(ブルームバーグ): ジャニーズ事務所が故ジャニー喜多川氏による性加害問題を認めたことを受け、スポンサー企業が同事務所所属タレントのCM自粛や解除を検討する動きが出ている。ジャニーズのタレントは人気が高く多業種にわたってCMに起用されており、消費者の反応の予測が難しいため企業側も慎重な対応を迫られている。

アサヒグループホールディングスは8日、現状ではジャニーズ事務所による明確な被害者救済と抜本的な組織運営の是正が認められない以上、取引を継続することは自社の方針に反するとし、今後、同事務所のタレントを起用した広告や新たな販促は展開せず、現行の契約はそれらの満了をもって解除するとした。再発防止策や被害者の救済など問題解決に向けた対応も求めた。

東京海上ホールディングス傘下の東京海上日動火災保険の広報担当者は、外部専門家の報告書などを受け、人権尊重の観点から事務所との広告契約を更新しないことを決めたと述べた。同社は2022年1月から嵐(活動休止中)の相葉雅紀氏を起用しており、公式ウェブサイトの該当ページは8日午後に削除した。契約の解除も検討しているという。

日本航空(JAL)もグループの人権方針に則り、ジャニーズ事務所の再発防止や被害者の救済状況を確認するまでは広告への起用を見送る。同社は嵐を20年の活動休止まで10年以上CMに出演させたほか、今年3月までは機内で放映する安全確認のための動画で櫻井翔氏と松本潤氏が登場していた。

元SMAPの木村拓哉氏をCMに起用する日産自動車は、木村氏の今後の方針についてコメントを控えた。過去にSMAP、現在はなにわ男子をCMに出演させているソフトバンクも、タレントの起用方針については非公表だとした。ジャニーズWESTの一部メンバーを使っている大阪ガスは同事務所の会見を受けて対応を検討しているという。

ジャニーズ事務所は国民的人気を誇る男性アイドルやグループを多数抱え、企業側も積極的にCMなどで活用してきた。性加害問題が明るみに出たことでスポンサーとしても社会的な責任が問われる一方、契約自粛や解除となった場合は消費者への浸透が弱まるほか熱狂的なファンの反感を買うなどのリスクも考えられ、今後の企業側の判断が焦点となる。

無視できぬ現実

企業のマーケティングやPRの支援を行っている片岡英彦氏は、今後の各社の対応は「扱っている商材やターゲットによって変わってくる」可能性を指摘する。グローバルに事業展開する会社や子供向け商品などを提供する企業は厳しい対応を迫られる一方、ターゲット層とファン層が重なる企業は「一方的にタレントを打ち切るのはひどいというファンの声を無視できない」と述べた。

喜多川氏による性加害問題を巡っては、外部専門家による再発防止特別チームが8月、調査報告書を公表。これを受けて事務所が7日に会見を開き、事務所として喜多川氏の性加害の事実を認め、謝罪した。

桜美林大学の西山守准教授(広告、マーケティング)は、事務所が性加害を認めたため、スポンサー企業は「推移を見守りたい」という言い訳ができなくなったと指摘した。社名変更や外部人材の登用といった根本的な解決策は示されず、「旧体制を引きずっていると企業はどうしてもみる。それを考えると起用はしづらい」との見方を示した。

5日付で事務所社長に就任した東山紀之氏は7日の会見で、スポンサー企業との個別の対応はこれからだとした上で、まずは会見で現状を説明し、「それで皆さんに判断していただこうと思っている」と述べるに留めた。東山氏は年内いっぱいで芸能活動を辞め、喜多川氏による性加害問題に取り組む考えを明らかにしている。

 

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--取材協力:佐野七緒、黄恂恂.

(識者のコメントを追加して更新します)

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