(ブルームバーグ): アップルの時価総額は今年、1兆ドル(約142兆円)近く膨らんだ。来年もこれだけの値上がりを記録することは難しいだろう。

4四半期連続の減収に歯止めをかけようとするアップルだが、外国製端末の使用禁止の動きが広がる中国では、先行きに対する不透明感が強まっている。さらに中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)との競争は激しさを増す一方、米国ではクリスマスを控え、「Apple Watch(アップルウオッチ)」最新機種が販売禁止となるリスクに直面している。

株価は年初来50%値上がりしており、バリュエーションは割高な領域にある。向こう1年の予想利益に対する株価収益率(PER)は29倍で、10年平均の2倍近い。

アキュベスト・グローバル・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、エリック・クラーク氏は「超大型株の事業モデルにとって目下最大のリスクは、他の銘柄に投資マネーが流れることだ」と話す。

こうした超大型株はバリュエーションの割高感、成長鈍化、ベース効果による前年比での厳しい比較に直面するため、「来年値上がりが期待できるとみる他の分野」に投資家が資金を振り向ける可能性があるとクラーク氏はみている。

今年は米金利の上昇を背景に、マネーが優良ハイテク株に吸い寄せられた。だが、インフレ鈍化に伴い、米金融当局が利上げ打ち止めの可能性を示唆する中、高リスク銘柄への買い意欲がここにきて強まっている。

割高な水準にあるアップル株がさらに上昇するには、利益の加速が条件となるだろう。ブルームバーグがまとめたアナリスト調査では、2024年9月通期の売上高が平均でわずか3.7%増、利益は7.6%増と見込まれている。

時価総額3兆ドル突破と、低調な成長見通しの間には断絶があり、アップルに対するアナリストの評価が盛り上がりに欠ける要因となっているかもしれない。

ウォール街はハイテク大手に対してはほぼ強気一辺倒だが、アップルに関してはより慎重だ。アップルに「買い」相当の投資評価を与えているのは34社にとどまっており、アマゾン・ドット・コムの67社、メタ・プラットフォームズの65社、エヌビディアの59社と比べても見劣りする。

もっとも、アップルに対して弱気一色というわけではない。ウェドブッシュのアナリスト、ダニエル・アイブズ氏は、来年末までに時価総額は4兆ドルに押し上げられると予測している。ブルームバーグの集計データによると、アップルの目標株価の平均が199ドルであるの対し、同氏は250ドルに設定しており、ウォール街でもとりわけ高い。

アイブズ氏はリポートで、中国政府による「iPhone(アイフォーン)」使用禁止の動きに対する懸念は根強いものの、「これは十分に抑制可能な問題であり、当社が行った直近の調査ではこの重要な地域におけるアップルへの需要は低下していない」とリポートで述べた。

原題:Apple’s $1 Trillion Rally Will Be Tough to Live Up To in 2024(抜粋)

 

--取材協力:Jeran Wittenstein.

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