IT25-banner_yokoku_rev

イノベーターズ・トーク

【新】石倉洋子×鳩山玲人「私を育てたスーパーボス」

2016/5/16
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、毎週2人のイノベーターたちが、時代を切り取るテーマについて議論を交わす。
IT25-eye_rev

第26回には、一橋大学名誉教授の石倉洋子氏と、元サンリオ常務取締役の鳩山玲人氏が登場する。

労働人口が減りつつある日本では、これからますます優秀な人材獲得競争が熾烈になる。優秀な人材を採用することも大切だが、それ以上に重要なのは人材の「育成」

人材を育てられる企業はそうでない企業に比べ、長期的に見て何倍もの違いを生むだろう。

しかし、人材の育成はとかく属人的なものとされがちな領域でもある。

たまたま人育てが上手な上司や恩師に巡り合えた部下は幸運だが、そうでもなければ自己研鑚で実力をつけるか、はたまたせっかくの潜在能力を死蔵させてしまうか……。

その意味で、シドニー・フィルケンシュタインの著書『SUPER BOSS』(日経BP社)は示唆に富む。

スーパーボスとは、突出した人を見いだして次々に育てる指導者のこと。教え子や部下のやる気を出させ、指導し、経験の浅い人でも仕事を任せて本人の限界を超えさせるのだ。

その「スーパーボス」と呼ぶにふさわしい人物が、今回登場する一橋大学名誉教授の石倉洋子氏だ。

グローバル人材育成の専門家でもある石倉氏は、かねてより大学の内外で世界の舞台で活躍できる人材育成のための「場」づくりにまい進しており、そこから各界へ羽ばたいていった子弟は数多い。

その子弟の一人が、元サンリオ常務取締役の鳩山玲人氏だ。大手商社、音楽、小売りなどの業界を経てサンリオに移籍。

数々の要職を歴任し「キティちゃんの名参謀」として知られる鳩山氏は、青山学院時代に石倉洋子ゼミに所属し、以来、20年以上にわたり石倉氏との交流が続いている。

そんな2人に、「スーパーボス」をキーワードに語り合ってもらった。

IT25_profpoint-A_rev

鳩山氏が石倉氏と出会ったきっかけは大学時代。青山学院大学在籍中に石倉ゼミの門をたたいて以来、2人の親交は20年以上にわたって続いている。

鳩山氏は自身の著書で「石倉さんは人生の師」と紹介するほど敬愛している。その理由を尋ねると「それを挙げるときりがない」と笑いながらも、ゼミ生時代に石倉氏から譲り受けた書籍のことや、ゼミで怒られたエピソードを語り出す。

また、社会人になるにあたって石倉氏から受けた人生のアドバイスは今も実践しているという。「私、こんなこと言ったっけ?」と当の石倉氏は首をかしげるが、そのアドバイスの中身とは──。

第1回「『取ってはいけない』厳しいゼミで人生の師に出会う」に続く。

IT25-t02

石倉氏からはビジネスのスキルやキャリアについて大きな影響を受けたと語る鳩山氏。それだけでなく、開けっぴろげな石倉氏の性格からも多くのことを学んだという。

では、そんな石倉氏にとってのスーパーボスとは誰なのだろうか。その問いに対し、3人の名前を挙げてくれた。そのうちの一人、大前研一氏は石倉氏のマッキンゼー時代の上司にあたる。当時を振り返って「すごく参考になった」と語るのは、クライアントとの接し方だ。

第2回「大前さんからクライアントとの接し方を学んだ」に続く。

IT25-t03

新卒で就職をするときにも、転職をするときにも、鳩山氏は折に触れて石倉氏にアドバイスを求めてきたという。

鳩山氏のようにキャリアで悩む学生や卒業生に尋ねられるたび、石倉氏が聞き返す言葉がある。すなわち、「周囲のことは考慮せずにまったく自由に考えられるとしたら、本当は何がしたいの」

スーパーボスとはかように正しい問いを投げかけることで部下や教え子を導く存在だが、もう一つ、大きなチャンスを与えるという点も見逃せない。

石倉氏は黒川清氏との親交を得たことで世界の著名な人とたくさん知り合うことができたという。

第3回「スーパーボスと出会って付き合う人のレベルが変わった」に続く。

IT25-t04

上司と呼ばれる立場になれば誰しも、部下に仕事を任せることがいかに勇気のいることかを実感することだろう。その苦労を自身も味わっているという鳩山氏は、部下に任せてうまくいかなかった場合に「部下の失敗を最後まで見届けることが重要」だと語る。

対談の話題は、上司と部下の人間関係の変化にも及ぶ。石倉氏は相手の年齢や立場に関係なく「さん」付けで呼ぶ。あるとき鳩山氏がその理由を尋ねると、「人間関係はやがてどうなるかわからないから」という答えが返ってきたという。その言葉の真意を、鳩山氏は自身の経験を交えて説明する。

第4回「部下にすべて任せることは度胸が必要」に続く。

IT25-t05

「親と上司は選べない」などといわれるが、石倉氏の場合は少し違うようだ。「手紙を出したり、電話をしたりして、黒川さんや大前さんというスーパーボスに出会いました」(石倉氏)。

相手が著名な人であるほど声をかけるのをためらってしまうものだが、石倉氏がそうまでしてコンタクトを取ったのは「この人と何かしなかったら一生後悔する」という強い想いに突き動かされたから。これは多くのビジネスパーソンにとっても参考になるアドバイスだ。

では、鳩山氏はどうだろうか。石倉氏と同様に外の世界の人をボスとして意識することがあるかと問うと、「僕は、今はまだ選ばないようにしています」と予想外の答えが返ってきた。果たしてその真意とは?

第5回「惚れたスーパーボスには臆せず会いに行け」に続く。

本日より、5日連続でお届けします。どうぞご期待ください。
IT25-next

第1回:5月16日(月)公開
「取ってはいけない」厳しいゼミで人生の師に出会う

第2回:5月17日(火)公開
大前さんからクライアントとの接し方を学んだ

第3回:5月18日(水)公開
ボスと出会って付き合う人のレベルが変わった

第4回:5月19日(木)公開
部下にすべて任せることは度胸が必要

第5回:5月20日(金)公開
惚れたスーパーボスには臆せず会いに行け

(構成:常盤亜由子、撮影:竹井俊晴)

SUPER BOSS