(ブルームバーグ): ニデックは14日、岸田光哉副社長(64)が4月1日付で社長執行役員に昇格する人事を発表した。創業者の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は最長4年間の期限付きで代表取締役グローバルグループ代表になる。強力なリーダーシップで同社の成長の原動力となってきた永守氏は会見で、新たな役職の任期終了後にもニデックの経営の一線から離れる可能性を示唆した。

発表によると、安定した経営継承を行い、新経営体制へ移行することでグループの経営やガバナンスの一層の強化を図る。創業期から永守氏を支えてきた小部博志社長兼最高執行責任者は取締役会長となる。

一方、永守氏は最長4年間代表取締役グローバルグループ代表に就任し、 創業精神の継承とグループでの求心力のさらなる向上を担うと同時に会社の成長を支える企業の合併・買収(M&A)にも継続して取り組む。小部氏も最長4年間取締役会長に就任するという。

永守氏は昨年3月時点では社長の任期は4年で、その後も4年ごとに交代していく方針とした上で、自身の処遇については次期社長就任とともに取締役グループ代表となり、そのまま2036年以降まで残る計画を示していた。

だが、この日の会見では、筆頭株主であり「サポーターに徹していくのがいいんじゃないか」とコメント。最近は説明を受けても分からなくなってくることが増えたなどとした上で、4年後以降については「おそらく名誉会長になるんじゃないですか」とも話しており、経営の一線を退く予定の時期が従来より早まった可能性がある。

社長に昇格する岸田氏は京都大学教育学部卒。ソニー(現ソニーグループ)で常務まで務めた後、22年1月にニデックに入社。車載事業本部長として不振の同事業の立て直しに当たってきた。

酒井貴子指名委員会委員長は岸田氏を選んだ理由についてニデックの企業理念を理解し、「グローバルな経験に基づき培われた国際感覚」を持っていることなどを挙げ、「経営者として成熟しておりポテンシャルが高い」と評価した。

岸田氏はニデックの原点に立ち返って「第2創業」をなしとげていきたいと抱負を述べた上で、車載事業の短期の再建を来年度に向けてやっていきたいと話した。

プレハブ小屋で創業

1973年に永守氏の自宅敷地内のプレハブ小屋で日本電産の社名で創業したニデックはハードワークを基本とする永守氏の手腕により高成長を続け、世界有数のモーターメーカーとなった。有価証券報告書でもこれまでの成功が主に永守氏の能力と手腕によるものとし、事業を巡るリスクの一つとして同氏への依存を挙げていた。今年8月に80歳を迎える永守氏の年齢もあり、後継者問題が課題となっていた。

ニデックではこれまでもシャープや日産自動車など大手企業から移籍してきた複数の後継者候補がいたが、いずれも経営を掌握するには至らなかった。永守氏はその反省に立って生え抜き幹部を中心とする経営体制にする考えを示し、5人の副社長から後継者を選ぶとしていた。

永守氏は自身の後継者の条件について従来、業績や株価向上への貢献を第一に挙げてきた。8日の取材では年齢的な条件として60代前半までが望ましいとの考えを示していた。

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(会見でのコメントを追加して更新します)

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