2024/4/23

【厳選5社】半導体のプロが教える「金の卵」たち

NewsPicks 編集委員(ニューヨーク支局)
欲張りすぎず、真面目に稼ぐ──。
2023年から、世界中の投資家を魅了してきた半導体とAI。その歴史的な高値で、市場を大いに沸かせてきた。
先週から大幅下落するなどアップダウンも激しいが、着実に資産を増やす人たちがいる。
その一人が、Xやブログ、YouTubeで発信する「ひこぐま」さんだ。半導体技術者ながら、30代前半で約5000万円の資産(投資利益は約2500万円)を作った。
コツコツ投資し、株価が下がれば、ルールに基づき損切りをする。
「アタマと尻尾はくれてやれ(欲張りすぎるな)」をモットーに、半導体分野で投資・発信をするひこぐまさんに、次に狙うべきテーマを聞いた。

半導体バブルは「まだ夜明け」

私は日本企業で働く、半導体技術者です。AI用の半導体チップを研究したり、自ら作ったりする仕事をしてきました。
2019年ごろから投資を始め、その時々に面白そうなテーマを調べています。
ただし、昨年からは「AI半導体の周辺企業」を調べるようになりました。
では、エヌビディアが強烈に伸びると、周辺で何が起きるのか。
これはエヌビディアが先月発表した、最先端のチップ「B200」(写真中央上、2枚)ですが、これを例にしてみましょう。
エヌビディアが発表した、最新のGPUを2枚搭載した「GB200 Grace Blackwell Superchip」(写真:NVIDIA提供)
この半導体を設計するには、まずケイデンス社やシノプシス社のEDA(電子設計自動化)ツールが欠かせません。
設計したら、台湾の半導体製造メーカーTSMCの工場で作られます。
その生産ラインには、回路を焼き付ける「露光装置」を製造するASML社、不要な部分を取り除く「エッチングマシン」を作るアプライドマテリアルズ社が深く関わっています。
またGPUには、実はセットで売られる半導体があります。
英半導体設計企業のアーム(ARM)をベースにしたCPUと、米マイクロンや韓国サムスン電子、SKハイニックスのメモリ用のチップです。
さらにサーバー外部にデータを接続するのは、米ブロードコムやアステラ・ラボなどの企業。
こうした半導体チップを、サーバーに組み上げるのが、株価が沸騰したスーパーマイクロコンピュータ社です。デルやヒューレット・パッカードも手掛けます。
ここまでは、多くの投資家たちが「AI×半導体」の銘柄としてあさってきたところ。
そして目下注目は、AI半導体を動かすための「電源周り」の会社です。電源制御や冷却システムなどを手掛ける米ヴァーティヴ(Vertiv)、イートン(Eaton)などが筆頭です。
それでは、今回わたしが注目している5つの企業を紹介します。
AIチップは電力を爆食いする。エヌビディアのサーバー1台(DGXH100、GPU8枚)は、なんと一般家庭の2~3軒分もの電力を使う。そこで液冷による排熱技術をもつ銘柄が、要注目だ。
ひこぐま  ヴァーティヴは、データセンターの電源や冷却に関わる会社です。特にエヌビディアとがっつり組み、AI半導体向けの「液冷方式」の冷却システムで注目を集めています。
AI半導体チップは大量の電力を使うので、とても高温になります。これまでの空冷方式(エアコンのようなもの)でデータセンターを冷やす方法は、限界にきている。
そこでより効率的に冷やす「液冷方式」が、注目のトピックになっています。
エヌビディアが液冷方式を取り入れるには、他の会社のテクノロジーが必要。それで最新の冷却システムを使って、高効率なAI用サーバーを開発したい。
そこで市場のターゲットになったのが、データセンターの冷却システムを手掛ける3社。ヴァーティヴ(Vertiv)、イートン(Eaton)、クオンタ・サービシズ(Quanta Services)です。
いずれも過去1年間で、株価がグンと上がった。
理由は、これまでの成長に「AIの巨大需要」が織り込まれていなかったから。そしてどの程度上振れするか、まだ期待値ベースでフワフワしています。