2023/12/23

【地方の雄】48年連続成長。「年輪経営」の哲学が奥深い

NewsPicks 編集委員
「人件費は決してコストではない。むしろ、会社の目的そのものですよ」
長野県は伊那市に、知る人ぞ知るいぶし銀企業がある。「かんてんぱぱ」ブランドで知られる寒天のトップメーカー、伊那食品工業だ。
その特徴は、最高顧問・塚越寛の思想に裏打ちされた「年輪経営」と呼ばれる独自の経営スタイルにある。
自然界の樹木がどんな環境下でも年輪を増していくように、景気や世の中に左右されることなく確実にゆっくりと成長を目指す経営だ。
塚越寛が経営を担い始めた1958年以来、48年連続で増収増益を達成している。
年輪経営のポイントは、「人を大切にする」組織文化にある。経営者が社員を大切にし、社員もそれに応えようとする。
言葉にするとシンプルだが、それが実践され続ける例はほとんどない。伊那食品は、組織文化が企業を強くする、最良の事例だ。
NewsPicksはその哲学に触れるべく、伊那食品の塚越英弘社長を訪ねた。
取材の途中で最高顧問の塚越寛氏も登場し、実に学び深い時間となった。
INDEX
  • 「いい会社をつくりましょう」
  • 何があっても「全員昇給」
  • 幸福の鍵は「人間関係」
  • 「言行一致」できているか
  • 「伝説の経営者」登場
  • バカにされても、言うよ
  • 苦労は無駄にならない

「いい会社をつくりましょう」

──インタビューに来る途中、本社周辺を歩いていたのですが、ゴミひとつ落ちていませんでした。毎朝、掃除をされているそうですね。
塚越社長 始業前に皆でね。もちろん私もやります。
毎朝、少しだけ早く出社して会社周辺をきれいにする。決して強制しているわけではないんですが、自然ともう何十年以上も続いています。