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Retty創業者・武田和也氏に聞く

「食べログは競合ではない」。グルメアプリRetty、10億円調達の狙い

2015/3/16

実名制のグルメサービス、「Retty(レッティ)」が3月16日、第三者割当増資によって、10億円を調達することを発表した。2011年にサービスを立ち上げてからわずか3年で700万ユーザー数を達成、資金調達によって、さらなる飛躍を目指す「Retty」。ニューズピックス編集部は創業者、武田和也氏にインタビューを行った。

——10億円調達の使い道は?

約半年にわたって、交渉を続けた結果、Fidelity Growth Partners Japanを中心に10億円、資金を調達することができた。この資金を使って、海外進出を行う。特に香港やシンガポールなどを中心に東南アジアと北米に、コミュニティマネジャーを置き、サービスを拡大する。

もちろん、海外展開と平行して人材採用も行う。Rettyは全社員合わせても30人程度だが、海外進出にあたって、人の補強は必要不可欠になる。年内に100人程度まで拡大する予定だ。

「食べログ」は競合ではない

——国内では「食べログ」という競合サービスがいる。食べログに先んじてということか?

しばしば食べログと比較されるが、厳密にいうと食べログは競合という位置づけではない。多くのグルメサービスの中でも立ち位置が少し違う。例えば、最初に始まった「ぐるなび」は店舗数を網羅に掲載して、ネットでグルメを探す文化を築き上げた。

次に登場した食べログは「点数」という評価制をいれることで、お店選びに新たな軸を作り出した。だが、それだけでは定量的な情報にとどまってしまう。例えば、「恵比寿」「イタリアン」と調べるとすべての人が同じ検索結果を見ることになる。ユーザーはそこから点数などの定量的な情報を元にお店を選んでいる。2014年日本に上陸したYelp(イエルプ)も基本的に同様だ。

もちろん店への点数評価も大事だが、「食」という分野は個人の好みが色濃く反映される。高級な店を探すこともあれば、コストパフォーマンスの良さを重視することもある。点数が高いことが必ずしもユーザーの満足につながるとは思っていない。我々が目指すのは、その人の好みによってお店探しが出来る個別に最適化されたサービスだ。

「グルメアプリ3.0」を掲げる武田氏。食べログやぐるナビとは一線を画したコンセプトを掲げる

「グルメアプリ3.0」を掲げる武田氏。食べログやぐるナビとは一線を画したコンセプトを掲げる

「Retty」は実名登録が基本で、グルメの「こだわりを持つ」層が利用している。彼らのアカウントをフォローすることで、自分にあった店選びができる。例えば、30代の男性ビジネスパーソンが銀座でお店を探す場合、20代の大学生が勧める店ではなく、「銀座付近で働いている友達」や「銀座かいわいで食べ歩きをしている30-40代」のユーザーが勧める店の方が満足度は高い。

こうしたリアルに近く、個別に最適化されたお店のリコメンデーションは匿名ではできない強みだ。加えて、現在、「Rettyオフィシャルユーザー」というグルメに精通しているユーザーによる公式アカウントも作った。さらにユーザーが楽しめる仕掛け作りも進める。

もちろん、こうした“仕掛け”だけではなく、情報量も増加してきている。現在、ユーザー数は700万人を超えている。掲載店舗も60万件(食べログ80万件)と首都圏だけで見てもほぼ食べログと遜色ないレベルに達している。
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——わずか30人で、700万ユーザー数という成果についてどう思っているか。

「Retty」が認知されるようになったのはつい最近のことだ。2015年に入って、月に100万人単位で伸びてきている。2011年のリリースした直後は、類似サービスが100件近く乱立した。ユーザー数が伸び悩み、「苦しい」と感じる時期も続いたが、最優先にしていたのは「いかに良質なお店と出会えるか」ということのみ。

サービス開始から、3年間、一切のマネタイズをせずに、ユーザーの体験をいかに向上させるかということだけにフォーカスしてきたことが、ここにきて、ようやく認知され始めたと思っている。現在は、投資局面だが、ナショナルクライアントとともにネイティブアドを始めるなど、有料課金も視野に入れたマネタイズ戦略を開始していく。

アメリカで1年間、探し続けた起業のアイディア

——すでに食べログという大きなサービスが存在している中、新たなサービスとして参入するのは難しいことだと思うが、起業時にはどのようなことを考えていたのか。

Rettyを興すまで、26歳からの1年間、アメリカで徹底的に事業内容を考える期間を設けた。1年間、英語も話せないのに、働く予定もなく渡米するという決断は「無鉄砲だ」と思われるだろうが、私の考えは少し違う。「どの山を登るかで人生の半分が決まる」という孫さんの言葉が好きだ。

どうせやるなら日本が世界に誇る領域で、数億人規模の世界中の人々に影響を与えられるか。そして、そのサービスを利用しているユーザーの方の生活が少しでも幸せになるか。これらを強く意識していた。1年もの期間を使ったのは、その登りたい山を決めるため。

食という“山”を選んだ以上、後はそれに向かって一直線に走っていくだけ。日本が世界に誇る「食」において次なる価値をつくり、我々のビジョンである「食を通じて世界中の人々をHappyに」を実現したい。

(撮影:福田 俊介)