トヨタが「失ったもの」と「今置かれている状況」「我の強いエンジニア」はなぜ必要か
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トヨタと言えば「トヨタ生産方式」が有名ですが、この本に出てくる「チーフエンジニア制度」は一般にはあまり理解されていません。
チーフエンジニア(通称:CE)は主に車種群ごとに任命され、おおよそ30人程度おり、各車種の開発の指揮を執る「製品開発の社長」のような存在です。直属の部下はせいぜい数名程度ですが、全ての部品を開発する数百名(サプライヤーも含めると数千名?)の仕事に大きな影響力を持っています。
製品開発以外でも、例えば価格や販売手法、更には広告宣伝についてもチーフエンジニアが意見を言うこともありますが、その権限の大きさゆえにプレッシャーも半端ではありません。
他社でも類似の制度はありますが、トヨタのチーフエンジニアほどの権限はない。他社の方は「直接的な人事権もない人間がどうしてこれほど多くの社員に影響を持つのか?」と思うだろうが、これが初代クラウンの主査(現在のチーフエンジニア)だった中村健也氏から始まった伝統なのです。中村氏は役員就任を断って一エンジニアとして会社員人生を送った伝説的な人物です。
「どんがら」は私も読みましたが、チーフエンジニア制度というトヨタ独自の仕組みを理解するのにも役立つ本です。豊田章男社長から、佐藤新社長に変わります。
先日、春闘での労使交渉で佐藤新社長が組合と話し合いをしてているのを「トヨタイムズ」で見ましたが、実に「人間らしい」好感が持てる人でした。
「正直、賃上げは、心の底から怖いです」
とはっきり伝え、それでも断固として、日本企業の先陣を切って、1回目の労使交渉で「満額回答」をします、と明言。
佐藤氏はエンジニアで、開発畑を歩み、プリウスの開発にも携わり、現場をよく知っている人。
そして、車に対して、並々ならぬこだわりがある人。
これからのトヨタが楽しみです。クルマそのものへの深い愛情、信念も大事ですが、クルマづくりに於いてそれを具現化するための人づくり、組織づくり、仲間づくりも重要。小チームの機動力に、86ではスバル、スープラではBMWというパートナーとの良い関係性をまとめ上げ、それを成し遂げたのが多田氏であり、その後押しをした豊田社長、内山田副社長だったと言えます。
個人的にはそれを間近で見ていた甲斐氏が社外に流出してしまったのはとても残念でした。多田氏、甲斐氏の築いたもののエッセンスが社内に残っているといいなと思う。