(ブルームバーグ): SBIホールディングスは5日、台湾の大手半導体受託生産会社、パワーチップ・セミコンダクター・マニュファクチャリング・コーポレーション(PSMC)と日本国内に半導体製造工場を建設するための準備会社を設立することで合意したと発表した。

発表資料によると、PSMCは半導体の受託生産会社としては台湾3位、世界6位。種類の異なるロジックとメモリーの両方を生産できるほか、車載用のパワー半導体などに強みを持つ。工場建設の時期や場所、事業総額などは決まっておらず、今後両社を中心に詰めていく計画。

SBIの北尾吉孝社長は会見で、半導体生産について「輸出市場として日本で作る意味がある。グローバルサプライチェーンの起点にする」と述べた。「金融機能で日本の半導体産業の復興に貢献したい」とも話し、これまでネットワークを構築してきた地域金融機関が地元で融資できる体制を作っていく考えを示した。

政府は半導体を戦略分野と位置付け、支援を強化。これまでに受託生産世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に新設する工場建設などに最大約4760億円の助成を決定。国内メモリー大手のキオクシアホールディングスが三重県内に建設する工場向けにも最大約929億円の交付を決めた。

北尾氏は建設予定の半導体生産工場について、短期的に車載・産業機器用の生産に注力し、中長期的には3次元化や微細化を進めていく方針を示した。資金調達についてはSBIの主力行である三井住友銀行やみずほ銀行と相談するほか、グローバルに資金を調達する計画もあるとした。

PSMCの黄崇仁会長は、さまざまな国から招致の意向があったが「日本が優先だ」と述べた。コスト高だった数十年前に比べ労働力、費用、為替の円安、調達の仕組みなどあらゆる条件が整っており、「競争力がある国だ」と評価した。

北尾氏は資金面について、地元自治体からの支援も期待しており、例えば一部地方債による調達も考えられると語った。立地選定についてはこれからで、既に3-4のアプローチがあると明らかにした。SBIとして政府に補助金や税制優遇による後押しも働き掛ける意向だ。

発表を受けSBIの株価は上昇し、一時前日比3.1%高の2943.5円まで上昇した。証券ジャパンの大谷正之調査情報部部長は「半導体の需要はまだまだ伸びていくので、前向きな話であることは間違いない」と分析。ただ、工場設立や生産開始はまだ先で、「今後どうやって投資を回収していけるかが一番重要だ」とも指摘した。

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--取材協力:佐野七緒.

(北尾氏の発言などを追加しました)

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