2023/9/12

【実録】社員が止められなかった「疑惑のがん検査」

尿1滴で15種類ものがんのリスクを高精度で調べられるとうたう線虫がん検査「N-NOSE(エヌノーズ)」。
特集第1回の記事では、広告の精度を大きく下回る実態を示唆する学会発表の内容、さらに現在も使われている自動検査装置の稼働後にまとめられた内部資料を紹介した。
資料は、線虫検査でがんリスクが調べられるどころか、1回ごとの検査結果が「偶然」に左右されることを意味するものだ。内実を知る関係者は「サイコロを振るようなものですね」と語った。
N-NOSEで高リスク判定を受け、「がんかもしれない」と不安に陥った経験がある人にとっては、にわかに信じがたい話だろう。
だが、これは決して実用化後に始まったことではない。
NewsPicksの取材によれば、N-NOSEを提供するHIROTSUバイオサイエンスの社内では、設立間もない時期から、手作業の検査でも同様の結果になることが多くの研究員の間で知られていた。
そうした状況にありながら、なぜN-NOSEは世に出てしまったのか。関係者の証言と複数の内部資料を基に、HIROTSU社と線虫がん検査の闇に迫る。
INDEX
  • 再現できない論文
  • 検査に「上手い」「下手」がある
  • 「目隠ししたらボールに当たらない」
  • 自動検査装置、試運転の深刻な状況
  • 進言した社員が受けた仕打ち
  • 「私は科学者ですよ」
  • 都合の悪いデータを削除
  • 「法の抜け穴」豪語
  • セラノス事件との酷似