2023/7/16

【教えてプロ】GPTほか生成AIを「10倍」使いこなす秘策

NewsPicks コミュニティチーム
今週7月12日にはアドビの画像生成AI「Adobe Firefly(ファイヤーフライ)」が日本語対応するなど、連日AIツールの最新情報が飛び交っています。
ただ、ニュースをチェックはしていても、自ら使ってみたという人は少ないのではないでしょうか。
今回の【#教えてプロピッカー】は、「実は私もまだ......」という人向けに、今から始める生成AIツールの活用tipsをまとめてみました。
(※ピッカーから質問を募る「#教えて」シリーズの詳細はこちら
INDEX
  • 🔰初心者は何から始めるべき?
  • 🖥情報収集&資料作成の神ツール4選
  • 💡GPTで企画を量産するコピペ文
  • ❗️AIを使いこなすただ一つの方法
  • 「#教えて」シリーズ質問募集中!

🔰初心者は何から始めるべき?

今回取り上げるのは、NewsPicksが6月末に始めた生成AIを学び合うコミュニティ「OUTPUT CAMP meets AI」の初回セミナーで講演された内容です。

「これから生成AIツールを使っていきたい」という参加者も多い中で、プロピッカーの梶谷健人さんが披露した使いこなし術を紹介します。
  • 2030〜2060年の間に、現在の仕事の半分がAIに自動化される(by マッキンゼー)。
こんな未来予測を見かける機会が増えたように、ChatGPTなどの生成AIはこれからのビジネスを間違いなく変えていくでしょう。
AIを使いこなす人が、そうでない人を代替する。そんな変化がすでに起き始めています。
例えばソフトウェア開発プラットフォームとして有名なGitHubは、生成AIでコーディング支援を行う「GitHub Copilot」のコンセプトとして、「エンジニアの生産性を10X(10倍)にする」とうたっています。
数々の生成AIを駆使すれば、生産性が10倍かそれ以上になる時代がすでに来ているのです。
画像:GitHubブログより
にもかかわらず、今年6月時点でChatGPTを利用している人の割合は、たった15.4%という調査結果が出ています(野村総合研究所の定点調査より)。
「AIを使いこなす側」の人になるのは、今からでも決して遅くはありません。
そこで今回は、まず5つの仕事で生成AIツールを使いこなす、今日から実践できるtipsをまとめました。
1. リサーチ
2. ライティング
3. コミュニケーション
4. アイデア企画
5. サービス設計

🖥情報収集&資料作成の神ツール4選

1. リサーチ × Perplexity AI
ネット上にある情報を検索・収集するAIサービスはたくさん出ており、ChatGPTでも有料版「ChatGPT Plus」のプラグインを使えばさまざまなリサーチができます(下記参照)。
ただ、私が使っているツールの中でも圧倒的に便利なのが、AI検索エンジンの「Perplexity AI(パープレキシティ)」です。
Perplexity AIに調べたい内容を入力するだけで、勝手に検索キーワードを考えて、瞬時に関連する記事を出してきます。
使い方は、下のTweetにある動画をご覧ください。
(※無料でも使えますが、有料版のPro=月額20ドルと比べて機能や利用可能時間に差があります)
回答結果の引用文には出典元のURLも張ってあるので、リンクをたどればファクトチェックもできます。
2. ライティング × ChatGPT(Link Reader)
ChatGPTはただ「会話」するだけのツールではありません。ブログや仕事のリポート作成にも活用できます。
ChatGPT Plusのプラグイン「Link Reader」などを使えば、下の記事で紹介しているように、ネットの情報を拾いながら文章をカスタマイズすることができます。
3-1. コミュニケーション × Whisper
日常業務で、会議の議事録を作るのが大変だという方は一定以上いるでしょう。
ChatGPTの開発元OpenAIが出している文字起こしAI「Whisper(ウィスパー)」を使えば、1時間くらいの会議でも5〜10分で全文書き起こしてくれます。
手順は
  • 会議の音源を録画
  • 下のTweetにあるサイトにアクセス
  • MP3ファイルをアップロードして待つだけ
です(※ただし、会議の情報が社外秘である場合などは、安易にアップロードしないように注意しましょう。勤め先のルールに準じて使うようにしてください)。
文字認識の精度は現時点で95%程度と言われており、私自身、従来の文字起こしソフトに比べて格段に使いやすいと感じています。
3-2. コミュニケーション × Midjourney
社内外に提出する資料を作っていると、文章以外にイメージ画像や絵コンテが欲しくなる時があります。
そこで使える画像生成AIとして、「Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)」や「DALL・E2(ダリ ツー)」などがありますが、ここでは私がよく使う「Midjourney(ミッドジャーニー)」を駆使して資料作成するやり方をご紹介しましょう。
(※Midjourneyは、基本プランで月額10ドル〜プロプランで月額60ドルの有料サービスです)
例えば自社サービスの説明資料を作る時は、顧客に提供する価値を統一したビジュアルイメージで見せたくなるものです。
そんな時は、Midjourneyに画像を生成させるプロンプト(指示文)に「Seed値」と呼ばれる値を加えると、登場人物やイメージを固定させながら類似画像を大量に生成できます。
画像:梶谷さん提供
無料ツールのStable Diffusionなどでも似たような作業ができるものの、現状ではMidjourneyでSeed値を指定するやり方が最も便利です。
私の体感だと、写真購入サイトでイメージ写真を検索して、資料に統一感を持たせる......とやっていた時よりも、5分の1〜10分の1くらい時短できています。

💡GPTで企画を量産するコピペ文

4. アイデア企画を表形式で10個出させる
ChatGPTにアイデア出しをさせる方法については、すでに多くの記事やブログで紹介されています(下の記事など)。
そこでここでは、ChatGPTの出力を「表形式」でまとめるやり方をご紹介しましょう。
表形式で出力させたほうが、設定する要素同士の組み合わせで、より幅広いアイデアを生み出せるようになるからです。
例えば新規事業開発でよく使うリーンキャンバス(ビジネスモデルを検討するために用いるフレームワークのこと)の要素を、表の「カラム」に指定して出力させるプロンプトは下のようになります。
スタートアップのビジネスアイデアを以下の重要な要素に分解し、その重要な要素をそれぞれ縦の列とした表を作成してください:コンセプト、顧客セグメント、顧客の問題、解決策、Value Proposition、Key Success Factor

テーブルを10行のデータで埋めてください。

顧客セグメントを「日本のテクノロジー業界で働く人」で固定してください。
コピペして入力してみると、次のような表形式でアウトプットしてきますよね?
画像は無料版のGPT-3.5で出力した結果(全文はこちら
上のプロンプトを見直していただくと分かるように、今回は「顧客セグメント」の要素を固定するように指示しています。
こうして重視したい要素を指定してアイデア出しをさせることもできるのです。
このやり方でGPTと“ブレスト”すれば、さまざまな切り口でアイデアを検討してくれます。
5. サービス設計を想定ユーザーごとに行う
サービス設計でも、この表形式プロンプトを応用すると便利です。
よくUI / UX設計で用いるユーザーストーリーマップ(サービスの全体像を、顧客の行動軸と優先順位軸の2軸で整理して「マップ化」したもの)を、ChatGPTで作成することもできます。
Photo:iStock / PeopleImages
今回は下に紹介するプロンプトを使って、某音楽ストリーミングサービスのユーザーストーリーマップを作ってみました。
あなたは優秀なUXデザイナーです。

以下の#サービス構造の「ポティファイ」というサービスのユーザーストーリーマップを、以下の#フォーマットに従って表形式で作成してください。

# サービス構造”””

顧客:
音楽愛好者やポッドキャストリスナーで、新しい音楽を探求したり、お気に入りの音楽やポッドキャストを手軽に聴きたいと考える人々。

課題:
・音楽やポッドキャストを検索し、個別に購入したりダウンロードしたりすることは手間がかかる。

・自分の音楽嗜好に合わせて個々の曲を組み合わせてプレイリストを作るのは手間がかかる。

解決策:
・音楽ストリーミングサービス

 └ユーザーはポティファイを通じて数百万曲以上の楽曲とポッドキャストにアクセスでき、お気に入りの曲やアルバムを手間なくストリーミングできます。さらに、ポティファイはユーザーの音楽的嗜好を学習し、個別にカスタマイズされたプレイリストを自動的に生成します。これにより、新しい音楽やアーティストを発見することも容易にできます。
”””

# フォーマット”””

・横6行
・縦6列
・行:ユーザーの行動グループ、行動グループ内の具体ユーザーアクション、各アクションでのユーザー心理、機能(優先度:高)、機能(優先度:中)、機能(優先度:低)
”””
これを入力すると、ユーザーごとに「優先するべき機能」まで考えて出力してくれます。
画像は有料版のGPT-4での出力結果(全文はこちら)。出力精度はやや落ちるが、無料版のGPT-3.5でも機能する
こうして表形式にしたほうが、改善点やその後のアクションも検討しやすくなるはずです。
何より、ストーリーマップのたたき台をたった数秒で作ってくれるのは、大幅な時短につながるでしょう。

❗️AIを使いこなすただ一つの方法

最後に、数ある生成AIツールを「使いこなす側」の人になるための、たった一つの方法をアドバイスさせてください。それは
「表紙を眺めるだけでなく、中身を読む」
ということです。
Photo:iStock / Dima Berlin
「表紙を眺める」とはニュースを見るだけで終わること、「中身を読む」とは生成AIツールを使ってみることの比喩です。
当たり前だと思うかもしれませんが、日々、新しいAIサービスのニュースを追ってはいるものの、それらを触ってみたことがある人は意外と少ないものです。
また、Twitterでよく「これは神ツール!」などと喧伝されバズった情報をひたすらリツイートしている人がいますが、実際に使ってみるとたいしたことがなかったりもします。
これも、実際にサービスを使っている人が驚くほど少ないという証拠の一つです。
これを本に例えると、日々出版される大量の本を、本屋を歩きながら表紙だけ眺めているのと同じです。
本当に使える知識や能力を得るためには、本を手に取り、買ってじっくり読まなければなりません。生成AIとの付き合い方も、全く同じなのです。
この記事を最後まで読んでいただいた方は、この機会にぜひ「触れるニュースの数」よりも「生成AIサービスを触ってみる時間」を増やしましょう。

「#教えて」シリーズ質問募集中!

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【#教えて編集部】【#教えてプロピッカー】でいただいたコメントには、全て目を通しておりますので、たくさんの「問い」をお寄せいただけたら幸いです。
また、問いに対する答えは1つではなく多様であるため、追加取材した記事の内容も1つの意見だということをご認識いただけましたら幸いです。