2023/4/16

【検証】ChatGPTは「村上春樹」になりきれるか

昨年11月にChatGPTが登場したとき、SNSで流行したのが、ChatGPTに「〇〇の文体を真似させる」という遊びだ。
たとえば「洗濯中に靴下をなくしたことについて、『アメリカ独立宣言』の文体で詩を書け」といった事例がバズったり、シェイクスピアやヘミングウェイのスタイルで書かれた文章が量産されたりした。
ChatGPTは、過去に読み込んだことのあるテキストから何らかのパターンを抽出し、そのパターンを再現することができる。それゆえに「模倣」にすぐれているのが特徴だ
では、そんなChatGPTに「村上春樹スタイル」の文章を書かせてみたらどうなるのだろう?
(mashiro/iStock/Getty Images Plus)
「村上春樹という作家は、とてもクセのある作家なので、ChatGPTがケーススタディをするぶんには“やりやすい”作家でしょう
そう指摘するのは、芥川賞作家にしてIT企業役員という顔も持つ上田岳弘氏。初めて読んだ純文学の単行本は『ノルウェイの森』というほど、上田氏と村上春樹作品の付き合いは深い。
「有名なエピソードですが、村上氏のデビュー作『風の歌を聴け』は、もともと英語で書かれたものを、日本語に訳して発表したものです。ある意味、“人工的なバイアスを通して書く”という手法で活動をスタートさせた作家なので、そもそもシステムや形式といったものへのこだわりが深い。その点で、表面上は形式を模倣しやすいと言えます」
今回NewsPicksでは、ChatGPTが生成した「村上春樹スタイル」の文章の中から3点を、上田氏にレビューしてもらった。
本記事の狙いは、単純に村上春樹の文体を模倣することではなく、ChatGPTというフィルターを通して「村上春樹」という作家の「スタイル」を再定義し、その魅力を再確認することだ。
いささかトリッキーな試みではあるが、ぜひおおらかに楽しんでいただきたい。
NOTION:

🖊現状のChatGPTでは、和文テキストの学習量が足りないためか、日本語で質問をしても「村上春樹スタイル」と呼べそうな文章は返ってこなかった。そこで、上述の『風の歌を聴け』の事例に倣い、英語の質問に英語で返ってきた回答を和訳して紹介している。

🖊和訳については、一人称を「僕」とし、平易な文章を心がけたが、恣意的に村上春樹氏の文体に似せてはいないことを付記しておく。

🖊回答の原文は記事の末尾に掲載した。
INDEX
  • 村上春樹らしい「比喩」とは何か
  • 大きな挑戦を「日常の動作」に落とす
  • 「諦念」を払拭する方法を示す
  • 物語を「体験」させるシステム