(ブルームバーグ): 米アップルは、特許紛争を理由にスマートウオッチ最新モデルの米国直販チャンネルでの販売を停止する。対象機種はホリデー商戦の最中に売り場から姿を消すことになる。

同社の発表によると、Apple Watchの「シリーズ9」と「ウルトラ2」はオンラインストアでは12月21日から、実店舗ではクリスマスイブの24日から販売が停止される。

これは、2020年に初めて登場した血中酸素センサー搭載モデルの輸入禁止が予想されるのに先駆けた措置。同センサー搭載機を巡っては、医療機器メーカーの米マシモとの間で法廷闘争となっている。

米国際貿易委員会(ITC)は10月、アップルがマシモの特許を侵害しており、対象機器の販売を停止する必要があるとの判断を示していた。

アナリストの試算によれば、 Apple Watchの2023会計年度の売上高は約170億ドル(2兆4200億円)。アップルは米当局による輸入禁止措置が数日後に発効するとみられる中、同事業の救出に向けてソフトウエア修正やその他の対処方法に取り組んでいる。

同社のエンジニアらは、ユーザーの血中酸素濃度を測定する装置のアルゴリズムの変更を急いでいる。マシモが自社の特許を侵害されたと主張している機能で、アップルは酸素飽和度の測定およびデータ表示の技術について調整していると事情に詳しい複数の関係者は話した。

これは、アップルがこれまでに取り組んだことのないような、エンジニアリング上のいちかばちかの取り組みだ。同社製品は以前にも、法的紛争を理由に特定の国で販売が禁止されたことはあるが、今回の規制はアップルにとって本国で最大の稼ぎ頭の一つである製品がまさにクリスマスに直撃を受けることになる。ホワイトハウスが土壇場で拒否権を発動しなければ、ITCが課す禁止措置は12月25日に発効する。

アップルはマシモと和解する可能性もあるが、同社にとって通常それは避けたい方法だ。両社はその線では協議していないもよう。

対応を急ぐ

禁止措置が発効する場合、アップルはさまざまな法的・技術的選択肢に取り組む。すでに同社はこの措置をにらみ店舗で準備を開始。販売店にはシリーズ9とウルトラ2の写真を表示しない形でApple Watchを宣伝する新しい看板を送った。下位モデルである「SE」は引き続き販売される。

アップルの広報担当者によると、同社は製品を市場に戻すための変更を承認する権限を持つ米税関当局に、対処方法を提出する作業を進めているという。

同社はApple Watchの部品と組み立てを海外のサプライヤーに依存しており、ITCの禁止措置は同社が米国内で同製品を販売できなくする輸入制限の形を取る。

このITCの措置はアップルの直販チャンネルにのみ適用されるため、ウォルマートやベストバイ、ターゲットなどの小売業者は同製品の提供を続けることが可能。ウォルマートとベストバイは18日、両社とも販売停止の計画はないと表明した。

このニュースは米メディア「9to5Mac」が先に報じたもので、アップルの株価は18日のニューヨーク市場で一時、前週末比1.6%下落した。

原題:Apple Races to Tweak Software Ahead of Looming US Watch Ban (1)、Apple to Halt US Sales of Smartwatches After Patent Loss (2)、Apple to Stop Selling Its Latest Watches in US After Patent Loss(抜粋)

報じた

 

(事業規模や関係者の話などを追加して更新します)

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