバラな断片を「つなぎ合わせ」、全体観を創れる能力。

クリエイティブ思考とは、異なる言語(♯09)、異なる領域の人(♯05♯15)と接し、明らかに無関係な要素を「つなぎ合わせ」、直観力と論理を持って、問題を発見し、解決できる能力。

クリエイティブ思考とは、アインシュタインが言う「組み合わせ」遊び。考えを行動に移し(♯15)、新たな有益な「つなぎ合わせ」を市場の反応を見ながら修正できる能力(♯11)。

「『クリエイティブ思考』の邪魔16リスト」は、今日で終わりになります。最も共感できたリストはどれでしたか? 今まで本連載を応援してくださった皆さん、このような機会を与えてくださったNewsPicksの佐々木編集長に感謝いたします。本当に、ありがとうございました!

(終わり)

<連載「『クリエイティブ思考』の邪魔16リスト」概要>
学術書的な高度な専門学ではなく、日ごろの実務に基づく体験をもとに「クリエイティブ思考の邪魔16リスト(16回やるから)」と題して、16の異なる視点から邪魔するものを毎週月曜日に紹介。
【過去の記事はこちら】
#1:「俺はクリエイティブではない」と思ってはいけません
#2:自己ブランディングに罪悪感を持ってはいけません
#3:昨日と同じことをやっても生き残れない
#4:規則に従い、思考停止状態に陥ってはいけません
#5:多様な人材で異なる能力をうまく組み合わせるべし
#6:働きすぎて「100%仕事人間」になってはいけません
#7:リズムがない中で思うがままに過ごしてはいけません
#8:「集中」を分散させてはいけません
#9:「英語は不要」と思ってはいけません
#10:「制約はないほうがいい」とは限りません
#11:「ギーク=変わっていて好きになれない人」ではありません
#12:五十歩百歩では「驚き」がありません
#13:惰性に流される毎日を積み重ねてはいけません
#14:自分の強みを知らないままではいけません
#15:多様性がないのはいけません