2024/4/26

都市と自然を“なめらか”に繋ぐ、“SANU式”別荘ライフのススメ

NewsPicks Brand Design editor
 都市での暮らしは便利だけれど、なぜか“満たされない”──。
 近年、働き方の自由度が高まったことで、都市と自然を行き来するライフスタイルへの関心が増している。都市の利便性を享受しつつ、定期的に自然の中でリフレッシュできる時間を持つことは、多くの人が望むところだろう。
 しかし、そのようなライフスタイルを実現するには、いくつかの障壁がある。例えば、別荘のような不動産を所有するには購入費や維持管理の面で負担が大きく、かといって自然を求め地方へ移住するのもハードルが高いのが現状だ。
 そんな都市生活者に向けて、月額制でセカンドホームに暮らすという新しい選択肢を提供しているのが、「SANU 2nd Home」を展開するSANUだ。サービス開始以来、常に会員登録待ちの状態が続いており、2025年までに全国30拠点200室への拡大を目指している。
 CEOの福島弦氏は、「都会と自然のどちらかではなく、“自然と共生し日常を送る“そんな第三の選択肢をつくりたかった」と語る。
 都市に生活の拠点を置きながら、自然へも手軽にアクセスできるようになることで、私たちの日常はどのように変化するのだろうか。福島氏に話を聞いた。

都市の生活にはなぜ、“余白”がないのか

──都会で暮らしていると、ふいに息苦しさを感じることが多いです。なぜでしょうか?
福島 端的にお答えすると、「余白」がないからだと思います。
 都市での暮らしは便利です。仕事や遊びの選択肢も豊富にありますし、買い物するにも不自由ありません。Uber Eatsのように昼夜問わず食事を持ってきてくれるサービスもあります。
 その意味で、都市は「効率的に生活すること」、この一点において最適化されている場所だと思います。
 一方、そうしたメリットを享受できる反面、スケジュールは仕事のタスクでびっしり埋まり、時間が空けばスマホを見て過ごす。都会で暮らすビジネスパーソンの多くが、そんな忙しい日々を送っているのではないでしょうか。
 そうした日常では、地域の新鮮な食材を使った料理づくりや、木漏れ日の中での読書といった体験の優先順位が下がりがちです。
 だからこそ、単に生活するだけでなく、「より豊かに暮らす」ことを目指すのであれば、効率性とは真逆のこうした体験を日常に取り入れることが重要だと思います。
 自然の中で大きく深呼吸したり、海に沈む夕日を眺めながら散歩したりするだけでも、五感が刺激され、疲れ切った心が満たされます。日々の暮らしに「余白」を取り戻すためには、自然を日常に取り入れることが鍵となるのではないでしょうか。
 しかし、都市部に暮らす多くの人にとって、自然の中で過ごす時間を確保することは容易ではありません。
 都市での利便性を維持しながら、自然とのつながりを持つライフスタイルをどうにか実現できないか。そうした悩みを解決するために生まれたのが「SANU 2nd Home」なのです。
──そもそも「SANU 2nd Home」のアイデアの出発点は何だったのでしょうか?
「SANU 2nd Home」の構想を思いついたのは、コロナ禍の緊急事態宣言が発令されていた時期でした。山の中の一軒家に宿泊し、オンライン会議を終えた直後、ふと幸福感に包まれたのです。
 非日常としての自然体験でなく、日常の延長線上に自然がある──
 そんなライフスタイルが当時の自分の感覚と非常に合致していて、これを安定的に続けたいと強く思ったのです。しかし、そのためには、都市と自然の両方へなめらかにアクセスできる環境が必要でした。
 ところが、これまでは「都市」か「自然」、どちらかを選ばなければなりませんでした。
 都市に住みながら自然を享受するには、旅行に行くか、別荘を持つか、移住するかの選択肢しかなかったのです。
 週末に旅行に出かけると、高速道路は渋滞し、観光地やレジャー施設は大混雑。翌日は早々にホテルをチェックアウトしなければならず、疲れを感じて帰宅することも少なくありません。
 別荘を所有して二拠点生活を送ることも、毎年の維持費や管理の手間を考えると、ビジネスパーソンにとって気軽な選択肢とは言えません。別荘は平均すると年間30日ほどしか使用されておらず、使うときには毎回清掃からという話もよく耳にします。
 地方移住という選択肢もありますが、リモートワークが普及したとはいえ、職場へのアクセスや都市の利便性を手放すことを考えると、なかなか一歩を踏み出すのが難しいのが現状です。
 そこで私たちは、現実的に負担できる金額で、一時的な旅行ではなく日常的に過ごせる自然の中の拠点が欲しいと考え、新しい選択肢として入会金0円、月額5.5万円でワンクリックで始められるセカンドホームサービス「SANU 2nd Home」を立ち上げました。

10万人ではなく、100人に深く刺さるビジネスに

──「SANU 2nd Home」は従来の別荘とどう違うのでしょうか?
「SANU 2nd Home」では日本各地の海、山、湖にアクセスできるように、全国に18拠点100室(2024年4月末時点)あります。東京から車で2〜3時間で行ける千葉、長野、山梨、伊豆をはじめ、来年には30拠点に増やし、ニセコや淡路、奄美にもオープンする予定です。
「SANU 2nd Home」は全国18拠点100室(2024年4月末時点)を展開している。
 別荘だと特定の拠点と行き来するのみになりますが、「SANU 2nd Home」の場合は日本中の自然が自分のセカンドホームになります。
 利用している会員の方は平均年30泊程度利用されており、6割程度の方は気に入ったエリアへ定期的に通い、たまに気分を変えて違うエリアに遊びに行くといった使い方をしています。
 シェアすることで初期投資が不要となり、掃除などの管理の手間もかかりません。現代社会の中で自然を享受するスマートなあり方を考えたときに、スマートフォンで手続きが完結するというのも欠かせない要素だと考えています。
──SANUのビジネスモデル構築において特に意識したことはありますか?
 我々は10万人に広く薄く届けるのではなく、100人により深く届けるような、新しいムーブメントを起こしたいと考えています。そうすることで、深いつながりを持つ100人のユーザーが次の100人を連れてきてくれると信じています。
 SANUでは「Live with nature./自然と共に生きる。」というビジョンを掲げています。自然も人も大切にしたいという考え方を増やしていくためには、一期一会で終わりの関係ではなく、深い関係を構築することが事業の拡大につながると考えています。
 その傾向はユーザーレビューにも表れています。リピーターが多いため、「サービスをもっと良くしてほしい」という意欲が強いのです。備品の不備を指摘してくれる方や、近隣のおすすめスポットを紹介してくれる方もいます。
 我々だけでなく、ユーザーも一緒になってSANU 2nd Homeをつくっている感覚を持っていただいている。これはメンバーシップ型コミュニティビジネスの面白いところだと思います。

旅行ではなく、“生活者”として暮らすような滞在

──拠点を選ぶ際にはどのような点を意識しているのですか。
「SANU 2nd Home」が大切にしているキーワードは2つあります。一つ目は「五感を使った体験」、二つ目は消費者ではなく「生活者」として過ごすことです。
 拠点を選ぶ際に重視しているのは、「自分たちが行きたい、滞在したい場所」ということ。海好き、山好きのスタッフが各地を巡って、直感的に「ここはいい」と思った場所に拠点を置いています。
 たとえば、最初の拠点は八ヶ岳南麓の山梨県北杜市につくりました。北杜市は自然が豊かでありながら、地域を盛り上げるキーマンがいて、地元ならではの食やワイン、コーヒーなどが楽しめるお店もたくさんあります。田舎ではなく、都会的でありながら自然豊かなまちです。
山梨県北杜市にあるSANU 2nd Home、「八ヶ岳1st」。
 しかし、こうしたローカルな魅力には、ホテルに1日泊まるだけの旅行ではおそらく出会うことができません。何度か訪れ、生活者として地元の店舗で買い物をしたり、地元のバーで交流したりするなど、地域のコミュニティとゆるやかにつながることで初めて体験できると思います。
 非日常を楽しむ旅行では、予定をぎっしり詰め込みがちですが、「SANU 2nd Home」が提供するのは、コンテンツやサービスを詰め込んだホテルのような滞在ではなく、「生活者として暮らすような滞在」なのです。
SANUチームが足を運び、お店やネイチャースポットをセレクトした八ヶ岳のエリアマップ。各エリア毎に同様のマップがある。
 特定の目的のためにその場所を訪れるのではなく、何の予定もなく訪れ、その日の気分や天気に合わせて自由に過ごす。 
 何度か訪れて、お気に入りのレストランを見つけたり、そのまちでの買い物や散歩の定番コースを確立したりするだけで、そのまちが自分のホームのように感じられ、旅行者ではなく生活者になれるはずです。
 気のおけない仲間やパートナーとゆっくり仕事をしたり、日常を過ごしたりする。あるいは子どもたちと一緒に都市では味わえない豊かな自然の中で遊ぶ。
「SANU 2nd Home」は、そういった過ごし方をしてもらえるような拠点づくりをしています。

「あの自然にいつでも帰れる」と思える場をつくる

──ユーザーからの声で印象的だった「SANU 2nd Home」での過ごし方はありますか?
 生まれたばかりのお子さんを連れて、1歳になるまで定期的に軽井沢の拠点に通い、のびのびと子育てができたという方がいました。
 自然の中で四季の変化や鳥のさえずりなどを身近に感じながら育ったことで、同じ月齢のお子さんよりも興味関心の範囲が広がったそうです。
 子どもたちからよく「木のおうち」と呼ばれて、絵日記に登場します。木のおうちに通っていた子どもたちが30年後に社会のリーダーになって、人と自然の豊かな共生に向けてワクワクするようなビジネスや活動を展開してくれたら最高ですね。
──大人にとっても、自然の中で過ごすことで都市の生活では気づかなかった視点に気がつけそうですね。
 ユーザーの方からも、「クリエイティビティが高まった」という声をよく聞きます。「散歩中にアイデアがあふれてくるのでICレコーダーを買った」という方や、「自分のやりたいことについてじっくり考えることができた」という方もいました。
 ビル・ゲイツは、日常のノイズから離れて自然の中で過ごし、深い思考に没頭する「Think Week」という習慣を定期的に続けているそうです。やはり、物理的に都市の喧騒や日々の仕事から距離を置くことは大切だと思います。
──SANUを通して、都市と自然をゆるやかに行き来するライフスタイルが広まることで、どのように社会が変わっていくと思いますか?
 リモートワークの普及とコワーキングスペースの増加により、都市部の人々の働き方は大きく変化しました。同様の流れが暮らし方にも訪れると考えています。
 私は写真家の星野道夫さんの著書が好きなのですが、彼は「近い自然と遠い自然」という言葉を記しています。「遠い自然」とは、日常を過ごしているときに、遠い大海原のクジラの姿を想像できることを指します。実際に見たことがなくても、想像できる心を持つことが大切だと述べています。こういった視点がとても大事だと感じます。
 日々を都市で忙しく過ごしていたとしても、「いつでも帰ることができる自然」があることで心のゆとりが生まれます。そうなれば、前を向いて自分らしく歩んでいける人が増えていくでしょう。
 日本にはまだ見ぬ素晴らしい自然がたくさんあります。我々自身が新しい自然との出会いに心をときめかせながら、SANUを全国、そして世界に広げていきたいと思います。
──具体的にはどのような取り組みを予定されていますか?
 まず、「SANU 2nd Home」の拠点数を増やしていきます。現在は全国18拠点ですが、2025年にかけては30拠点以上に拡大する予定です。より多くの人が気軽に利用できるようにすることで、自然との暮らしを身近なものにしていきたいと考えています。
 そこで、個人/法人向けのサブスクプランだけでなく、共同オーナー型のプランも今年より開始しました。必要な泊数分を不動産資産として所有することで、より自由度高く長く自然と関わるライフスタイルを実現できます。
 共同オーナー型のプラン第一弾の物件は募集2.5時間で早々に完売となったことから、ニーズの高さを実感しています。反響を受け、まもなく第二弾の物件発表を予定していますので、ぜひご注目ください。
 私たちの目標は、より多くの人が自然を身近に感じ、寄り添う暮らしを送れるようにすること。都市と自然をゆるやかに行き来するライフスタイルが当たり前になる世界を目指し、これからも新しい取り組みにチャレンジしていきます。