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グーグルの“憂鬱”の本質はどこにあるのか

【グーグルの憂鬱:予告】「神様グーグル」の曲がり角

2015/3/23
NewsPicks、オリジナルのミニ特集、第3弾は「グーグルの憂鬱」。インターネット業界の覇者として君臨するグーグル。2兆円に迫る営業利益、ロボット、自動運転車への進出、スペースXへの出資など、その存在感はあらゆるビジネス領域に広がりつつある。しかし、そのグーグルが今、大きな岐路に立っている。本特集では全8回にわたり、グーグルの“憂鬱”の本質がどこにあるかを探っていく。本日は予告編と第1回目の「データ分析から見える、神様グーグルの憂鬱」を掲載する。

時価総額はアップルに続く、世界2位。

世界最強のネット企業、グーグル。その歴史は、2人の創業者、ラリー・ペイジとサーゲー・ブリンが、1995年にスタンフォード大学で出会ったところからスタートした。

1998年、2人はグーグルを創業し、2000年には、検索エンジンの分野で世界トップに上り詰める。2004年には株式上場を果たし、それから10年、破竹の勢いで成長し続けてきた。
0_図3_グーグルの歴史

2015年3月20日時点の時価総額は3829億ドル(約45.9兆円。1ドル=120円)。アップルにこそかなわないものの、堂々たる世界第2位である。

企業の歴史上、これほど短期間に、これほどのペースで拡大した企業は稀だ。2014年12月期も、収益は2桁増を継続。売上高は660億ドル(約7.9兆円)、営業利益は165億ドル(約1.9兆円)に達している(下図参照)。
0_図1_売上高営業利益の推移

その収益を支えているのは、インターネット広告だ。圧倒的な検索エンジンのシェアを武器にして、ほぼ独占状態を謳歌。下図に示したように、売上高の9割はネット広告で稼ぎ出している。
0_図2_広告の売上高が9割

グーグルの稼ぎ頭は、AdWords、YouTubeなどの「自社サイト内広告」であり、2014年の売上高は450億ドルに上る。それに続くのが、Adsenseなど他サイトに掲載する「ネットワーク広告」。2014年の売上高は139億ドルにまで拡大している。

ネット広告から生まれる莫大な利益を使い、近年のグーグルはM&A戦略も加速。2010年以降は、月1社以上のペースで買収を続けている。

昨年も、スマートホームのNest Labs、人工知能のDeepMindなどを買収。今年に入ってからは、イーロン・マスクが最高経営責任者(CEO)を務める、スペースXへの出資も発表した(参考:Google買収戦略 20の事実)。

検索エンジンの王者の地位は安泰で、本業が伸び続けているグーグル。ネットの領域を超えて、あらゆるビジネスへと版図を拡大するグーグル。スマートクリエイティブ人材が集う企業として、世界中のビジネスパーソンが憧れるグーグル――。一見、今のグーグルは、どこにも穴のない“神様”のような存在に見える。

しかし今、そのグーグルは大きな岐路に迎えている。本連載では、合計8回にわたって、グーグルの抱える“憂鬱”の正体を探っていく。

Vol.01〜03は、Longine編集委員長で『Google vs トヨタ』の著者である泉田良輔アナリストが、データを紐解きながら、グーグル成長鈍化の理由、M&A戦略のブレ、Google X、Google Yの真の狙い、グーグルにはないアップルの競争優位性などを分析する。

Vol.04〜06は、「Google X」の存在を2011年に初めてスクープしたニューヨーク・タイムズのニック・ビルトン記者が、グーグル・グラス失敗の内幕を描いた記事などを掲載する。

Vol.07〜08は、NewsPicks編集部で「ネット四天王」企画を担当する荒川拓エディターが、「Google vs. 国家」という観点から、グーグルの憂鬱を描く。

*目次

【Vol.01】データ分析から見える、「神様グーグル」の憂鬱

【Vol.02】ソーシャルで完敗。ブレるグーグルのM&A戦略

【Vol.03】アップルにあって、グーグルにないもの

【Vol.04】元メンバーが語る、グーグル・グラス失敗の理由

【Vol.05】対立、酷評、不倫。そしてグーグル・グラスは砕け散った

【Vol.06】しびれ切らす投資家。グーグルの投資が実る日は来るか

【VOL.7】グーグル VS 通信業者。「インターネットの未来」をめぐる戦い

【Vol.08】中国・欧州・米国。誰が「グーグルの敵」なのか?