2023/4/22

【知られざる復活】今、実は「地熱エネルギー」がアツい

NewsPicks NY支局長
まさに「忘れ去られたエネルギー」と言えようか。
この数年で、気候変動対策の機運が盛り上がり、さらにウクライナでの戦争でエネルギー安全保障の議論も高まるなか、常に筆頭にあるのは太陽光や風力であり、そして原発活用への議論も盛んになってきた。
しかし、その両方に役立つあるエネルギーの存在はあまり取り上げられていない。
それが「地熱エネルギー」だ。
地熱は、地中の熱を利用する再生可能エネルギーでありながら、太陽光や風力の弱点である変動性が少なく、1年を通じて安定に発電できる「ベースロード」になり得るという強みを持つ。
火山国である日本では、これまで地熱資源は何度も注目を浴びては、規制やコスト、地質などさまざまな理由を前に大量普及が拒まれてきた。
だが、今欧米では、これがにわかに「復活」している。
ある理由で、従来の発電方法のコストが下がりつつあるほか、さらに世界中にある地熱エネルギーを活かすいくつかの「イノベーション」が起きつつあるからだ。
実は、日本からも密かにこのチャンスを捉える電力会社まで出ている。
NewsPicksでは、この「地熱ルネッサンス」と呼ばれるイノベーションについて、最先端の技術を持つスタートアップと、日本から出資をした中部電力への取材を通し、全貌を明らかにしていく。

最新スタートアップへ投資

「この技術はまさに『ゲームチェンジャー』と確信したのです」
中部電力で、海外事業を統括する佐藤裕紀専務はこう話す。
佐藤氏は、長年LNG(液化天然ガス)のトレードで日本の第一人者として知られる人物だが、昨年から、次なる成長分野を探るため、海外事業分野を一から再構築する役割を引き受けた。
そこで世界のイノベーションへの投資機会を探るなか、真っ先に魅了されたスタートアップの一つがカナダ発の地熱技術会社Eavor(エバー)だった。
その背景の一つには日本の地熱の停滞がある。
「日本では、地熱発電の割合は1%以下で、この20年で3割減退したと言われています」(佐藤氏)
2050年のカーボンニュートラルの目標を前に、政府は2030年までに、地熱発電量を4倍に引き上げる計画を掲げている。中部電力も昨年、飛騨で初の地熱発電を成功させたところだが、日本全体では下降傾向にあるのが現実だ。
日本全体の地熱資源量は世界有数だと言われているにもかかわらずだ。
停滞の理由のうち、大きいのは「掘ってみるまでわからない」ことにある。