進撃の中国IT

トップメーカー「上海汽車」と提携、業界プラットホーム化目指す

アリババら10億元投じ、ネット自動車ファンド設立

2015/3/17
2015年に入って以来、「インターネットとクルマ」がたびたび報じられるようになってきた。そこに3月12日、新たなニュースが流れた。大手自動車メーカー「上海汽車」グループとEC最大手「アリババ」グループが共同で10億元(約200億円)を投じて、「インターネット自動車ファンド」を立ち上げると発表したのである。

 Business man hand working with select new car concept

最初の製品は2016年下半期に登場予定

これは両社が昨年7月に交わした「インターネット自動車」戦略協力協議に続き、その実質的な提携に踏み込んだもの。このファンド設立によって資本を紐帯に、それぞれの優位なリソースを結びつけ、共同で「インターネット上を走るクルマ」を造り、中国の「インターネット自動車」の発展をけん引することが目的だと、両社はそれぞれコメントしている。

今回設立された「インターネット自動車ファンド」は、将来的にオープンな資金プラットフォームとして運営される。出資対象は上海汽車やアリババの子会社に限定せず、より多くの参加者を集め、共同による「インターネット自動車」の開発、運営プラットフォーム作りをサポートする。

両社が結んだ「インターネット自動車」戦略協力協議では、アリババグループのオペレーションシステム「Yun OS」、ビッグデータ、IP通話業務「アリ通信」、GPSサービス「高徳ナビ」、クラウドサービス「アリクラウド」、音楽配信「蝦米音楽」などのリソースに加え、上海汽車グループの車両および自動車部品の製造開発能力や自動車関連サービスといったリソースを結集させて、「インターネット自動車」の共同開発を行う。

そして、それらをインターネットやビッグデータとオープンに融合させ、ユーザーのカーライフ全般を取り巻くサービスとしていく予定だ。最初の「インターネット自動車」は2016年下半期に登場する予定で、上海汽車のセダンブランド「栄威」(ROEWE)の新型車としてリリースされる可能性が高いと見られている。

ネット自動車はクルマとクルマ、道、そして人との関係を変える

上海汽車グループの驚雷・総工程師は、インターネットは将来、必ずやクルマにとって基本条件になるはずだと述べる。ユーザーが自動車で外出するときに問題を解決し、楽しみを生み出すのを手助けするには、未来のクルマはインターネット化されなければならないからだとする。

アリババの王堅最高技術責任者(CTO)は、インターネット自動車は人とクルマの交流方法を変化させるだけではなく、クルマとクルマ、クルマと道路、クルマとインフラそれぞれの交流へと進んでいくと語る。人、クルマ、道、そしてインフラ施設の4次元の交流という流れの中で、それはまた無人運転技術の整備の基礎になるだろうと見ている。

上海汽車グループ情報システム部の張新権・執行総監は述べる。「未来のインターネット自動車は、多様化したユーザー・ニーズに応えなければならない。多くの断片化したアプリを1台のクルマにまとめ、常に傍らにいる秘書のような存在として、インターネットのエコサイクルであらゆるリソースを調整してソリューションを提供しうる存在となるべきだ」と。

そのために、両社はクルマとインターネットが深く融合する「インターネット自動車」というコンセプトを打ち出した。これは、ECプラットフォームやアプリ、車載システムをいくつか作るだけといった簡単なものと区別して考える必要があるからだ。

「我々のような自動車メーカーはよりオープンなマインドでインターネット自動車のエコサイクルを築く必要がある。今後、インターネット自動車プラットホームも開放的なものになり、そこに多くのIT企業、アプリメーカーが参入し、知恵を提供することでプラットフォームをより良いものにしてくれるよう願っている」

進むサービスのインターネット化、残るは…

ある業界関係者によると、自動車業界の産業チェーンには、「製造、販売、使用、補修、買い換え」という5つのステージがある。このうち、クルマの購入と使用においてオーナーたちのクリティカルなニーズをがっちりつかんだ企業はまだ存在しておらず、既存の付加価値サービスも消極的に行われているにすぎない。

だが、この業界関係者は、上海汽車グループとアリババはすでにこの5つのステージの奥底にまで入り込んでいるという。

例えば、上海汽車グループでは昨年、販売からアフターサービスまで一貫して手がけるO2O(Online to Offline)サイト「車享網」をリリース。そこに14億元(約270億円)もの大金を投じて、アフターサービスチェーンの「A車駅」(http://www.achezhan.com)を構築した。その傘下にはカーメンテナンス、車両GPSシステム、中古車販売、さらにはローンやリース、カーオーナークラブ、そして保険、物流といったサービスから成るグループ企業を形成している。

一方、アリババには「Tモール」と「タオバオ」という、新車・中古車販売もカバーするECサイトがある。そして、タクシー配車アプリ「快的打車」、高徳ナビ、保険会社「螞蟻車両保険」、クレジットランク査定企業「芝麻信用」、第三者決済「アリペイ」といった関連サービスを擁しているのだ。

だが、それだけではない。自動車の産業チェーンに残されているのはまだまだ巨大な想像空間なのだと、前述の業界関係者は述べている。

(執筆:包志明/財新網 翻訳:高口康太 写真:@iStock.com/2nix)

※本連載は毎週火曜日に掲載する予定です。

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