2024/1/13
【新潮流】今「見せつけない」オシャレが人気な理由
Kaori Nakano Co.,Ltd. イギリス文化を起点に、スーツダンディズム史、ファッション史、ラグジュアリー領域へと研究対象を広げている
ファッションは、社会の兆しをいち早く捉える産業だ。まだ言語化されていない世の中の空気を反映する、トレンドの先行指標でもある。
そんなファッション業界で、今、静かな変革が起きている。
2023年の秋頃からブランドロゴを見せずとも、明らかに上質なものと分かる服などを着用する「クワイエットラグジュアリー」というムーブメントが広がっている。
その理由は、決して浅くない。
このスタイルの裏側には、格差の拡大やサステナビリティの意識の高まり、社会不安が影響しているとされる。
そして、クワイエットラグジュアリーのトレンド下では、日本のアパレル産業にとってのチャンスだとも言われている。
この現象と日本の勝ち筋について、服飾史家の中野香織氏の解説をお届けする。
- 「静かなトレンド」がやってきた
- 「格差社会」を反映した隠す美学
- 日本には「追い風」のわけ
- 今こそ、島国を出よ
- ブルネロ クチネリに学べ
- 手織り×テクノロジーに勝ち筋あり
「静かなトレンド」がやってきた
2023年秋ごろから特に強く出てきたトレンドが「クワイエットラグジュアリー」です。
このクワイエットラグジュアリーは、表面的かつ短期的なトレンドとは一線を画す中長期的な時代を表すキーワードです。
発端は、2018年から配信しているHBOドラマ「メディア王 華麗なる一族」でした。
ドラマの中で、一族の長女が、華美ではないものの上質と分かるようなカシミヤのセーターやパンツを着ていました。
そこからこのスタイルが支持されるようになり、富と権力を持つ人のスタイル「クワイエットラグジュアリー」という言葉が、静かに広がり始めました。