2024/1/20

ノート術でフレッシュスタート!年始に決める「初めの一歩」

編集オフィスPLUGGED
昨年1年を振り返ったとき、「ああ、去年は充実していたな」と思えているでしょうか。目の前に山積みになったTO DOをこなすだけで精いっぱいだったという人も少なくないかもしれません。

年始のデトックス&リラックス特集では、新しい年を始めるにあたり、ビジネスパーソンがやるべき思考の整理についてお伝えします。『1日10分「じぶん会議」のすすめ』『頭の“よはく”のつくり方』などの著者で思考の整理家®︎鈴木進介さんに、一流の経営者らも実践している思考整理術について伺います。

今年こそは!と、手帳に目標を書き込む前に、やるべきことは、まずは、昨年できたことを振り返り、「やめたいこと」を書き出し、挑戦することを決めること。前編はマインドについて伺いました。後編は具体的な手法についてお伝えします。
INDEX
  • 思考の整理は「捨てる技術」そのもの
  • 実践1 ノート上で「自分アワード」表彰式をする
  • 実践2 DWTで1年の経験を整理し次に生かす
  • 実践3 やめることリストを作る
  • 実践4 ちいさな「はじめの一歩」を決める
  • 実践5 毎月1回の自分会議を自分に予約する
鈴木進介さん。株式会社コンパス代表取締役。思考の整理家®︎。経営コンサルタント。大学卒業後、3年間の会社員生活を経て25歳の時に起業。3年以上黒字にならず、挫折続きの生活を送る。その後、思考を整理すれば問題の9割が解決していることに気づき、思考の整理術を研究し体系化。著書に『1日10分「じぶん会議」のすすめ』(WAVE出版)などがある。

思考の整理は「捨てる技術」そのもの

前編では、思考の整理家®︎鈴木進介さんに、年始にこそやるべき「書く」ことによる思考の整理法とそのメリットなどについて伺いました。
鈴木「去年と同じ思考を続けていたら、今年も、同じ結果しか生まれません。異なる結果を出すためには、いつもと異なる思考をし、行動を入れ替える必要があります」
忙しいビジネスパーソンが、目の前のTO DOにとらわれずに過ごせる年始に思考の大掃除をし、さわやかな気持ちで前向きな一歩を踏み出すために重要なのは、「できていないことを書き出して反省するのではなく、できたことを書き出して、自分を褒めること」だということがわかってきました。
鈴木「思考の整理術というのは『捨てる技術』そのものです。心の不安であったり、頭の中のごちゃごちゃだったりを明確にして、必要のないものを捨てて最適化することができれば、それだけで、自分の中に余白ができて次の挑戦も可能になります」
後編では、実際にどう書くのかについて伺います。

実践1 ノート上で「自分アワード」表彰式をする

まずは、前編でお伝えしたように、ノート上で「2023年 自分アワード 表彰式」を開催しましょう。
鈴木「仕事とプライベートはなんとなく分けて書きましょう。できたことを思いつくままに書き出してみてください。というと、思い浮かばないという人もいるかもしれませんが、仕事や私生活の小さなことで構いません」
鈴木さんが自身の「できたこと」を記入した例(株式会社コンパスの資料をもとに作成)
昨年の年始に立てた大きな目標が叶っていなくても、仕事の目標が未達成だったとしても構いません。「プロジェクトが第二フェーズに入った」「部下が自分との1on1で気づきがあったと言ってくれた」など、よかった点を書き出していきましょう。プライベートでも、「ずっと行きたかったカフェに行けた」「子どもを○○公園に連れて行った」など、できたことなら何でも書き出します。
鈴木「この時点で『意外とたくさんのことができている』と、自己肯定感がアップしていると思います。今年への不安や、たまった仕事への心配、頭のごちゃごちゃを年始の時間のある時に一旦脇に置き、できたことを書き出した時点で、頭の整理はほとんど完了しているのです」

実践2 DWTで1年の経験を整理し次に生かす

できたことを書き出したら、今度は、「D:できたこと」によって「W:わかったこと」「T:次にトライすること」(略称:DWT)を書き出します。
鈴木さんが提唱する、DWTでの振り返りとは。(株式会社コンパスの資料をもとに作成)
鈴木「できたことから得た『学び』を『わかったこと』として書き出してみてください。この『わかったこと』には、自分の体感や、得られた教訓などが入ります。これも小さなことで構いません」
例えば、「部下の能力を伸ばすマネジメントができると自分自身も前向きになれるとわかった」「行ってみたかった場所には先延ばしせずに行くことで、自分を大切にできている気持ちになれる」など、得られた教訓を書き込んでいきましょう。
鈴木「中には、せっかくできたことを書き出したのに、つい反省点を書いてしまうという人もいるかもしれませんが、ここは、あくまで『できたこと』に対する『わかったこと』として書き込みます。ダメ出し、反省点、課題点は書かないようにしましょう」
最後に、今年トライしたいことを書き込みます。
鈴木「できなかったことではなく、できたことを元に検証することで、自己肯定感が高まり、不安がなくなっていきます。その上で、トライすることを決めれば、2024年の目標が明確になります」
鈴木さんが自身の「できたこと」をもとにして、DWTを記入した例(株式会社コンパスの資料をもとに作成)

実践3 やめることリストを作る

1年間にできたことを振り返り、わかったことを検証し、次に挑戦したいことを挙げてもらいました。次にやることは、「やめること」を決めることです。
鈴木「人生の時間管理は引き算が基本ですが、多くのビジネスパーソンはTO DOリストを作る時に、とにかく足し算をしていますよね。『あれもこれも』と付け加えていると、仕事の絶対量が増えてしまい、優先順位もつけづらくなります。これはある種、忙しい人のクセのようなもの。年末年始にこそ引き算の発想で、今年やめることについて考えてみましょう。そうしない限り新しい目標の入る隙はありません」
大切なのは「やめられるかどうかはわからないけれど書いてみる」ということと、最後に必ず「やめる」と書き込むこと。「30分以上の昼寝はやめる」「コンビニ弁当はやめる」というような些細なことで構いません。
鈴木「実現するかどうか、は考えずにとりあえず書いてみることが大切です。最後に『やめる』をつけることで、自分自身への宣言になります。書き終わった時のスッキリ感を味わってみてください」
書き込むことによって、「やめられたらどんな1年になるだろう」とポジティブな妄想が始まり、この妄想によって自分の中に余裕と余白が生まれるといいます。
鈴木さんが自身の「やめること」を記入した例(株式会社コンパスの資料をもとに作成)

実践4 ちいさな「はじめの一歩」を決める

さて、ここまできたら、自己肯定感がアップし、トライすることも決まり、やめることを決めたことによって気持ちや時間に余裕も生まれているはずです。
ここで改めて「DWTリスト」のトライすることを見直してみてください。その中から、特に大切な項目を1つ選び出し、ノートに今年のテーマとして書き出します。
鈴木「トライすることの中で、自分にとって一番大切だと思うものを選び出し、5W1Hで自分に質問をしながら、ノートに書き込んでいきます。
『Why』……何のためにやる? 目的は?
『What』……具体的に何をやる? 詳細は? 作業項目は?
『When』……いつからやる? いつまでに終える? いつやる? 所要時間は?
『Where』……どこでやる? どこへ行く?
『Who』……誰とやる? 誰に向けてやる? 誰を巻き込む?
『How』……どのような方法でやる? やり方は? 形式は?
今更感のあるキーワードだと思った方もいるかもしれません。でも、5W1Hにはビジネスに必要な切り口や視点が全て入っています。多くの忙しい人はこのシンプルな質問でさえ自分に投げかける時間も余裕もありません。だからこそ、年末年始はチャンス。日常に追われない時間を使って整理してみてください」
大切なのは、「完璧にしようとしないこと」だという鈴木さん。今日現在、書ける箇所だけ書いてみること。また、明確になっていないのであれば「仮」にしておいてもいいといいます。
鈴木「最後に、最終的な状態目標を書き込み、今すぐにでもできる『はじめの一歩』を書き込んでください。状態目標は、文字通り、目標が叶った状態を明確にすること。『はじめの一歩』は、自分にとってハードルにならない本当に小さなベイビーステップを設定してみてください」
大きな目標を掲げて大きな一歩を踏み出そうとすると挫折しやすいものです。このベイビーステップにはやる日時まで決めて、今すぐにできるなら今すぐにやってしまいましょう。

実践5 毎月1回の自分会議を自分に予約する

さて、ここまでたどり着いた方は、思考と心の整理整頓が終わり、片付いた頭と心、そして時間の隙間に新たな目標を設定することもできたのではないでしょうか。
やめたいことをやめ、無理のない実行可能な目標設定ができたなら、あとは行動あるのみですが、頭と心がスッキリした状態のまま1年を過ごすためには、月1の自分会議がおすすめだそうです。
鈴木「忙しい日常に戻ってしまうと、目標を立てて、一歩踏み出していたとしてもすぐに元のバタバタした生活に戻ってしまうことも否めません。だからこそ、月に1回、30分。自分会議の時間をあらかじめ自分に予約してください。そこで、DWTリストや行動リストを見直してブラッシュアップする。これを続けていけば、思考が整理された状態で1年を過ごすことも不可能ではありません」
落ち着いて物事が考えられる年始。1年を振り返り、思考の整理と目標設定にぜひ取り組んでみてください。