(ブルームバーグ): 米銀ファースト・リパブリック・バンクに複数の大手銀行が合計で約300億ドル(約4兆円)を預け入れる合意の取りまとめで、イエレン米財務長官と米銀最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が中心的役割を果たしたことが分かった。

大手銀行による動きは、地銀から預金が流出して、米金融システムに動揺が広がる混乱に歯止めをかけるのが狙いだ。

事情に詳しい複数の関係者の話では、イエレン長官は14日にパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長やグルーエンバーグ連邦預金保険公社(FDIC)総裁らと電話協議を行い、グループによる取り組みを提案した。

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イエレン長官はその後、ダイモンCEOとかねて予定されていた電話会談を行い、そうした措置が銀行システムへの信頼を示し、投資家の不安を静める重要な一歩になるとの見解で一致した。

両氏は他の銀行にも働き掛け、その数はJPモルガン自体も含めて2日間で計11行に拡大。16日午前には銀行規制監督当局や各行の首脳らが電話協議で最終的な詳細を策定し、上院財政委員会公聴会での3時間の証言を済ませたイエレン長官がワシントンのオフィスでダイモンCEOと再び対面で会談後、合意発表に至った。関係者は機微な内容の協議であることを理由に匿名で語った。

今回のファースト・リパブリック救済策はある意味、経営危機に陥ったヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)を公的資金を用いることなく救済するため、1998年に取りまとめられたプランに類似している。

LTCMのケースでは、ニューヨーク連銀がゴールドマン・サックス・グループなど十数の金融機関首脳を集め、計36億5000万ドルのパッケージで救済し、金融市場の崩壊を回避した。

LTCMの場合と同様に、ファースト・リパブリック救済に参加した銀行は、パニックが広がってそれに巻き込まれる事態を招くよりも、救済に乗り出す方が最終的に自行の利益にかなうと判断したと、関係者の1人は説明した。

ただ、LTCM救済は清算に向けたものだったのに対し、ファースト・リパブリック救済は将来的な事業継続を目指しており、それには買い手探しも含まれる可能性があると関係者は話した。

合意に加わったトゥルイストのビル・ロジャーズCEOは電子メールで送付した声明で共同の取り組みについて、「流動性強化のための強力な措置であり、米経済およびわれわれがサービスを提供するコミュニティーで地銀が果たす重要な役割への信頼を反映する」とコメントした。

ファースト・リパブリックのジム・ハーバート会長とマイク・ロフラーCEOは声明で、各行による共同の支援は「当行の流動性ポジションを強化するもので、当行事業の継続的な質の高さを反映し、ファースト・リパブリックおよび米銀行システム全体への信任の証しだ」と論じた。

イエレン長官は上院財政委の公聴会で、米銀行業界における最近の動向を踏まえ、信用逼迫(ひっぱく)の可能性を監視していると発言。さらに、米銀行システムは引き続き健全で銀行預金も安全だと繰り返す一方、何らかの合意が形成されつつあるとのヒントを示すことはなかった。

原題:US Taps Wall Street Banks for Show of Unity With First Republic

First Republic Gets $30 Billion of Fresh Deposits in Bank Rescue(抜粋)

--取材協力:Saleha Mohsin.

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